性器からの出血がある状態が生理期間中であれば生理と呼び、生理期間外であれば不正出血と呼びます。
生理期間内の出血は生理、生理期間外の出血は不正出血と考え、出血のタイミングが重要ですが、生理不順がある場合は判断が難しいかもしれません。
不正出血があった場合、何らかの病気の可能性があるため、婦人科の受診をお勧めします。
生理じゃない時期に出血していたことはありませんか?
生理と不正出血の見分け方はあるのか、不正出血の原因、受信の目安などを解説します。
不正出血とは?
生理期間以外のすべての出血を言います。
日本産婦人科学会では「ホルモンの異常やさまざまな病気により月経以外に性器から出血すること」と定義しています。
不正出血の種類
不正出血には、どのような種類があるのでしょうか。
器質性出血(きしつせいしゅっけつ)
子宮や卵巣、腟などに明らかな病気があり、出血することを指します。
診察で目に見えて分かる病気を「器質性疾患」と呼びます。
過多月経(月経の量が多い)、過長月経(月経が8日異常続く)などの症状を伴うこともあります。
代表的な病気は子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮頸がん、子宮体がん、ポリープなどが挙げられます。
速やかな診断や治療が必要になることもありますので、早めに婦人科を受診しましょう。
機能性出血(きのうせいしゅっけつ)
器質性疾患がなく、出血する場合を指します。
いわゆる「ホルモンバランスの乱れ」が原因として起こることが多いです。
卵巣や脳の視床下部・下垂体といった、ホルモンの分泌に関わる臓器の機能が落ちることで、排卵障害や黄体機能不全などが起こることが原因です。
更年期や思春期など、卵巣の機能が不安定な時期に起こることが多いです。
また、ストレスや不規則な生活習慣などもホルモンの分泌に影響を及ぼし、不正出血の原因となることがあります。
他には、稀ではありますが、血液凝固障害と言って血液を固める力が弱い病気が背景に隠れていることもあります。
排卵期出血
生理と生理のちょうど間の時期に出血することです。少量の出血が大体2-3日続きます。
排卵の時期は子宮内膜に影響を与えるホルモンに大きな変化が起こるため、子宮内膜が剥がれて出血を起こすことがあります。病気の心配はありません。
心配な時は基礎体温をつけることで排卵の時期を確認しやすくなります。
排卵期出血が頻繁に起こる場合は、ピルなどで改善を試みることできます。
その他の原因で出血する場合もある
重要なものとして、妊娠初期の不正出血の場合があります。
妊娠の可能性を完全に否定できない時は、妊娠検査薬で確認するといいでしょう。
他にも、性感染症にかかっていたり、閉経後の女性ホルモン低下による萎縮性腟炎だったり、性行為で腟・外陰部が傷ついていたりする場合も出血することがあります。
「器質性疾患」について
ここからは、器質性疾患(診察で目に見えて分かる病気)について解説します。
子宮の病気
病名 | 特徴と症状 |
子宮筋腫 | 子宮の中にできる良性の腫瘍です。30歳以上の女性の20〜30%にあるといわれていて、頻度の高い疾患です。不正出血以外にも、過多月経や生理痛などの症状が出る時があります。 |
子宮体がん | 子宮体がんは、子宮内膜のがんです。肥満の増加により、近年子宮体がんの罹患者は増えていて、好発年齢は50代以上です。 子宮体がんは初期症状として、不正出血が多いといわれています。 |
子宮腺筋症 | 子宮腺筋症は、子宮の筋肉が分厚くなってしまう病気です。 40代、特に出産経験のある方に多いと言われています。 不正出血以外にも過多月経、腰痛や腹痛などの症状があります。 |
子宮内膜ポリープ | 子宮の内膜に良性のできもの(ポリープ)ができる病気です。 多くの場合は良性であり、症状があれば治療対象となります。 ポリープが大きくなると不正出血や過多月経などの症状が現れることがあります。 |
子宮内膜症 | 子宮内膜症は、子宮内膜という子宮の内にある組織が子宮の外側にできてしまう病気です。 不正出血が起こることはそれほど多くなく、生理痛や性交痛、腰痛などの症状に現れることが多いです。不妊症の原因にもなります。 |
卵巣の病気
