日の当たる部屋の一角で男女が座りながら額をくっつけあう姿

妊娠中の性交渉はいつまでOK?頻度・注意点と絆を深めるスキンシップのヒント【医師監修】

2025.02.21
中里 泉 先生
監修
中里 泉 先生
あらかきウィメンズクリニック
日本産科婦人科学会認定専門医/医学博士

妊娠中の生活では、お腹の赤ちゃんのことを第一に考えつつ、パートナーとの関係性やスキンシップも大切にしたい。そんな風にお考えの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、妊娠中の性交渉の安全性やお腹の張りを感じた時の対処法、性交渉の頻度や時期に関するポイント、さらに絆を深めるスキンシップのヒントをお伝えします。

妊娠中の性交渉は安全なの?

妊娠中の性交渉の考え方については、産婦人科医や病院・クリニックによって異なります。また、妊娠中の性交渉が安全かどうかについての研究はまだまだ少なく、医学的に「安全」と断言できるデータは十分に揃っていないのが現状です。

たとえば、オランダで195人の妊婦さんを対象に、性交渉と早産との関係を調べた研究では、「妊娠の経過に問題がない場合、妊娠中の全期間を通じて、性交渉がリスクになることはない」とされています。一方で、日本国内で182人の妊婦さんを対象に調査した結果、妊娠中の性交渉が早産につながる可能性があるとの指摘もあります。

妊娠の経過や体調は千差万別です。妊娠中の性交渉について不安がある場合は自己判断せず、主治医に相談しましょう。この記事では、一般的な注意点や考え方をお伝えしますので、個別の状況に合わせて参考にしてください。

妊娠時期別のリスクと注意点

妊婦がまたがれている男性が妊婦のおなかを両手で優しく包み込む

妊娠中の性交渉のリスクは、妊娠週数によっても異なります。ここでは、妊娠時期別のリスクと注意点をご紹介します。

妊娠初期(妊娠判明〜4ヶ月頃)

妊娠初期(妊娠判明から妊娠4ヶ月頃)は、もともと流産のリスクが高い時期です。性交渉が流産の引き金になる可能性も否定できないため、もし性交渉をする場合も、頻度を減らす、腹部の圧迫を避けるなどの配慮が必要です。

また、この時期はつわりが重くなることも多く、女性のメンタル的にも性交渉に前向きになれないことがあるでしょう。

流産のリスクやつわりによる不安について、パートナーにもしっかり理解してもらうことが、この後の妊娠期間を健やかに過ごすために重要です。

妊娠中期(5〜7ヶ月頃)

妊娠中期(5〜7ヶ月頃)は一般的に安定期と呼ばれ、比較的性交渉を検討しやすいタイミングと考えられます。この時期にはお腹が少しずつ大きくなってくるため、腹部を圧迫しない体位を選ぶと良いでしょう。

ただし、妊婦さんが細菌性腟症(腟内細菌のバランスが崩れたときに起こる腟感染症)を発症している場合、性交渉が早産のリスクになるという報告もあります。症状としては、灰色や白色のサラサラした分泌物が増え、生臭い匂いがすることが特徴です。このような異常を感じた場合は、医師の相談を受けましょう。

また、体調が落ち着いてくる時期ではあっても、妊娠の経過が安定していない場合やリスクが高い場合には、性交渉が推奨されないこともあります。適切な判断を得るためにも、妊娠の経過についてよく理解している主治医に確認することが大切です。

妊娠後期(8ヶ月以降)

妊娠8ヶ月をすぎた妊娠後期は、分娩に向けて子宮口や腟が柔らかくなる時期です。この時期は、性交渉が破水や早産につながるリスクがあるため、強い刺激は避けるなど注意が必要です。

また、お腹がかなり大きくなるため、横向きの体位を選ぶなど、女性の負担を軽減する工夫があると良いでしょう。

全期間を通じて

妊娠中に性交渉をする場合、全期間を通じてお腹の張りには十分注意が必要です。性交渉中に強い張りを感じた場合は、無理せず中断することも検討しましょう。

また、妊娠中の性交渉ではコンドームの使用をおすすめします。精液に含まれるプロスタグランディンというホルモンには、子宮を収縮させる作用があります。また、精液に混入する雑菌が細菌感染のリスクを高める可能性もあります。

とくに注意したいのは、性感染症です。なかでも梅毒に感染した場合、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにも感染し、発達の遅延や心臓の奇形などを引き起こすことが知られています。さらに出生後も、難聴や失明など先天性梅毒のリスクがあるため注意が必要です。2023年には日本で32例の先天性梅毒が報告されています。他人事とは思わずに、パートナーともよく話し合い、しっかりとリスクに備えましょう。

妊娠中に性交渉を避けたほうが良いケースとは?

