明るい部屋の中でベッドにもたれ額に手を当てて悩んでいる様子の女性

【医師監修】何度も同じことばかり考えるのは病気?「反芻(はんすう)思考」の原因と対処法

2026.04.28
川合 厚子 先生
監修
川合 厚子 先生
クリニック勤務
内科、精神科を担当
医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本精神神経学会専門医、公認心理師、労働衛生コンサルタント、産業医

「あの時、あんなことを言わなければよかった」 「どうして自分だけうまくいかないのだろう」

夜、寝る前やふとした瞬間に、同じ後悔や不安が頭の中をぐるぐると回って止まらなくなることはありませんか?

これは単なる性格の問題だと思われがちですが、背景に脳の仕組みや神経伝達物質のバランス、あるいは病気が隠れていることも少なくありません。

今回は、何度も同じことばかり考えてつらいあなたに、その正体と対処法をお伝えします。

何度も同じことばかり考えてしまう「反芻思考(ぐるぐる思考)」とは

発煙筒のピンクの煙で大きく渦を描く女性

反芻(はんすう)思考とは、ひとつの事柄について何度も繰り返し考えることです。過去の失敗や後悔、未来への不安といったネガティブな内容をくりかえし考えすぎると、気分の落ち込みが続く原因となります。

考えの対象は、自分の行動や自己評価だけでなく、他人の言動や理不尽な状況への不満など、人によってさまざまです。自分を責める「ひとり反省会」を繰り返すのも、反芻思考のひとつです。

何度も同じことばかり考える反芻思考と病気の関係

止まらない反芻思考は、病気と関連している場合もあります。必ずしも病気とは限りませんが、関連のある病気や症状をいくつか紹介します。

うつ病

うつ病は、気分の落ち込みや不眠、食欲不振、疲れやすさなどが続き、日常生活に支障をきたす病気です。

うつ病になると、ものの見方や考え方が否定的になるのがひとつの特徴とされています。
そのため、通常は受け流せることが気になり、何度も同じことを考えてしまうケースが少なくありません。

また、ネガティブな反芻を繰り返すと、うつ症状が悪化しやすい点も指摘されています。

女性とうつ病の関連については、以下の記事も参考にしてみましょう。

不安障害(不安症)

不安障害(不安症)は、将来や自分では解決できない事柄に対して強い不安や恐怖を覚え、行動や社会生活に支障をきたす状態です。

「もし〇〇になったらどうしよう」という、まだ見えない未来に対する心配が止まらない方も珍しくありません。反芻は、不安症状を持続させたり悪化させたりします。また、不安が強い方は、反芻を繰り返しやすいことも知られています。

強迫性障害(強迫症)

強迫性障害(強迫症)は、強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出る病気です。

「手が汚れているのではないか」「鍵を閉め忘れたのではないか」といった強い疑念や不安(強迫観念)が繰り返し浮かびます。それらを打ち消すために、必要ないとわかっていながら何度も手を洗ったり鍵を確認したりという「強迫行為」を繰り返すのが特徴です。

多くの方は強迫行為をともないますが、なかには不安や疑念を頭の中で繰り返すだけの方もいます。この「さっきの行動に間違いはなかったか?」と頭の中で繰り返すことが、結果として反芻と似た状態になることがあります。

アスペルガー症候群(発達障害)

アスペルガー症候群は発達障害の一つで、現在は自閉症スペクトラム症の一部として扱われています。人とのコミュニケーション方法が独特、特定のものに対して強い関心を持つなどの症状が特徴です。

アスペルガー症候群では、完璧主義の傾向により、思考の柔軟な切り替えが苦手な方もみられます。気になったことを何度も繰り返し考えてしまうケースも、十分に考えられるでしょう。

何度も同じことばかり考えてしまう理由

コンセントと電気コードの先が脳の模型となっている

何度も同じことばかり考えてしまう背景には、脳のメカニズムや環境など、さまざまな要因が隠れている場合があります。ここからは、その理由を順番にみていきましょう。

脳のネットワークが過剰に働いているから

同じことばかり考えてしまう理由の1つとして、脳の「デフォルトモードネットワーク」という部分が、必要以上に活性化している場合があります。

このネットワークは、特に何もしていないときや、自分について考えるときに働く脳内のネットワークです。
本来は過去の経験を整理したり、自己を分析したりするために重要な役割を果たしています。

しかし、活性化しすぎると、過去の自分を責める・後悔が止まらないなどの状態から、気分が落ち込みやすくなるケースがあるのです。

なお、自閉症スペクトラム症では、デフォルトモードネットワークの異常によって反芻を繰り返し、気分が落ち込みやすくなるという説もあります。

「セロトニン」が不足しているから

幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」が不足すると、ネガティブな思考を抑える力が弱まり、同じことを繰り返し考えやすくなる場合があります。

