菌に囲まれ泣く女性のイラスト

カンジダは性行為でうつる?治療中に気をつけたい注意点を詳しく解説【医師監修】

2025.01.28
中里 泉 先生
監修
中里 泉 先生
あらかきウィメンズクリニック
日本産科婦人科学会認定専門医/医学博士

カンジダを発症した場合、性行為でパートナーにうつるリスクや治療中の注意点に悩む方は多いのではないでしょうか?
この記事では、カンジダの原因や症状治療法、治療中の注意点、性行為による感染リスクと対策について詳しく解説します。

カンジダに関する正しい知識を身につけ、パートナーと安心して過ごしたい方は、ぜひ参考にしてください。

カンジダは性行為でうつる?

ベッドの上で見つめ合う男女

カンジダ外陰腟炎を発症している期間に性行為をすると、女性から男性にカンジダ菌をうつす可能性があります。

ただし、カンジダ外陰腟炎を発症する原因は、性行為だけではありません。

人の体内には、もともとカンジダ菌が住んでいます。通常は問題を起こしませんが、免疫機能の低下やストレス、抗菌薬の服用などのきっかけで増殖し、炎症を引き起こすことでカンジダ外陰腟炎を発症することがあります。

性行為による感染の割合については明確なデータが少なく、原因は多岐にわたります。多くの場合、体内の常在菌が増殖した結果として発症することが一般的です。

そもそもカンジダ外陰腟炎とは?

一般的にカンジダと呼ばれているカンジダ外陰腟炎は、女性の性器感染症のなかで特に発症頻度が高いものの1つで、75%の女性が一生に1回は発症すると報告されています。 

主な原因と感染経路

ここからは、カンジダ外陰腟炎の原因や、症状について解説します。

カンジダ外陰腟炎は、カンジダ菌という真菌(カビの1種)が外陰部や腟内で異常に増え、炎症を引き起こす感染症です。

普段、カンジダ菌は私たちの消化管や皮膚に存在する常在菌ですが、次のような要因がきっかけで増殖し、カンジダ外陰腟炎を発症することがあります。

  • 免疫機能の低下をもたらす疾患や治療
  • 抗菌薬の服用
  • ストレス
  • 妊娠
  • 性行為
  • 不適切な外陰部や腟内の自己洗浄
  • 通気性の悪い下着の着用
  • これらの要因が重なることで、腟内や外陰部でカンジダ菌が異常に増殖し、カンジダ外陰腟炎を引き起こします。

    なお、カンジダ菌が体内に存在しているだけではカンジダ外陰腟炎は発症しません。例えば、妊婦の方では約30%、妊娠していない女性では約15%の腟内に、カンジダ菌がいるとされていますが、これだけではカンジダ外陰腟炎とは診断されません。  

    カンジダ外陰腟炎で見られる症状

    カンジダ外陰腟炎では、以下のような自覚症状や他覚症状が見られます。

    【自覚症状】
  • 外陰部のかゆみ、痛がゆさ
  • おりものの増加(酒かす状、粥状、ヨーグルト状)
  • 外陰部や腟の灼熱感、痛み
  • 性交痛
  • 排尿障害

  • 【他覚症状】
  • 外陰部の軽度の発赤、腫脹
  • 腟内の白色おりもの
  • かゆみによるひっかき傷
  • これらの症状は個人差がありますが、上記の症状が無くなることを目安に、治療を続けます。

    カンジダ外陰腟炎の治療法と注意点 

    子宮のイラストを中心に置き治療の薬を周りに並べている

    カンジダ外陰腟炎に罹患した場合、症状が改善するまで、適切な治療を行うことが大切です。

    以下に、主な治療法と押さえておきたい治療中の注意点について、解説します。

    主な治療法

    カンジダ外陰腟炎の治療では、症状や状況に応じて、腟錠・外用薬・内服薬などから適切なものを選択します。

    【腟錠(連日投与 or 週1回投与)】
    腟内を洗浄後、腟内に挿入する抗真菌薬で、1日1回6日間の使用が基本です。連日の通院が難しい場合は、週1回投与の腟錠を使用することもあります。

    【外用薬】
    外陰部には抗真菌薬のクリーム剤を1日2~3回塗布します。炎症を抑え、症状を和らげる効果があります。

    【内服薬】
    抗真菌薬の内服は2015年から認められており、特に症状が重い場合に使用されます。ただし妊婦・授乳婦の方には、使用できないため、医師への事前相談が必要です。

    カンジダ外陰腟炎治療のゴールは、カンジダ菌を完全に取り除くことではなく、症状が改善されたかどうかです。

    多くは数日で症状が軽快に向かい、1〜2週間で治療が完了します。まれに、薬の効果が見られない場合や再発を繰り返すことがあり、その場合は薬を変更するなどして経過を見ます。

