プレコンセプションケアという言葉を聞いたことはありますか?妊娠前から自分の体と健康を見直すこの取り組みは、将来の妊娠・出産を安全に迎えるためだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にも深く関わっています。特別な医療行為が必要なわけではなく、日々の食事・睡眠・運動といった生活習慣を整えることから始められます。
子どもを希望する方はもちろん、まだ具体的な予定がない方にとっても、今から健康を意識することが将来の自分を守ることにつながります。
この記事では、プレコンセプションケアの基本と、今日からできる具体的な取り組みをわかりやすく解説します。
プレコンセプションケア(プレコン)とは?
プレコンセプションケアとは、「若い男女が性や妊娠について正しく知り、健康管理をすること」を言います。将来妊娠を考える人はもちろん、そうでない人も自分や相手を守り、健康な毎日を送るために非常に大切な知識です。
元々アメリカのCDC(アメリカ疾病予防センター)から発表された政策で、2015年から本格的に日本にも導入されました。プレコンセプションケアの大まかな内容は諸外国と共通ですが、国ごとに特徴的な問題(たとえば日本における若い女性の痩せすぎなど)もあるため、それぞれ国の現状に合わせて内容を個別化する必要があります。
なぜプレコンセプションケアが必要なの?
昨今、プレコンセプションケアが必要とされている日本特有の理由を解説します。
婦人科疾患の早期発見と将来の不妊を防ぐため
日本人のヘルスリテラシー(健康情報を正しく理解し、活用する能力)は、諸外国と比べても低い傾向にあると言われています。欧米諸国のみならず、マレーシア、インドネシア、ベトナムといったアジアの発展途上国と比べても、健康に対する意識が低いとされています。
特に女性の場合、生理痛や月経不順といった不調があっても「これくらいで病院に行くのは……」と、婦人科受診のハードルを高く感じてしまう方は少なくありません。しかし、つらい症状を我慢して放置してしまうと、子宮内膜症などの疾患を見落とすリスクが高まり、日常生活のQOL(生活の質)低下や将来の不妊につながることもあります。
だからこそ、トラブルが起きる前から定期的に婦人科を受診し、自分の体の状態をチェックしておくことが大切なのです。
妊娠・出産に対する知識不足を解消するため
日本では学校の性教育で体の仕組みや避妊について学ぶ機会はありますが、いつまで妊娠できるかといった教育はされていません。
そのため、「生理がある間は希望の時期に妊娠できる」といった誤解をされている方がおり、ある程度の年齢になってから「こんなに妊娠できないなんて知らなかった」と悲しむ方がいます。
こうした知識のギャップを埋め、自分らしいライフプランを選択していくためにも、プレコンセプションケアを通じて正しい知識を得ることが求められます。
日本人女性に多い「痩せすぎ」のリスクを下げるため
日本では若い女性の痩せの割合が多く、20〜30代女性の20%が痩せに分類されています。痩せすぎは、将来の骨粗鬆症のリスクを高めたり、拒食症などの精神疾患を引き起こしたりする原因になります。
妊娠した場合には早産のリスクや、生まれた赤ちゃんが大人になったときに生活習慣病を発症するリスクが上昇するなど、世代を超えて健康影響を及ぼすことが分かっています。
日々の食事バランスを見直し、適切な体重を維持することは、将来の赤ちゃんのためだけでなく、あなたの健康を守ることにもつながります。
今から気をつけたい生活習慣
プレコンセプションケアを意識したときに、今から取り入れたい生活習慣を見てみましょう。
栄養バランスを意識して、葉酸をとる
成人女性であれば、1日2000キロカロリー前後、炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよく摂りましょう。
適切な体重を保つ
痩せ過ぎ、太り過ぎは生活習慣病や不妊症のリスクを高めます。また、妊娠中の合併症や赤ちゃんの発育に影響を与えることもあるため、今のうちから適正体重を知っておくことが大切です。
体格を表す指数にはBMI(Body Mass Index)が用いられます。「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で算出できるので、一度計算してみましょう。
18.5〜25未満が適正で、22に近いほど病気のリスクが低くなります。
適度な運動をする
運動をすることで、メンタルヘルスケア、適切な体重維持、生活習慣病の予防、妊娠中の合併症低下などの効果があります。
目安としては、週2〜3回の筋トレ、週60分以上の息が弾む程度の運動、毎日60分以上の歩行がおすすめです。
質の良い睡眠を確保する
睡眠不足はホルモンバランスの乱れにつながり、心身の健康に影響を与えます。昼過ぎ以外にも強い眠気に襲われたり、日中ぼーっとするなどは睡眠不足の可能性があります。
1日6〜8時間程度の睡眠が必要とされているため、寝室の温度や枕、スマートフォンの使用を控えるなど、睡眠環境を見直してみましょう。