セロトニンは、脳の神経伝達物質の働きを調整して気持ちを落ち着かせる物質です。これが足りなくなると、「喜びや楽しさ」に強く関係するドパミンと、恐怖や驚きなどに関係する「ノルアドレナリン」のバランスが崩れやすくなると考えられています。

その結果、気持ちのコントロールが難しくなり、思考のループに陥りやすくなるのです。

ストレスが強い環境だから

人間関係の問題や過度なノルマなど、強いストレスがある環境では、脳が疲弊し、思考のループから抜け出せなくなることがあります。

脳が疲れてしまうと、普段なら受け流せるような小さな出来事でも深刻に考えて、ひとり反省会を繰り返す状態が続きやすくなります。その結果、何度も同じことばかり考えて気分が落ち込んでしまうケースは十分に考えられるでしょう。

個人の考え方の特性や性格だから

「不安を感じやすい」「完璧主義である」「自己肯定感が低い」などの方は、反芻思考に陥りやすい傾向があります。

こうした傾向がある方は、繰り返す内容も「なぜできないのだろう」「なぜあんなことを言ってしまったのだろう」といったネガティブな内容になりがちです。

過去の失敗や不安を分析・振り返ろうとした結果、考えが止まらなくなるケースは珍しくありません。

何度も同じことばかり考えてつらい時の対策

壁に向かった机にお花屋飲み物と一緒にノートが開かれている部屋の一部

何度も同じことばかり考えてしまうと、気分も落ちてしまいがちです。ここでは、気持ちの切り替え方を中心に、対策を紹介します。

他のことに注意を向ける

何度も同じことを考えてしまう場合、他のことに注意を向けるのがおすすめです。たとえば、自分の好きな本を読む、映画や音楽に没頭する、楽器演奏をするなどが挙げられます。

「考えないようにしよう」とすると、余計に考えてしまうものです。まずは意識を別のことに向ける時間を増やしてみましょう。

体を動かす

体を動かすことも、考えのループを断ち切るのに有効な方法です。運動は、考えから注意をそらす効果にくわえ、気持ちを落ち着かせる「セロトニン」の働きを助ける効果も期待できます。

ネガティブな考えを繰り返す場合、ジョギングやサイクリング、筋力トレーニングを組み合わせたややきつめの運動を継続するのが改善に効果的という報告もあります。

無理のない範囲で体を動かす習慣を付けられるよう、少しずつ意識してみましょう。

ジャーナリングで思考を整理する

自分の考えを紙に書き出す「ジャーナリング」を行うと、頭の中が整理されて、客観的に自分を見つめ直せるようになります。

何度も同じことばかり考え始めたとき「今、自分はネガティブな気持ちになっているな」と自覚することが大切です。

考えを紙に書き出して可視化すると、自分の状態を一歩離れた視点で確認でき頭のなかを整理できます。結果的に、思考のループを断ち切るきっかけにもなるでしょう。

具体的なジャーナリングの方法については、以下の記事を参考にしてみてください。

呼吸法やマインドフルネスを活用する

何度も同じことばかり考えている時、あなたの気持ちは「過去」や「未来」に飛んでいます。そこで効果を発揮するのが、「今」に意識を向ける「マインドフルネス」という考え方です。

考えがぐるぐると回り始めたら、座った状態で目を閉じ、呼吸に意識を集中させてみましょう。マインドフルネスは不安の改善にも効果が期待できるとされています。

マインドフルネスについては、以下の記事でも紹介しています。

専門家の力を借りる

今後に生かす「未来志向」の考えではなく、ただ過去を後悔する気持ちがぐるぐる回ってつらい場合は、精神科や心療内科で相談するのもひとつの方法です。

医療機関では「認知行動療法」という自分の行動パターンを知って改善する治療や、気持ちを落ち着けたり脳の神経伝達物質の働きを整えたりする薬を使った「薬物療法」などをおこないます。

現在の状態を専門家に相談するだけでも、自分の状況や考えが整理されて楽になるケースもあります。自分だけで抱え込むのがつらい場合は、他人の力を借りることも検討してみましょう。

自分の状態と向き合って前向きな時間を過ごそう

自然が多いテラス席で自分の時間を楽しむ女性

辛いことや失敗をした時に後悔し、ひとり反省会を繰り返したり何度も同じことを考えたりするのはよくあることです。脳のネットワークやストレス、個人の性格などの関係が挙げられますが、なかには病気に関連するケースもあります。

状況によっては、専門家の手を借りると楽になることもあります。自分の状態と向き合い、前向きな気持ちで過ごしていきましょう。

この記事を書いた人

南尾優香サムネイル

南尾優香

医療や健康に関する記事を執筆している、現役薬剤師ライター兼ディレクター。「正しい情報を、読者に響く形でお伝えする」をモットーに、日々活動しています。

この記事をSNSシェアしよう

関連記事