「セクシャルウェルネス」という言葉を、最近少しずつ見かけるようになりました。
フェムケア、セルフプレジャー、デリケートゾーンケア、避妊、同意、性教育。性にまつわるさまざまなテーマが、以前よりも少しずつ話されるようになっています。
でも一方で、「セクシャルウェルネスって結局なに?」「なんだか意識が高そう」「自分には関係ないかも」と感じる人もいるかもしれません。
性のことは、興味があっても話しにくいものです。恥ずかしさがあったり、誰かにどう思われるか気になったり、自分の中でも言葉にしづらかったりします。
けれど、セクシャルウェルネスは、特別な人だけのものではありません。恋人がいる人だけのものでも、性に積極的な人だけのものでもありません。
自分の体を知ること。自分の気持ちを大切にすること。安心できる関係を選ぶこと。嫌なことを嫌だと言っていいと知ること。
そうしたひとつひとつも、セクシャルウェルネスの大切な一部です。
この記事では、セクシャルウェルネスとは何か、そして“気持ちいい”より先に大切にしたいことについて、一緒に考えていきます。
セクシャルウェルネスは「性を自分らしく大切にすること」
セクシャルウェルネスと聞くと、性のテクニックや快感を高めることをイメージする人もいるかもしれません。
もちろん、心地よさや快感も大切な要素のひとつです。自分の体が何を心地よいと感じるのかを知ることは、自分を大切にすることにもつながります。
でも、セクシャルウェルネスはそれだけではありません。
自分の体に違和感があった時に相談できること。避妊や性感染症について知ること。パートナーと同意について話せること。したくない時に「今日はしたくない」と言えること。性欲がある自分も、性欲があまりない自分も、どちらも否定しないこと。
そうした、自分の体と心を尊重する姿勢全体が、セクシャルウェルネスにつながっています。
つまり、セクシャルウェルネスは「もっと気持ちよくなるため」だけのものではありません。
自分の性を、誰かの期待や世間の普通に合わせるのではなく、自分自身の感覚から見つめ直していくこと。そのための視点なのです。
性に“正解”を押しつけないこと
性のあり方は、人によって違います。
たくさん触れ合いたい人もいれば、スキンシップだけで十分な人もいます。恋愛と性が強く結びついている人もいれば、そうではない人もいます。パートナーとのセックスを大切にしたい人もいれば、今は性から距離を置きたい人もいます。
どれかひとつが正しくて、ほかが間違っているわけではありません。
「普通はこう」
「恋人ならこうするべき」
「大人なら知っていて当然」
「性に積極的な方が魅力的」
そんな言葉に、自分の感覚を合わせすぎなくていいのです。
セクシャルウェルネスは、誰かの正解をなぞることではありません。自分にとって安心できる形を、少しずつ見つけていくことです。
“気持ちいい”より先に、安心できること
性の話では、「気持ちよさ」や「満足」が注目されることがあります。
でも、本当に自分らしく性と向き合うためには、その前に大切なものがあります。
それは、安心できることです。
安心できない相手。断りにくい空気。避妊について話せない関係。痛いと言えない状況。途中でやめたいと思っても止められない不安。
そうした状態では、どれだけ体に刺激があっても、心から心地よいとは感じにくいものです。
“気持ちいい”は、安心の上にあるもの。
自分の気持ちが尊重される。嫌なことを嫌と言える。避妊や体調について話せる。途中で気持ちが変わっても受け止めてもらえる。
そうした土台があってはじめて、性は自分をすり減らすものではなく、自分を大切にする体験になっていきます。
同意は「嫌じゃない」ではなく「安心して選べる」こと
同意というと、「いいよ」と言ったかどうかだけに見えるかもしれません。
でも本当は、もっと繊細なものです。
怖くて断れなかった。雰囲気を壊したくなくて黙っていた。相手を傷つけたくなくて応じた。本当は迷っていたけれど、流れでそうなった。
そういう時、「嫌と言わなかったから同意した」とは言い切れません。
同意は、自分が安心して選べる状態にあることが大切です。
「今日はここまでがいい」
「それは少し苦手」
「一回止めたい」
「避妊しないならしたくない」
そんな言葉が言える関係かどうか。言った時に、相手が尊重してくれるかどうか。
それは、セクシャルウェルネスを考えるうえで、とても大切な視点です。
自分の体と心の声を聞いてみる