    カンジダ治療中の注意点

    カンジダ外陰腟炎の治療中は、以下3つのポイントを意識することが大切です。

    ① ストレスの軽減

    ストレスは免疫機能を低下させ、治療の妨げになることがあります。治療中は体を休めることを第一に、安静にして過ごしましょう。

    大きなストレスの原因に心あたりがある場合には、可能な範囲でその原因から離れることも大切です。好きな音楽を聴いたり、お気に入りのアロマの香りを楽しんだりと、自分に合った方法でリラックスする時間を確保しましょう。

    ② 生活習慣を整える

    睡眠不足や乱れた食生活、運動不足なども体にとってはストレスであり、免疫機能を低下させる要因となります。

    起床時に「しっかり眠れた」と感じられるよう、十分な睡眠時間を確保してください。また、バランスの取れた食事を摂り、体力の回復をサポートしましょう。

    適度な運動は、体力の維持やストレスの解消に役立ちます。

    ③ 局所の清潔を保つ

    治療中は、患部を清潔な状態に保つことが大切です。おりものシートや生理用ナプキンを、長時間つけっぱなしにすることは避けましょう。

    ただし、清潔にしようと思うあまり、外陰部を洗いすぎたり、刺激性のある石けんを使ったりすることは禁物です。患部に刺激を与えると、症状を悪化させる恐れがあります。

    また、身に付ける下着は締め付けが少なく、通気性の良いものを選びましょう。一般的に、菌は高温多湿の場所を好みます。したがって、患部が蒸れないように気を付けることが大切です。

    カンジダ治療中、パートナーとはどう過ごす?

    治療中の性行為は、症状の悪化や再発を引き起こす可能性があるため控えましょう。また、パートナーにカンジダ菌をうつしてしまうリスクもあります。

    カンジダ菌は体内に常在している菌であるため、無症状の場合、通常は治療の必要はありません。

    ただし、治療中の性行為は外陰部や腟など、患部への刺激となり、治療効果を妨げる可能性があります。そのため、症状が完全に治るまでは性行為を避け、治療に専念することが大切です。

    コンドーム(ゴム)をすれば性行為をしてもうつらない? 

    コンドームを使用しても、カンジダ菌がパートナーにうつる可能性を完全に防ぐことはできません。そのため、治療中は性行為を控えることが推奨されます。

    コンドームの着用により、精液や腟分泌液が、性器の粘膜へ付着するのを防ぐ効果がありますが、外陰部や周囲に存在する菌までは防げないため、感染リスクが残ります。

    再感染や症状の悪化を避けるためにも、治療が完了するまで性行為は控えましょう。

    パートナーが性器カンジダ症に感染した場合の症状と対応

    もし、パートナーが性器カンジダ症に感染した場合の症状には、以下のものがあります。

    【自覚症状】
  • かゆみ
  • 違和感
  • 排尿時の痛み

  • 【他覚症状】
  • 亀頭部の炎症
  • 尿道炎
  • 冠状溝周辺や亀頭の発赤
  • 紅色丘疹(皮膚の表面の赤いブツブツ)
  • 小水泡
  • びらん
  • 侵軟(ふやけ)
  • 白苔(外陰部に付着した白いコケのようなもの)
  • パートナーに上記のような症状が見られた場合は、泌尿器科への受診を勧めましょう。治療には、抗真菌薬のクリーム剤が使用され、多くの場合、適切な治療で早期に改善します。

    カンジダの症状がある期間は、性行為を控えよう

    のんびりとコーヒーを楽しむカップル

    カンジダ外陰腟炎は、性行為でうつる場合もありますが、多くは免疫機能の低下や生活習慣の乱れが原因で発症します。

    治療はカンジダ菌を完全になくすことではなく、症状を和らげることが目標です。適切な治療を受け、生活習慣を見直すことで、多くの場合は短期間で改善が期待できます。

    また、治療中はストレスを減らし、体に負担をかけない生活を心がけることが大切です。また、パートナーへの感染を防ぐためにも、性行為は治療が終わるまで控えるようにしましょう。

    正しい知識を持ち、医師のアドバイスを参考にしながら治療を続けることで症状は改善します。焦らず、自分の体を大切にしてください。

    この記事を書いた人

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    みち89

    薬学部を卒業後、病院薬剤師として勤務。 出産を機にwebライターの活動を始める。現在は「正しい情報を分かりやすく!」をモットーに、ヘルスケアや化粧品などの解説記事を執筆中。

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