婦人科検査をする女医

【医師監修】性病(性感染症)検査でなにをする?検査の種類・流れ・費用・注意点を徹底解説

2025.07.15
中里 泉 先生
監修
中里 泉 先生
あらかきウィメンズクリニック
日本産科婦人科学会認定専門医/医学博士

性病(性感染症)は自覚症状がないまま進行することが多く、知らず知らずのうちに他者へ感染させてしまう可能性があります。だからこそ、自分と大切な人の健康を守るために「性病検査」が欠かせません。

この記事では、検査の種類や流れ、費用、受けるべきタイミングまで、わかりやすく解説します。

なお、医学的には「性感染症」という名称が一般的ですが、この記事では「性病」という表現で統一しています。

知っておこう!性病検査でなにをする?

性病検査は、症状のある人だけでなく、無症状でも感染が疑われる人が対象となることもあります。

ここでは、性病とは何か、そしてどのようなときに検査を受けるべきか、分かりやすく解説します。

性病の定義と対象疾患

性病とは、主に性的接触によって、病原体が粘膜や皮膚の小さな傷口から体内に入り込むことで感染する病気の総称です。性器同士の接触だけでなく、オーラルセックス(口と性器)、アナルセックス(肛門と性器)によっても感染するリスクがあります。

代表的な性病
  • クラミジア感染症
    若年層での感染が多く、女性は症状が出にくいのが特徴

  • 淋菌感染症(淋病)
    排尿時の痛みや膿が出ることが特徴

  • 梅毒
    近年爆発的に増加している。感染後、段階的に症状が変化し、重篤な合併症を引き起こすこともある

  • HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
    免疫を低下させ、エイズ(AIDS)を発症する原因

  • B型肝炎・C型肝炎
    血液を介して感染し、慢性化すると肝硬変や肝がんのリスクになる

  • トリコモナス症
    かゆみやおりものの増量

  • HPV(ヒトパピローマウイルス)感染
    コンジローマや子宮頸がんの原因
  • これらの性病の中には、症状が出にくいものや、進行すると重篤な合併症を引き起こすものもあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。

    性病検査の方法と内容

    性病検査にはいくつかの方法があり、疑われる疾患によって採取する検体や検査内容が異なります。

    検査方法別の性病検査

    ・視診/問診
    【対象疾患例】
    コンジローマ、ヘルペスなど
    【検査内容】
    医師が患部を直接目で確認する
    ・のど、腟ぬぐい液
    【対象疾患例】
    クラミジア、淋病など
    【検査内容】
    患部の粘膜を綿棒で採取し、病原体を検出する
    ・血液検査
    【対象疾患例】
    HIV、梅毒、B型・C型肝炎など
    【検査内容】
    血液中の抗体や抗原の有無を調べる

    これらの検査は、軽い採血や粘膜のぬぐい取りなど、身体的な負担が少ないのが特徴です。多くの場合、数分で終わるため、初めてでも安心して受けられます。

    検査の流れと所要時間

    実際に受診した場合、どのような流れで性病検査を受けるのか、また、結果が出るまでの期間を確認しておきましょう。

    事前に準備すること

    まず、受診するクリニックや自治体に、予約が必要かを確認しましょう。また、その際に保険証の持参や、匿名受診の希望がある場合はその対応ができるかも聞いておきます。

    女性が検査を受けたい場合、産婦人科を受診しましょう。おりものの検査を行う場合は、生理の日に行うと検査の精度が下がるため、生理期間を避けると良いでしょう。

    当日の検査手順

    当日は問診票を記入し、医師の判断により、視診や採血、おりものの検査を行います。検査自体は数分程度で終了することがほとんどです。

    結果の受け取り方法

    通常、1週間前後で結果がわかります。一部、即日で検査結果が出る医療機関もあるため、希望する場合は事前に対応可能か聞いておきましょう。

    結果の通知は診察(対面)が基本ですが、LINEなどで確認できるサービスを行っているクリニックもあります。

    性病検査はどこで受けられる?受診する場所と選び方

    診察を受ける女性とカルテをかく女医の手元

    性病検査を受けられる場所は、いくつかあります。それぞれの特徴を知り、自分に合った方法を選びましょう。

    婦人科・泌尿器科などの医療機関

    症状がある人や、医師に相談したいことがある場合は、婦人科や泌尿器科のクリニックの受診が推奨されます。

    症状があれば、保険適応となり、自己負担は原則3割で検査や治療ができます。匿名を希望する場合は、自費診療に対応した性病専門の医療機関を選びましょう。

    自治体で受けられる無料・匿名検査

    各市区町村の保健所などでは、住民の健康管理の一環として、性病の無料検査を定期的に実施しています。これは感染拡大の予防と、早期発見・治療を目的とした公的サービスです。

    対象となる感染症は自治体によって異なりますが、HIVや梅毒、淋菌、クラミジアなどです。匿名で受けられるようプライバシーにも配慮されています。

    実施日や場所は決まっているため、事前に自治体の公式サイトで確認しましょう。

    自宅でできる郵送検査キット

    最近では、郵送で検査キットを入手し、自宅で検体を採取して結果を自己診断したり、検体を送り返してオンライン上で確認できるサービスがあります。

    メリット

  • 匿名で自宅から検査ができる
  • 検査項目が自由に選べ、セットでの検査もできる
  • 忙しい人や医療機関に行くのが恥ずかしい人にとって心理的負担が少ない
  • 注意点

