「Feminine(女性の)」と「Care(ケア)」の造語。最近は広く女性のQOL(Quality of Life)を向上させるためのものとして捉えられています。
女性が働きやすい環境を作ろうと、働く女性のQOLを上げるためフェムケアに注目が集まっています。
洗浄・保湿・脱毛などフェムケアとは「何をするのか」を詳しく解説します。
最近、雑誌やSNSなどで「フェムケア」という言葉を見かけたことがある方もいるのではないでしょうか。女性特有の不調や悩みを改善・サポートする「フェムケア」と呼ばれる製品やサービスへの注目は、年々高まっています。
世界的な調査会社Future Market Insightsが2023年に発表した「Femtech Market Outlook (2024 to 2034)」※によると、世界のフェムテック市場の収益は2023年に268億1,820万米ドルに達し、2034年までに、市場規模は434億610万米ドルに拡大すると予測されています。
その一方、日本ではフェムケアの認知度が低く、あまり浸透していません。この記事では、フェムケアが注目を集めている理由や必要性についてくわしく解説します。フェムケアの具体的な方法についても紹介するので、女性特有の悩みを抱えている方は、ぜひご一読ください。
※2024年7月16日時点
フェムケアについて
フェムケアとは、「Feminine(女性の)」と「Care(ケア)」をかけあわせた造語です。
まずは、フェムケアについて知りましょう。
ここからは、具体的な内容について解説します。
フェムケアとは?
フェムケアとは、女性のカラダや健康のケアをする製品・サービスのことです。
当初は、主に月経関連や更年期の症状から起こるフェムゾーンのケアなどを指す言葉でした。
しかし、最近は、広く女性のQOL(Quality of Life)を向上させるためのものとして捉えられており、「こうしなければならない」といった具体的なやり方は決まっていません。
・ニオイ対策アイテム
・女性ホルモンのバランスを整えるケア
・生理の不快感や悩みを軽減するアイテム
・骨盤底筋を鍛えるトレーニンググッズ
・性生活を充実させるセクシャルウェルネス商品
上記のように、あらゆる年代の女性の体や健康をケアするフェムケア製品やサービスはたくさんあります。
フェムケアとフェムテックの違い
フェムケアと似た言葉で、フェムテックがあります。フェムケアとフェムテックの違いをご紹介します。
フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を合わせた造語です。
月経、妊娠・不妊・産後ケア・更年期といった女性のライフステージにおける悩みや、婦人科系疾患・セクシャルウェルネスに対して、アプリやAI(人工知能)といった先進的なテクノロジーを使ってアプローチすることを指します。
・更年期ケアアプリ
・ホルモン検査キット
女性の健康課題を当事者だけでなく、まわりの人も興味・関心をもち、社会で女性の健康課題について考え、解決を目指す方法です。
フェムケアとフェムテックは、テクノロジーを使用する・しないで使い分けられることが多いですが、区別されずに使われることも多々あります。
あえて区別するならば、テクノロジーを介しているかどうかが違いと言えます。
フェムケアが注目を集める背景
近年、海外だけでなく日本においても注目を集めているフェムケアですが、フェムケアが注目を集める理由には、社会的な背景が大きく影響しています。
ここからは、近年フェムケアが注目されている理由について解説します。
女性の社会進出による人々の意識変化
現代における女性の社会進出にともない、今まであまり表立って話題にしづらかった「生理痛やPMS、更年期」などの女性特有の健康に関する問題が顕在化してきました。
タブー視されがちでしたが、SNSなどを通じて積極的に悩みを発信する女性が増えたことで、多くの人々が知るようになってきました。
社会全体の意識が変わり、女性が活躍しやすい環境を作り出そうと動きはじめているため、注目が集まっているのです。
女性の働きやすさを推進する社会背景
女性が働きやすい環境をつくるには、周囲の理解が欠かせません。
少子高齢化による労働人口の減少にともない、女性の社会進出を応援すべく国をあげてフェムケア・フェムテックを推進しています。
また、働く女性の約80%が仕事のパフォーマンスが低下してしまうことを経験していたとの回答も。女性の健康問題による社会的な損失が大きいことがわかります。