病名 | 特徴と症状 |
卵巣腫瘍 | 卵巣にできもの(腫瘍)ができる病気です。悪性・境界悪性・良性に分類され、精密検査が必要です。 どの年代でも罹患する可能性があり、卵巣腫瘍の種類によっては不正出血が起こる場合があります。 卵巣は沈黙の臓器とも言われるように、症状は出づらく、太ったと思っていたら卵巣腫瘍だったということもあります。 |
多嚢胞生卵巣症候群(PCOS) | 超音波の検査で卵巣に小さな嚢胞がたくさんみられ、月経不順やホルモンバランスの異常を伴う病気です。血液検査も行って診断を確定させます。 排卵障害を起こしやすいため、不正出血の症状が現れることがあり、将来的には不妊症の原因となることもあります。 |
腟の病気
病名 | 特徴と症状 |
子宮頸管ポリープ | 子宮の出口に良性のできもの(ポリープ)ができる病気です。 症状がなければそのまま自然に経過をみることもありますが、不正出血がある場合は外来で摘出します。 |
子宮頸がん | 子宮頸部にできるがんです。性行為でヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症する可能性があります。比較的若い年代(20後半〜30代)でも発症します。 不正出血以外にも、性交渉時の出血が症状としてみられることがあります。 |
子宮腟部びらん | 子宮の出口がただれている状態をびらんといいます。 10代〜30代の比較的若い世代にみられることが多く、不正出血や性交時出血が症状としてみられます。 |
妊娠に関連するもの
次に妊娠に関連したものを解説します。
特徴と症状 | |
異所性妊娠 | 受精卵が、子宮外の卵管や卵巣などに着床してしまうことをいいます。 不正出血、腹痛などの症状があります。異所性妊娠に気がつかず、処置が遅れると、血流が豊富な受精卵が破裂し、お腹の中で大出血を起こして命に関わることがあります。 |
流産 | 流産の兆候として、出血することがあります。 |
生理と不正出血の見分け方はある?
生理期間以外の出血はすべて不正出血ですが、判断が難しい場合も多い
血の色や量など、見た目では判断できません。
生理周期が順調な方の場合は判断しやすいかもしれませんが、生理不順がある方にとってその判断は難しいです。
特に更年期では不正出血の判断は難しい
更年期になると、卵巣機能が低下し、ホルモンの分泌が不安定になるため、生理が不規則になります。
不正出血があっても更年期だから仕方ない、と思って経過を見ていたら子宮体がん・子宮頸がんだった、ということがこの年代では起こり得ます。
更年期の時期に、ダラダラと持続する(2週間以上)出血があった場合は、婦人科を受診してください。
いつ医療機関を受診すればいい?
基本的には、いつもと違う出血があれば受診して大丈夫です。
どのくらい出血が続いていたら、というのを指定することは難しいですが、2週間以上続く出血は放置しないほうが良いでしょう。
医療機関での検査は?
受診した際、一般的に行われる検査について解説します。
内診・超音波検査
上記で解説したとおり、不正出血の原因は子宮や卵巣、腟などに病気が隠れている可能性があります。
そのため、内診で腟の中を直接見たり、超音波検査で子宮・卵巣を確認します。
超音波検査は、腟性交の経験があるかどうかに応じて、腟から、お腹から、あるいは肛門から器具を当てて行います。
希望に応じて検査方法を変えることができるので、医師と相談しましょう。
血液検査
ホルモンのバランスを調べるために血液検査を行うことがあります。
おりもの検査
淋病・クラミジアや腟トリコモナスなど、感染症がある場合、感染が原因で出血していることもあります。
感染の原因となっているものを調べるため、おりものの検査を行います。
妊娠検査
異所性妊娠の場合、命にかかわることもあり、早急に対応が必要な場合もあります。
超音波検査と合わせて、尿検査や血液検査で妊娠検査を行う場合があります。
生理か不正出血を見分けることは難しい!はやめに医療機関へ相談しよう
生理期間以外で出血している場合は不正出血になりますが、判断が難しい場合もあるでしょう。
なんらかの病気が隠れている可能性もあるため、はやめに近くの医療機関へ相談しましょう。