「生理後すぐは安全日だから、避妊しなくても大丈夫」と、思っていませんか?
実は「安全日=妊娠しない日」ではありません。排卵や精子の生存期間、体調による排卵日の変化により、生理後すぐでも妊娠の可能性があります。
この記事では、生理後の安全日や危険日という言葉の意味、避妊の基本などを解説します。
生理後の安全日・危険日とは
生理が終わった直後は妊娠しにくい「安全日」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。まずは、安全日・危険日の考え方や、月経周期と排卵・妊娠のしくみを正しく理解しておきましょう。
生理(月経)と妊娠については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
安全日・危険日の考え方
「安全日」「危険日」は医学用語ではなく、一般的な俗称です。
- 安全日:排卵の前後以外の妊娠しにくい時期
- 危険日:排卵の前後にあたる妊娠しやすい時期
これは、月経周期から排卵日を推定する考え方に基づいていますが、確実なものではありません。
そのため、「安全日だから避妊をしなくても大丈夫」と考えるのは、望まない妊娠のリスクを高める要因となります。
月経周期と排卵の仕組み
排卵とは、卵巣内の「卵胞(らんぽう)」という袋から、卵子が1個放出される現象です。排卵日が近づくと、脳の下垂体から分泌されるホルモンの働きで複数の卵胞が成長し、その中から1つが成熟して卵子を排出します。この排卵は、通常「次の生理が始まる約14日前」に起こるとされています。
一般的な月経周期は、25日から38日の間とされており、多くの場合、生理開始日から数えて9日目から24日目の間で排卵が起こる計算となります。
しかし、実際には生理が来てはじめて「排卵は14日前だった」とわかることが多いため、次の排卵日を正確に予測することは難しいといえるでしょう。
なぜ生理後でも妊娠する可能性があるのか

生理が終わった直後でも、妊娠する可能性はゼロではありません。主な理由は、「精子や卵子の生存期間」と「排卵のズレ」が関係しています。
精子・卵子の生存期間があるから
個人差があるものの、性行為によって腟内に射精された精子は、女性の体内で3〜5日ほど生存できるとされています。
そのため、排卵の数日前に性行為をすると、とどまっていた精子が体内で卵子と出会い、受精して妊娠につながる可能性があります。
一方、卵子の寿命は、排卵後およそ24時間以内です。この短い時間に精子と出会うことで、妊娠が成立します。
排卵のズレによる妊娠の可能性があるから
排卵のタイミングは、ホルモンバランスや体調、ストレスなど、さまざまな要因によって前後します。たとえば、いつもは生理開始から14日目前後で排卵する人でも、ある月だけ排卵が早まったり遅れたりすることは珍しくありません。
排卵が早まった場合、生理直後のタイミングが実質「危険日」になるケースもあり得ます。
生理後の安全日や危険日を予測する方法
生理後の安全日・危険日を予測するには、排卵日のタイミングを把握することが重要です。
ただし、どの方法も「確実に妊娠しない日」を示すものではありません。
生理後の「安全日」「危険日」の判断はあくまでも目安として、参考程度に留めましょう。
月経周期から予測する
自分の月経周期をもとに排卵日を予測し、性行為のタイミングを調整する方法があります。
たとえば、月経周期が28日で安定している場合、予測される排卵日(危険日)は次の生理予定日の14日前、つまり生理開始日から14日目あたりです。この期間の性行為を避ければ、妊娠のリスクを軽減できる可能性があります。
月経周期の管理方法は、カレンダーに記載する、スマートフォンのアプリで管理する、オンラインで計算できるサイトを利用するなどが一般的です。
ただし、体調やストレスによる影響で排卵日は変動するため、予測には限界があります。月経周期からの推定は、あくまで目安として活用しましょう。
基礎体温で排卵のタイミングを予測する

基礎体温とは、起床直後・安静状態で測定する体温のことです。月経周期に伴うホルモンバランスの変化により、基礎体温は排卵を境に低温期から高温期に移行するのが一般的です。
この体温変化を毎日記録してグラフにすると、排卵時期を推測できます。
高温期に入って数日以上経っていれば、排卵された卵子は寿命を迎えている可能性が高く、妊娠の可能性はやや低いと考えられます。
ただし、生理後すぐは低温期であること、基礎体温で正確な排卵日を知るのは難しいことを考えると、安全日の完全な予測は難しいでしょう。
排卵検査薬やおりものの変化でチェックする
排卵が近づくと、黄体形成ホルモン(LH)が大量に分泌される「LHサージ」という現象が起こります。排卵日検査薬は、尿中のLH濃度を測定して、排卵が近いことを知らせる検査キットです。
また、月経周期で変化するおりものの状態から、排卵時期の目安が予測できる場合もあります。
ただし、これらの方法で分かるのは「排卵日が近い」という内容に限られるため、安全日の特定に使うのは限界があります。
生理後でも必要!避妊方法と確率を正しく知ろう