そういった背景から、経済産業省では、「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を実施し、フェムテックの製品やサービスを提供する企業・医療機関・自治体に対して、事業費の3分の2(上限500万円)を補助しています。
女性だけでなく、男性や社会全体が「女性の健康」に関心を持ち、理解を深め、必要に応じて適切なサポートを受けられるように国が支援しています。
女性の働きやすさを推進する社会背景により、フェムケア・フェムテック市場も急速に拡大しているのです。
IT技術の進化
フェムテックの市場拡大において、「IT技術の進化」は欠かせません。
近年の急速なIT技術の進化により、さまざまなサポートが受けられるようになりました。
なかでもスマートフォンの普及は、大きな影響を与えたと言えるでしょう。
スマートフォンの普及により、誰でも手軽に自分の健康に関するデータを数値化して記録し、閲覧できるようになり、さまざまなサポートを受けられるようになりました。
その結果、カラダの状態を把握して人生設計に活かす人が増えたことも、フェムテックが注目を集める理由と言えるでしょう。
SDGsとフェムケア・フェムテックの関係
女性の社会進出に大きな期待が高まるフェムケアやフェムテック。
SDGs(持続可能な開発目標)においても目標3と目標5はフェムケア・フェムテックとの関連性が高いとされています。
前述した「フェムケアが注目を集める背景」には、SDGsが密接に関わってきます。
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」
いま世界では妊婦の死亡率が高い地域や、差別や暴力によって女性のHIVへの感染リスクが高まっている地域があります。
正しい知識やケアがあれば、女性が快適で健康的に過ごすことができると考えが広がっています。
背景や地位、地域に関係なく、世界中の全ての女性が健康と福祉を向上させるために「フェムケアやフェムテック」のニーズが高まっているのです。
日本においては、憂鬱になりがちな生理や更年期をより快適で健康的に過ごすため、フェムケアやフェムテックが注目を集めています。
SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
フェムケアやフェムテックはSDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」にも直結してきます。
世界的な「ジェンダー平等意識」の高まりにともない、日本でも男女不平等が社会的な問題となっています。
2023年に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「Global Gender Gap Report 2023」によると、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と、先進国の中でも非常に低い現状があります。
日本のジェンダーギャップの現状を改善し、ジェンダー平等を進めるために、多様なライフスタイルに対応するフェムケアやフェムテックに期待が集まっています。
フェムケアとフェムテックは、女性の健康と福祉に必要不可欠な要素であり、女性の社会進出や権利において重要な役割を果たしています。
持続可能な未来を築くために、フェムケアとフェムテックを生活に取り入れてみましょう!
働く女性のQOLを向上!フェムケアの目的と必要性
ライフスタイルの多様化が進む現代は、さまざまな生き方が認められています。とはいえ、女性はホルモンバランスの影響を受けやすく、月経や出産、更年期など生涯にわたり上手に付き合っていく必要があります。
自分のカラダについて知ることは、女性にとって大切なことにもかかわらず、今までタブー視されてきた時代も長く、フェムケアに対する情報や知識はまだまだ行き渡っていないのが現状です。
フェムケアは、女性がより生き生きと過ごしていくうえで欠かせないものです。
自分の身体と向き合うことは、「自分を大切にすること」につながります。
フェムケアを「特別なもの」だと思わず、自分が心地よく生きていくために上手に活用しましょう。
また、自分が抱える悩みや不快感に気づき、解決するために必要なことを選択していくのがフェムケアの第一歩です。
フェムケアを取り入れて、たったひとつの自分のカラダを、自分の手で労りましょう。
何をする?フェムケアの方法
フェムケアといっても、「一体何をするの?」という女性もいるでしょう。フェムケアには、さまざまな方法があります。代表的なフェムケアを紹介するので、ぜひ取り入れてQOLを向上させましょう!