  • 自己採取のため、検体の取り方にミスがあると結果が不正確になる可能性がある
  • 異常が出た場合、診断・治療のため結局医療機関にかかる必要がある
  • 「複数項目を一度にチェックしたい」「なかなか受診する機会がない」という人は、利用を考慮しても良いでしょう。ただし、すでに症状がある人や検体採取に自信がない人は、病院受診の方がお勧めです。

    性病検査にかかる費用と保険適用

    積まれたコインと倒れたコインが詰まったビン

    性病検査を受ける際に、気になるのが費用です。保険適用、自費診療の違いについて解説します。

    自費診療と保険診療の違い

    性病検査には「保険診療」と「自費診療」の2種類があります。どちらを選ぶべきかは、症状の有無や受診の目的によって異なります。

    保険診療

  • 症状がある、または医師が必要と判断した場合に適用
  • 3割負担で比較的安価
  • 同時に複数項目の検査を希望する場合は適用外になることもある
  • 自費診療

  • 症状がないが心配な場合、匿名で受けたい場合
  • 複数項目のセット検査も選択可能
  • 症状がある場合は保険適応で検査可能ですが、「念のため調べておきたい」「保険証を使いたくない」など事情がある場合は、自費診療が選択肢となります。

    検査費用の目安

    保険適応では、自己負担は3割で済みます。例えばクラミジアや淋菌の検査は、約2,000~3,000円程度です。

    自費診療の場合は、クリニックにより金額が異なります。疾患1項目につき5,000円程度かかるところが多いようです。また、自費診療ではいくつかの疾患をセットとして検査料金を設定しているところもあります。

    自分の調べたい項目がいくらするか、事前に問い合わせると良いでしょう。

    性病検査を受けたほうがいいタイミング

    性病の多くは初期には無症状であるため、自覚症状がなくても感染している可能性があります。以下のような場合、検査を受けることが推奨されます。

  • 性交渉後にかゆみ、痛み、不正出血、異常なおりものなど違和感がある
  • パートナーが性病に感染していたことが分かった
  • 不特定多数のパートナーと性的関係があった
  • 性風俗業などで働いた経験がある
  • 妊娠を希望する、または妊娠中のスクリーニングの一環
  • 定期的な健康管理として、年に一度など定期検査をしたいとき
  • 「症状がないから大丈夫」と思い込まず、感染のリスクがある場面があった場合は、早めに検査を受けることが大切です。

    性病検査で陽性が出たらどうする?

    落ち込む女性

    性病検査で陽性が出た場合、不安になる人も多いでしょうが、まず大切なのは冷静に医療機関を受診することです。ここでは、陽性が出た場合の対応について解説します。

    無症状でも医療機関を受診する

    性病は、感染していても無症状であることは珍しくありません。一方で、放置していても自然に治ることはなく、相手に感染させる可能性があります。

    また、疾患の種類によっては不妊症になったり、心臓や神経に深刻な後遺症を残したり、最悪の場合命にかかわることがあります。検査で陽性になったら、たとえ症状がなくても必ず医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

    パートナーへ通知して同時に治療を受ける

    もう一つ重要なこととして、パートナーへの通知と同時治療も不可欠です。自分だけが治療してを受けても、パートナーが未治療のままだと、性交渉によって再感染(ピンポン感染)する恐れがあります。

    また、性病の種類によっては、治療後一定の期間を置いて治癒判定(完全に病原体が排除されているかの確認)が必要な場合があります。完全に治るまで、性交渉を控えるようにしましょう。耐性菌によっては再治療が必要になるケースもあります。

    よくある性病の誤解

    「症状がないから感染していない」「一度治れば、もううつらない」「オーラルセックスだけなら安全」これらはいずれも誤解です。

    例えば、クラミジアは女性の場合、半数以上が無症状と言われており、自分でも気づかないうちに感染していることがあります。

    また、性病のほとんどは一度治っても、再び接触があれば感染のリスクはあります。性器同士の接触に限らず、口や肛門などの粘膜の接触でも感染するケースがあるため、注意が必要です。

    性病検査は自分とパートナーを守る第一歩!気になる症状があればクリニックで検査を受けましょう

    性病は、誰もがかかる可能性のある身近な感染症です。無症状でも感染していることがあるため、自分が安心するためだけでなく、大切なパートナーのためにも、定期的な検査が推奨されます。

    性病検査を「恥ずかしいもの」と考えるのではなく、健康管理の一環として前向きに取り組むことが、安心して生活するための第一歩です。気になることがあれば、早めに医療機関に相談しましょう。

    この記事を書いた人

    ピカエナサムネイル

    ピカエナ

    webライター。産婦人科系の情報を中心に発信しています。休日はアフリカのサファリで動物の写真を撮っています。

    この記事をSNSシェアしよう

    関連記事