妊娠中の性交渉について紹介してきましたが、妊娠の全期間を通じて性交渉を避けたほうが良いケースもあります。以下の5つの例にひとつでも当てはまる場合は、とくに注意が必要です。

  • 過去に流産の経験がある、または医師から切迫流産などのリスクを指摘されている方
  • 過去に早産の経験がある、または医師から早産のリスクを指摘されている方
  • 原因不明の腟分泌物(羊水、感染症の可能性)や不正出血がある方
  • 前置胎盤や子宮頸管無力症などのトラブルを指摘されている方
  • 双子や三つ子など多胎妊娠の方

これらの条件に該当する方は、必ず主治医に相談し、指示を仰ぐようにしましょう。

妊娠中の性交渉に関する疑問に答えます!

妊婦のおなかにボディクリームでニコニコ顔を書く様子

Q.妊娠中に性欲が増すor減退する、これって普通?

性欲が増すことも、性交渉に無関心になることも、どちらも正常です。妊娠中は疲労や吐き気、乳房の張り、尿意の増加などにより、性交渉に後ろ向きになる一方、避妊の心配がなくなり前向きになるケースもあります。

Q.性交渉中のお腹の張りはなぜ起こる?

通称・愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが、子宮や乳頭の刺激で分泌されることが原因と考えられます。また、精液に含まれるプロスタグランディンにも子宮収縮を促す作用があり、お腹の張りに繋がりやすいといわれてます。

お腹の張りが気になる方は、性交渉中の乳頭の刺激を避ける、コンドームを着用するなどの工夫をしてみましょう。

Q.性交渉や自慰行為によるオーガズム、いってしまっても危険はない?

低リスクの通常妊娠の場合は問題ないと言われています。オーガズム中や、オーガズムの直後に感じる収縮は、出産時の収縮とはまったく異なります。ただし、性交後に強い収縮が続く場合は、かかりつけの医療機関に相談しましょう。

Q.妊娠中の性交渉、頻度や割合はどのくらいまでOK?

妊娠中の性交渉について、頻度や割合に関連する研究は限られていますが、日本国内で182人の妊婦を対象とした調査では、週1回以上の性交渉で早産のリスクが増したという報告があります。このデータから判断するならば、妊娠中の性交渉は、週1回程度と考えるのが良いでしょう。

パートナーと絆を深めるスキンシップ

家の落ち着いた空間で妊婦がパートナーへ顔を近づけている様子

妊娠中の性交渉に関しては、いくつかのアンケート調査によって男女の考え方の違いがわかっています。

一般的に、女性は妊娠中の体調変化やつわり、精神的な不安から性交渉への意欲が低下しやすい一方で、男性は「性交渉の頻度が減った」「スキンシップが少なくなった」と感じ、不満や寂しさを抱えやすいようです。

こうした男女の考え方の違いを埋めるためには、パートナー同士でお互いの気持ちを理解し合い、寄り添う姿勢が重要です。

妊娠中のスキンシップは、必ずしも性交渉に限られるものではありません。たとえば、日常的なハグや手を握るといった軽い触れ合い、夫婦でリラックスできる時間を共有することも、絆を深める大切な方法です。また、妊婦の体調や心の負担を軽減するため、パートナーがマッサージや家事をサポートすることも有効です。

妊娠をきっかけに夫婦で赤ちゃんのことを話し合う時間を持つことも、絆を深める大切な機会になります。お腹の赤ちゃんのことを第一に考え、夫婦のスキンシップのあり方を考えてみましょう。

妊娠中の性交渉は主治医と相談し、パートナーとの絆を深めよう

妊娠中の性交渉そのものが、直接的に赤ちゃんに影響を及ぼすことはないと考えられています。一方で、妊娠中は心身共にデリケートな時期であるだけに、妊娠初期や何らかの症状がある場合、女性の気分が前向きになれないことも少なくありません。そのため、無理をせず、慎重にタイミングや状況を考えることが大切です。

また、妊娠の経過は十人十色です。誰よりも、あなたの妊娠経過を正確に把握している主治医の先生に、安心安全な性交渉の時期や頻度を相談してみるとよいでしょう。

挿入や乳頭への刺激、オーラルセックスを伴わない肌と肌の触れ合いでも、パートナーとの絆を深めることはできます。妊娠中は男女の考え方が異なることもありますが、対話を通じてお互いの気持ちを理解し、満足できる方法を模索してみましょう。

この記事を書いた人

医療ライターはらぺこサムネイル

医療ライターはらぺこ

製薬会社、大学病院勤務を経て医療ライターに。これまでにインタビューした医師は300人以上。ヘルスケアについて、専門知識をかみくだいて分かりやすく紹介します!

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