セクシャルウェルネスの第一歩は、自分の体と心に関心を向けることかもしれません。
といっても、難しいことをする必要はありません。
「私はどんな時に安心する?」
「どんな触れ方が心地いい?」
「逆に、どんな時に緊張する?」
「本当は嫌なのに、我慢していることはない?」
「体に違和感があるのに、放っておいていない?」
そんなふうに、自分に問いかけてみるだけでも十分です。
性に関することは、相手にどう思われるかを優先してしまいやすいテーマです。けれど、自分の体と心は、まず自分自身のものです。
誰かを喜ばせる前に、自分は安心できているか。相手に合わせる前に、自分は本当はどう感じているか。
その感覚に戻ってくることが、自分を大切にする入口になります。
知識は、自分を守るためにある
からだのこと、避妊のこと、性感染症のこと、月経やホルモンのこと、性欲の変化のこと。
性に関する知識は、不安を増やすためにあるものではありません。自分を守る選択肢を増やすためにあります。
たとえば、避妊方法を知っていれば、不安なまま相手に流される前に「私はこうしたい」と考えやすくなります。性感染症について知っていれば、「検査を受ける」「コンドームを使う」「不安があれば相談する」という選択がしやすくなります。
痛みや違和感が続く時に、「我慢するしかない」と思わず、婦人科や泌尿器科などに相談するきっかけにもなります。
知らなかったことは、恥ずかしいことではありません。
学ぶ機会が少なかっただけです。大人になってからでも、自分のために知っていけばいいのです。
パートナーがいても、いなくても大切にしていい
セクシャルウェルネスは、パートナーがいる人だけのものではありません。
恋人がいない時期でも、自分の体について知ることはできます。自分がどんな関係に安心するのかを考えることもできます。性に対してどんな距離感でいたいのかを見つめることもできます。
セルフプレジャーを通して自分の体を知る人もいれば、今は性から距離を置くことで安心する人もいます。どちらも、自分の感覚を大切にしているという意味では、セクシャルウェルネスの一部です。
また、パートナーがいる場合も、「相手がいるから応えなければならない」と考える必要はありません。
性は、義務ではありません。
愛情を証明するために、無理をして差し出すものでもありません。
ふたりで話し合いながら、どんな距離感が心地いいのかを探していくことができます。
自分を大切にすることは、相手を拒絶することではない
「今日はしたくない」と言うこと。
「避妊してほしい」と伝えること。
「その触れ方は苦手」と話すこと。
「もう少しゆっくりがいい」とお願いすること。
こうした言葉を伝える時、相手を傷つけるのではないかと不安になることがあります。
でも、自分の気持ちを伝えることは、相手を否定することではありません。
むしろ、自分の状態を共有することで、相手もあなたを理解しやすくなります。無理をして笑っているよりも、本当の気持ちを少しずつ伝え合える関係の方が、安心は育ちやすいものです。
自分を大切にすることは、相手を大切にしないことではありません。
ふたりの関係を、より現実に近く、安心できるものにしていくための大切なコミュニケーションです。
まとめ|セクシャルウェルネスは、自分を大切にする視点
セクシャルウェルネスは、特別な言葉に聞こえるかもしれません。
でも、その中心にあるのは、とてもシンプルなことです。
自分の体を知ること。
自分の気持ちを大切にすること。
安心できないことには、無理に応じないこと。
性について、ひとりで抱え込まずに学んだり相談したりすること。
誰かの普通ではなく、自分にとって心地よい形を見つけていくこと。
“気持ちいい”を大切にする前に、まず自分が安心できているか。自分の意思が尊重されているか。自分の体と心を置き去りにしていないか。
そこに目を向けることが、セクシャルウェルネスのはじまりなのかもしれません。
性のあり方に、ひとつの正解はありません。
たくさん触れ合いたい日があってもいい。距離を置きたい時期があってもいい。学び直したいと思ってもいい。まだよくわからないままでも大丈夫です。
大切なのは、自分を責めずに、自分の感覚へ少しずつ近づいていくこと。
あなたの体は、あなたのものです。
あなたの気持ちも、あなたのものです。
性を、自分をすり減らすものではなく、自分を大切にするための視点として見つめ直していけますように。