禁煙する
喫煙は、様々ながんのリスクや糖尿病、心血管系の病気、呼吸機能低下など体に大きなダメージが出ます。
妊娠中や出産後に喫煙すると、乳幼児突然死症候群、早産、低出生体重児、発育遅延などの影響があります。受動喫煙もリスクがあるため、周りの人も禁煙するようにしましょう。また、加熱式タバコも安全性は確立されていません。
アルコール摂取は適切にする
飲酒量の安全域というのは設定されていません。過度な飲酒は生活習慣病や様々ながんのリスクと関係があります。
特に、アルコールは胎盤を通じて赤ちゃんに届いてしまうため、妊娠の可能性がある時期の飲酒は控えるべきです。流産、早産、死産、妊娠高血圧や赤ちゃんの発育の遅れ、中枢神経の発達に影響が出ます。
自分に合った方法でストレスをコントロールする
不安や緊張、生活リズムの乱れ、天候など様々な要因で人間にはストレスがかかります。強すぎるストレスはホルモンバランスを乱し、血圧上昇や血糖値の上昇、不眠、イライラなど多彩な症状が起きます。
気分転換、運動、会話、休息など、自分に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。
性感染症の予防をする
性感染症には、クラミジアや淋病、梅毒、HIV感染症などがあります。中には、放置すると不妊症リスクが上がったり、赤ちゃんに先天的な異常を起こしたり、自身の生命に関わるものがあります。
ワクチン接種やコンドームの使用、検査の受診で早期発見に努めましょう。
ワクチンを接種する
コンジローマや子宮頸がんはワクチンを接種することで感染のリスクを減らせます。
妊娠中にかかると赤ちゃんに影響が出る風疹、麻疹、水痘などもあらかじめワクチンを接種することで安心につながります。
定期的に婦人科検診を受ける
定期的な婦人科検診を受けることで、子宮頸がんや子宮内膜症、子宮筋腫などを見つけることができます。
早期に発見し治療することで将来の妊娠に対する備えや、手術など体への負担を回避できる可能性があります。
将来の妊娠のために今できること
プレコンセプションケアの考え方は「将来の妊娠を考えた時に今から健康な体を作っておく」ことです。
現時点で妊娠を希望していなくても、妊活ドックを受けて自分の今の体を知っておいたり、卵子凍結も選択肢に入れたりすることで、ライフプランを考えやすくなります。
AMH検査で卵巣の予備能を調べる
女性の卵子は、自分が母親の胎内にいるときに作られ、以降は新しく作られることはなく減る一方です。
AMH検査では、採血によって「卵巣の中に残っている卵子の数の目安」を調べることができます。自分にどれくらいの卵子が残っているかを知っておくことで、何歳ごろに結婚や出産を計画するか、具体的なライフプランを考えるのに役に立つでしょう。
妊活ドックの検査で「妊娠を妨げる原因」を確認する
妊活ドックでは、血液検査や超音波(エコー)検査などを通して、感染症や内科的な疾患の有無、ホルモン分泌が適正か、子宮や卵巣に異常がないかなど、将来の不妊リスクの有無について調べられます。それらに対する助成制度がある自治体も増えているので、うまく活用しましょう。
将来の選択肢「卵子凍結」を検討する
未婚女性の場合、若いうちに卵子を採取して凍結保存しておく「卵子凍結」という方法もあります。キャリアとのバランスや人生設計に合わせて、将来の妊娠に備えるための選択肢の1つです。
東京都をはじめとする一部の自治体や企業で助成金制度がある場合もあるので、興味があれば調べてみましょう。
卵子凍結について、以下の記事も参考にしてください。
プレコンセプションケアに関するよくある質問
プレコンセプションケアに関するよくある質問にお答えします。
何歳から始めるのがベストですか?
妊娠を意識し始めた方はもちろん、10代からでも早すぎる事はありません。気になったタイミングが始めどきです。
男性もプレコンセプションケアに取り組むべきですか?
男性にとっても、もちろん大切です。不妊の原因の半数は男性にあり、生活習慣が影響している部分も大きいのです。パートナーと一緒に取り組みましょう。
将来のライフプランのために、プレコンセプションケアを取り入れよう
プレコンセプションケアは、特別なことではありません。今の自分の体の状態を知り、将来のライフプランを見据えながら、できることから準備しておくことです。妊娠を希望したときに心身ともに良い状態を保っておくことは、安全な妊娠・出産につながるだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にも大きく影響します。
また、将来的に子どもを持たない選択をした場合でも、若いうちから自分の健康を意識する習慣は、将来の病気予防や健康維持にしっかりと役立ちます。
まずは毎日の食事・睡眠・運動・ストレスなど、日々の生活習慣を見直すことから始めてみましょう。小さなことでも、取り入れられることがあれば少しずつ改善していくことが大切です。

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