フェムゾーンの洗浄
フェムゾーンは、ムレやかゆみ、ニオイなど、なんらかのお悩みを抱えている女性が多くいます。
フェムゾーン専用のソープ
フェムゾーンの働きを正常化させるためには、適切な方法で洗浄することが大切です。
一般のボディソープは洗浄力が高く、膣に存在する必要な菌までも洗い流してしまい、膣の自浄作用を弱めてしまう可能性があるため、フェムゾーン専用のソープを使いましょう。
専用ソープは肌にやさしいものだけでなく、黒ずみケアに特化しているものやニオイを軽減する成分が配合されているアイテムもあります。
フェムゾーンの洗い方
洗う時は、においや黒ずみケアをしようとゴシゴシ洗いたくなるかもしれません。
しかし、刺激が強いと肌が傷ついてしまったり、雑菌が繁殖してしまったりと悪影響になることもあります。
今はさまざまな製品がありますので、自分に合ったソープを探し、やさしく洗いましょう。
フェムゾーンの保湿
フェムゾーンの黒ずみやかゆみなどは、乾燥が原因である場合が多いです。
とくに閉経後の女性は「エストロゲン」という女性ホルモンが少なくなり、おりものの量が減ることから、さらに乾燥しやすい状態です。
20代から30代の若い世代ではムレにつながるのではと思う方もいるかもしれません。20代から30代は仕事や家事、育児などで忙しく、ストレスから女性ホルモンのバランスが乱れ、乾燥につながることもあります。
トラブル予防・改善する保湿
フェムゾーンを保湿する習慣がない方もいるでしょう。しっかり保湿することで、トラブルの予防・改善につながります。
適度な保湿は、デリケートゾーンのターンオーバーを促すためにも欠かせません。
保湿によって肌をふっくらとさせ、潤いを与えてターンオーバーを促進する効果も期待できます。
また、若々しいデリケートゾーンを維持でき、手軽なエイジングケアとしておすすめです。
保湿する場合は、入浴後などの清潔な状態で、専用のクリームやオイルで保湿しましょう。
女性ホルモンのバランスケア
女性ホルモンのバランスケアもフェムケアの1つです。
妊娠や出産、閉経など女性のからだは、ライフステージの変化にともないホルモンバランスも大きく変化します。
とくに女性ホルモンが減少する閉経前後は、更年期によるさまざまな症状に悩む女性が多いです。
症状は個人差が大きいですが、自分で対策できる範囲で、女性ホルモンのバランスケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
バランスケアにはいくつか種類があります。
漢方薬
漢方薬は、カラダのめぐりを良くして症状を緩和する働きがあります。
ピル
すぐの妊娠を望まない場合は、女性ホルモンのバランスを整えるお薬のピルを使用するのも1つの方法です。
ホルモン補充療法(HRT)
閉経後であれば、女性ホルモンの減少による更年期の不調を緩和するために、ホルモン補充療法(HRT)でホルモンを補うのも効果的でしょう。
症状や体調により、適切な方法は異なるため、ライフステージや体調にあわせて適切なケアを選択しましょう!
自分の肌に合う下着やナプキンを使う
フェムケアの製品として、通気性に優れた下着や吸水ショーツ、オーガニックコットンを使用したナプキン、月経カップなどがあります。
生理時の下着
吸水ショーツは経血が多い日にはナプキンと併用し、少ない日には1枚で過ごせる商品です。
また、洗って繰り返し使えることから、サステナブルの観点からも近年注目が集まっています。
ほかにも妊娠中や産後、手術後などの体の変化に応じた商品がたくさんあります。
毎日身につける下着や肌が敏感になりやすい生理時に使用するナプキンは、ぜひ気をつかいたいアイテムです。
黒ずみの原因
デザイン重視のレースなどがあしらわれたデザインの下着は、摩擦や締めつけにより黒ずみの原因になることもあります。
とくに敏感肌の方は、肌にやさしい素材を使っているものや締め付けが少ない下着を選ぶことで、フェムゾーンの悩みを解決できることもあります。
体調やライフスタイル、また好みによって最適な方法は異なるため、自分の肌に合う下着やアイテムを選びましょう。
VIO脱毛
見た目の美しさをアップさせるためにVIO脱毛をする方も多いですが、実はフェムケアの1つでもあります。
・ニオイを軽減できる
・可愛い下着がつけられるなど、オシャレが楽しめる
脱毛により、汚れや菌の付着がなくなり衛生的なだけでなく、自己処理により肌を傷つけることが少ないため、肌の負担軽減にもつながります。
普段はもちろん、生理中でもフェムゾーンを清潔に保ちやすくなるというメリットも大きいでしょう。
また、近年では、将来介護されるかもしれないということを考えて脱毛を行う方が増えています。
フェムケアを取り入れてQOLを向上させましょう!
近年、注目を集めるフェムケアは女性特有の不調や悩みを改善・サポートしてくれます。とくに働く女性にとって、フェムケアはQOLを向上させるために必要不可欠と言えるでしょう。
フェムケアは「フェムゾーンケア」にとどまらず、女性が自分らしく生きていくために大切な概念であり、決して特別なことではありません。
これを機に、自分のカラダとしっかり向き合い、自分が心地よく生きていくために、フェムケア製品やサービスを上手に活用しましょう!