片手でコップを持ち、片手で口元へ薬を運ぶ女性

【医師監修】ピルの副作用が怖いと感じる方へ|注意するポイントや安心して使う方法を解説

2025.09.02
中里 泉 先生
監修
中里 泉 先生
あらかきウィメンズクリニック
日本産科婦人科学会認定専門医/医学博士
専門:生殖内分泌、性感染症
所属学会:日本産科婦人科学会 日本生殖医学会

ピルは避妊だけでなく、生理痛の緩和や肌荒れの改善、PMSの対策など、さまざまな目的で使われるようになってきました。その一方で、「副作用が不安…」「年齢的に使っても大丈夫かな?」と迷っている人も多いのではないでしょうか。 実は、ピルの副作用の現れ方やリスクは、年代や体の状態によって異なることがあります。 今回は、それぞれの年齢で気をつけたいポイントと、安心して使うためのコツを解説します。自分の体と向き合いながら、ピルを味方にするヒントを見つけてみましょう。

ピルってどんな薬?種類と特徴

英語でpillsと書かれた薬の周りに、何種類かの薬が散らばっている画像

経口避妊薬、いわゆる「ピル」は、卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモン(プロゲステロン)を人工的に合成したプロゲスチンという2種類の女性ホルモンを配合した薬剤です。

本来は避妊目的で開発された薬ですが、現在では月経困難症、過多月経、PMS(生理前症候群)、にきびや肌荒れの改善など、幅広い目的で使用されています。

さらに、子宮内膜症の進行抑制や、卵巣がん・子宮体がん・大腸がんのリスク低下にもつながることが知られています。

ピルは、配合されるホルモンの量によって大きく次の3種類に分けられます。

  • 【超低用量ピル】副作用が最も少なく、国内でも月経困難症や過多月経の治療に標準的に用いられている
  • 【低用量ピル】避妊薬として世界的に広く使われており、PMSやにきび改善にも適している
  • 【中用量ピル】副作用リスクが高く、現在では避妊目的ではほとんど使用されず、月経移動や子宮異常出血の止血、緊急避妊など特殊なケースで用いられる

最近では、血栓症のリスクが低い新しいエストロゲンの導入やエストロゲン非配合のプロゲスチン単剤(ミニピル)も登場し、副作用の少ない選択肢が増えてきました。

ミニピルについては、以下の記事も参考にしてください。

ピルの副作用って本当に怖い?リスクと対処法

ピルに限らず、全ての薬には効果がある反面、副作用もあります。

ピルの副作用に対して不安を感じる方も多いかもしれませんが、あらかじめ特徴や対処法を知っておくことで、過度に心配せずに付き合いやすくなるでしょう。

ここでは、ピル特有の副作用やリスク、対処法について解説します。

初期に出やすい副作用

ピルを飲み始めた時によくあるマイナートラブルとして、次のようなものがあります。

  • 不正出血(20%)
  • 吐き気(7%)
  • 気分の落ち込み(5%)
  • 胸の張り(4%)
  • 頭痛(4%)

ピルの副作用の中で最も注意が必要なのが「血栓症」です。血管内に血のかたまり(血栓)ができ、肺塞栓症や脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な病気を引き起こすリスクがあります。

副作用のリスクと対処法

多くのマイナートラブルは、飲み続けることで減少していきます。日常生活に支障がない範囲であれば、まずは3周期(約3ヶ月)ほど使用してみましょう。

副作用により仕事や学業に影響が出るようなら、医師と相談のうえ、以下のような方法を試すのも選択肢のひとつです

  • ピルの種類を変える
  • 28日間周期で内服を繰り返す「周期投与」から、最長120日間まで連続して内服できる「連続投与」に変更する

血栓症のリスクは、服用開始後4か月以内が高いとされています。血栓症は、ピルの内服の他、妊娠・出産、喫煙、高年齢、肥満、長時間の座位などでリスクが高まります。

血栓症の発症率の比較(年間10,000人あたり)

  • 服用していない女性:1〜5人
  • ピル服用中:3〜9人
  • 妊娠中:5~20人
  • 出産後:40~65人

このように、相対的なリスクはピルを飲んでいない人に比べ高くなりますが、絶対的なリスクは妊娠や出産と比べると低いと言えます。ピルを飲むことで血栓症のリスクが高くなることは事実ですが、過度に恐れるほどではありません。

血栓症の兆候として、激しい頭痛、腹痛、胸痛、呼吸困難、ふくらはぎの痛みなどがあります。これらの症状が現れた場合はすぐに内服を中止し、医師に相談をしましょう。

ピルを始める前に要チェック!年齢を問わず気をつけたいこと

ベッドの上で薬を服用しようとしている女性の背後

ピルを飲むにあたって、できるだけ副作用を減らすために気を付けるべきことを紹介します。

ピルを飲むなら、禁煙をしよう

喫煙は様々な健康リスクをもたらしますが、喫煙している方がピルを飲むと、心筋梗塞や血栓症のリスクを増加させると言われています。

そのため、35歳以上で1日15本以上喫煙している方は、ピルを飲むこと自体禁止であり、それ以下の本数でも基本的に内服は推奨しないとされています。

禁煙すると心血管疾患のリスクが低下すると言われているため、ピルを飲み始める前に禁煙するようにしましょう。電子タバコについてはまだ十分な検討がなされていませんが、電子タバコとピルの併用は必ずしも安全とは言えず、注意が必要です。