望まない妊娠を防ぐには、正しい避妊方法の知識が欠かせません。ここでは、安全日・危険日の考え方以外に活用できる避妊方法と、その効果について紹介します。
コンドームを使用する
コンドームは、男性器に装着して精子の腟内への侵入を防ぐ避妊方法です。手軽に使用でき、粘膜どうしの接触を防げるため、性感染症の予防にも有効です。
コンドームで避妊できる確率は、一般的な使用で85%、理想的な使用で98%といわれています。
ただし、破損や装着ミスなどがあると効果が低下するため、正しい装着方法と使用タイミングを知ることが大切です。
低用量ピルを服用する
低用量ピルは、女性ホルモンを含む飲み薬です。毎日決まった時間の服用によって排卵を抑制し、妊娠を防ぎます。
低用量ピルで避妊できる確率は、きちんと服用していれば99.7% 。飲み忘れや飲み間違いなどがあると93%ほどです。なお、避妊に失敗したときに服用する「アフターピル」とは、含まれる女性ホルモンの種類や量が異なります。
服用をやめれば数ヶ月以内に排卵は再開するため、将来的な妊娠への影響はありません。
子宮内避妊器具を挿入する
女性ホルモンの一種「黄体ホルモン」を少量ずつ放出する、子宮内避妊器具(IUS:ミレーナなど)を医療機関で挿入するのもひとつの方法です。
ただし、出産経験のない方は、挿入時の痛みや出血が出やすく、まれに器具が外れるリスクもあります。そのため、初めての避妊方法としては、別の選択肢を検討することが一般的です。
ミレーナについては、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
妊娠が不安なときはどうすればいい?

安全日と思って性行為をしたあと、「妊娠しているのでは」と不安になる方は少なくありません。ここでは、妊娠しているかを調べる方法やアフターピルについて紹介します。
妊娠検査薬を使って確認する
妊娠の可能性が気になるときは、市販の「妊娠検査薬」が手軽に使えます。生理予定日の1週間後に使用してみましょう。
なお、生理予定日から使用できるタイプもありますが、検査のタイミングが早すぎると陰性でも妊娠している可能性があります。予定日を過ぎても生理が来ない場合、1週間後を目安に再検査するとよいでしょう。
基礎体温の変化から推測する
基礎体温のグラフを付けている場合、性行為の数日後に高温期になっていれば、排卵が起きていた可能性があります。精子の生存期間と排卵が重なった場合、妊娠につながる可能性は考えられます。
また、妊娠している場合、生理が来ずに高温期が通常より長く続く傾向があります。
ただし、体温の変動は個人差があり、低温期から高温期への移行がはっきりしないケースは珍しくありません。予定日に生理が来ない場合は、妊娠検査薬で確認しましょう。
クリニックやオンライン診療でアフターピルを処方してもらう
アフターピルは女性ホルモンを含む緊急避妊薬で、性行為後72時間以内の服用により妊娠の可能性を下げられます。
基本的には、婦人科やピル外来などのクリニックで診察を受けて処方してもらう方法が一般的です。
最近では、厚生労働省が指定した研修を修了した医師によるオンライン診療での処方も可能になっています。自宅にいながら診療・配送を受けられるため、早めに対応したい場合には便利な選択肢だといえます。
一部地域では、処方せん不要で購入できる薬局の試験運用が始まっていますが、対応店舗が限られており、薬剤師によるヒアリングや本人確認など手続きも煩雑なため、実際の選択肢としては少数派です。
不安な場合は、できるだけ早く婦人科クリニックを受診するか、信頼できるオンライン診療サービスを利用しましょう。
「安全日」という考えは危険!正しい避妊で自分を守ろう
「安全日だから大丈夫」という考えだけで避妊をするのは、実はとてもリスクの高い行為です。排卵の時期には個人差やずれがあり、精子の生存期間を考えると、生理後すぐでも妊娠の可能性はゼロではありません。
妊娠を望まない場合、コンドームや低用量ピルなど、確実性の高い避妊法を選ぶことが大切です。また、妊娠の不安がある場合は産婦人科クリニックを受診して、アフターピルの服用も選択肢となります。
正しい妊娠・避妊の知識を持つことは、自分の心とからだを大切に守る第一歩です。不確かな情報に惑わされず、自分らしく安心できる選択をしていきましょう。