前兆のある片頭痛がある人は受診しよう

ピルを飲むにあたり、片頭痛の前兆の有無を確認することが非常に大切です。特に、前兆のある片頭痛には注意が必要です。前兆とは頭痛の前に現れる症状で、たとえば以下のようなものがあります。

  • 視界がチカチカする(閃輝暗点)
  • 言葉がうまく出てこない
  • 手足の感覚が鈍くなる

このような前兆がある方は、ピルを飲むことにより脳梗塞の発症リスクが高くなるため、ピル以外の対処方法を検討します。

「これが前兆かどうかがわからない」「頭痛の頻度が増えた」と感じる方は、自己判断せず頭痛外来に相談しましょう。

持病がある人は医師に相談しよう

高血圧や脂質異常症、肥満(BMI30以上)の方は、ピルを飲むことにより心筋梗塞や脳出血のリスクが高くなると言われています。それぞれの疾患ごとに基準値があり、総合的に考慮して飲むことができるかできないか判断が必要です。

とはいえ、高血圧や脂質異常症、糖尿病などは、適切にコントロールされていればピルを飲むことが可能な場合もあります。将来的な健康維持も考慮し、持病のある方はまず内科に受診しましょう。

性感染症を防ぐために対策をしよう

ピルは、正しく飲んでいれば99.7%の避妊率と、女性が取り入れやすい避妊法としてはかなり成功率が高い方法です。ただし、性感染症の予防はできないため、コンドームの併用が理想的です。

【年代別】ピルの副作用で注意したい点と、安心して使うためのポイント

年齢を重ねると、体の変化や病気のリスクに応じて、ピルの副作用にも注意が必要になってきます。

ここでは、年代別に気をつけたい副作用と、安心してピルを使うためのポイントをご紹介します。

30代

ピルを飲んでいると、乳がんや子宮頸がんの発症リスクがわずかながら上昇する可能性があります。ピルを飲んでいなくても、30代になるとそれらの疾患を発症する人が増えてくるため、定期的な婦人科検診を受けておくと安心です。

40代以降

40歳以降になると、心筋梗塞等の心血管病変が起きやすくなるため、ピルを飲むことに注意が必要です。

特に閉経後や50歳以上では、ピルを飲むことはできません。安全性を考慮し、40代以降はエストロゲンの入っていない、プロゲスチン単体のホルモン剤に変更することを検討します。

また、40代になると生活習慣病が発症しやすくなり、高血圧や糖尿病、脂質代謝異常などで飲めなくなることがあります。

定期的な健康診断を受け、持病がある場合は内科を受診し、病気のコントロールをしましょう。

これって本当?ピルにまつわるQ&A

ピルを片手に、スマホで調べものをする女性

ピルについて、ネットや友人からさまざまな情報が入ってくるため、何が正しいのか混乱する方も少なくありません。ここでは、ピルにまつわるよくある質問についてお答えします。

ピルを飲むと太る?

ピルを飲むことにより「太った」と感じる方もいますが、様々な研究の結果から、ピルを飲むことと体重増加に因果関係はないとされています。一時的なむくみや食欲変化で体重が変動することもありますが、恒常的な肥満の原因にはなりません。

ピルを飲むと不妊になる?

ピルを飲んでいる間は排卵が抑えられますが、服用終了後3か月以内に90%で排卵が再開するとされています。ピル中止後の妊娠率は通常の集団と変わらず、1年以内に84〜88%が妊娠していると報告されています。そのため、ピルを飲むことで妊娠しにくくなるという心配はありません。

ピルを飲むと妊娠可能な期間は長くなる?

ピルを飲んでいても、妊娠可能な期間が伸びるわけではありません。

ピルを飲んでいる間は排卵は抑えられるものの、卵子そのものは1か月あたり1000個ほど自然に消滅するからです。また、妊娠率は年齢と密接に関連しており、卵子が残っていても年齢が上がると妊娠率は低下します。

残念ながら、10年ピルを飲んでいるからといって10年妊娠可能な期間が延長されるわけではないことに注意が必要です。

年齢ごとの副作用リスクを知って、「自分らしい」ピルとのつき合い方を探してみよう

ピルは、避妊薬としてだけでなく、月経痛やPMSの改善、肌トラブルや子宮内膜症の管理など、多くの女性の生活の質を向上させる薬です。一方で、血栓症など重大な副作用リスクも存在するため、自身の年齢・健康状態・生活習慣を把握し、定期的な検診を受けながら使用することが重要です。

副作用を過度に恐れて避けるのではなく、リスクとメリットを正しく理解し、医師と相談しながらライフステージに合った「自分らしい」ピルとのつき合い方を見つけていきましょう。

この記事を書いた人

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ピカエナ

webライター。産婦人科系の情報を中心に発信しています。休日はアフリカのサファリで動物の写真を撮っています。

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