ベッドで膝にかかった布団ごと膝を抱える女性

【医師監修】考えすぎて眠れないのは病気?セルフチェックと今日からできる対処法

2025.08.19
川合 厚子 先生
監修
川合 厚子 先生
クリニック院長
内科、精神科を担当 医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本精神神経学会専門医、公認心理師、労働衛生コンサルタント、産業医

「考えすぎて眠れない」という状態が続くと、不安になる方も多いのではないでしょうか。一時的な不眠であれば心配いりませんが、日常生活に支障が出るほど眠れない状態が続く場合は病気の可能性もあります。

この記事では、病気の可能性のセルフチェックに加えて、考えすぎて眠れない場合の対処法をご紹介します。

考えすぎて眠れないのは病気のサイン 

ストレスや心配事が頭から離れず、眠れなくなった経験はないでしょうか。一時的な寝つきの悪さや中途覚醒は誰にでも起こりうるため、必ずしも病気とは限りません。

しかし「寝つきが悪い」「眠りが浅い」「眠っている間に何度も目が覚める」といった状態が続き、日常生活に支障が出ている場合、不眠症の可能性があります。
不眠の状態と日中の不調が3ヶ月以上続く場合は「慢性不眠症」3ヶ月未満であれば「短期不眠症」と診断されます。

不眠症は考えすぎのほかにもさまざまな理由によって発症しますが、原因に合わせた対策が必要です。
不眠症の状態に当てはまるかどうか、まずは簡単なセルフチェックでリスクを確認してみましょう。

病気のリスクをセルフチェックしてみよう

以下の症状のうち、過去1ヶ月間に少なくとも週3回以上経験したものをチェックしてみましょう。








当てはまる数が多いほど不眠症の可能性があります。

考えすぎて眠れない原因と考えられる病気

ベッドの上で膝を抱えて座る女性が頭上からのアングルに合わせてこちらを見上げている

考えすぎて眠れなくなってしまう原因は、ストレスやホルモンバランスの乱れなど多岐にわたります。さらに、物事を深く考え込みやすい性格やHSP(Highly Sensitive Person:繊細な気質)も関係し、不眠につながっている可能性も考えられます。

心理的ストレス

日常的に感じる心理的なストレスによって悩みが生じ、考えすぎて眠れなくなることがあります。仕事のプレッシャーや家族・人間関係の悩み、完璧主義などが主な原因です。

こうした悩みごとを寝る直前まで考え続けると、交感神経が優位なまま眠りにつくことになります。眠るためには、副交感神経の働きで脳や身体をリラックスさせることが必要です。
しかし、ストレスが強いと自律神経のバランスが乱れて副交感神経がうまく働かず、不眠や寝つきの悪さにつながることがあります。

ホルモンバランスの乱れ

ホルモンバランスの乱れは、睡眠の質を低下させる要因の一つです。

特に女性は、月経周期や思春期、妊娠・出産、更年期などのライフステージの変化によってホルモン分泌が変化します。
中でも、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは気分や睡眠の質を保つ働きがあり、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)、更年期障害、不眠や情緒不安定を引き起こすことがあるのです。

メンタルの病気

考えすぎて眠れなくなる背景には、うつ病や不安障害などのメンタルの病気が関係していることがあります。

うつ病では、気分の落ち込みや意欲低下だけでなく、「寝つきが悪い」「途中で目が覚める」といった不眠症状がよくみられます。不安障害の場合も、将来への過剰な心配や不安が頭から離れず、夜間に眠れなくなる可能性があります。

HSPの気質

HSPの気質があると、考えすぎて眠れなくなる傾向があります。

HSPとは、音や光・匂い・肌触りなどの感覚刺激や、人間関係・環境の変化に対して非常に敏感に反応する人を指します。個人の「気質」の一つとされており、医学的な疾患名ではありません。
日常の些細な刺激や他人の感情、職場や家庭の雰囲気の変化などから強いストレスやプレッシャーを受けやすい傾向にあり、結果として考えすぎて眠れなくなることが考えられます。

薬や刺激物

コーヒーやチョコレートなどに含まれるカフェインには覚醒作用があり、就寝前に摂取すると寝つきが悪くなることがあります。また、タバコに含まれるニコチンも刺激薬として作用し、就寝前の喫煙は睡眠を妨げる要因になります。

さらに、降圧薬・甲状腺製剤・抗がん剤などの副作用として不眠を引き起こすことがあり、服用している場合は医師に相談すると安心です。

生活習慣の乱れ

考え事をしていて夜更かしや不規則な就寝・起床が続くと、体内時計が乱れて寝つきにくくなります。また、寝る前にスマートフォンで悩み事を検索する習慣があると、ブルーライトの影響で脳が興奮し、睡眠の質が低下する原因になります。

今日からできる!考えすぎて眠れないときの対処法 

ベッドメイキングをする女性の手元と寝具

考えすぎて眠れない時に試したい、すぐに取り組める対処法を紹介します。睡眠の環境を整えること、メンタルを整えることの両面からアプローチしましょう。

睡眠の環境を整える

寝つきが良くなるように、睡眠環境を快適に整えましょう。入浴は就寝の1~2時間前にし、お湯に浸かって身体を温めるのがおすすめです。体温が自然に下がり始めてスムーズな入眠を促します。

また、ラベンダーやカモミールなどのアロマテラピーも有効です。リラックス効果の高い香りを取り入れると、副交感神経が優位になりやすく、心が落ち着きやすくなります。

さらに、寝る前のパソコンやスマートフォンの使用は控えましょう。ブルーライトや情報の刺激は脳を覚醒させ、眠りを妨げる原因になるため、デジタル機器の使用は就寝1時間前までに終えるのが理想です。

呼吸法・瞑想・マインドフルネスを活用する

呼吸法や瞑想などで意識を「今ここ」に向けると考えすぎから心を離しやすくなります。

「腹式呼吸」は、お腹を膨らませながらゆっくり息を吸い、時間をかけて吐き出す方法です。自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にする働きがあります。

瞑想やマインドフルネスも頭の中の考えごとから距離を置き、心身の緊張を緩める効果が期待できます。これらの方法を寝る前に試すと、心身ともに落ち着いた状態で眠りにつきやすくなるでしょう。

考えや感情を紙に書き出す

頭の中が不安や悩みでいっぱいになって眠れない時は、書き出しの習慣が効果的です。

考えや感情、過去のトラウマなどを紙に自由に書き出す「ジャーナリング」と呼ばれる方法で、心に浮かんだことを自由に紙に書き出していきます。書く内容に制限はなく、「今感じていること」「心配していること」などを思いつくままに書き続けるのがポイントです。

実際、感情的な出来事やトラウマを書き出すとストレスが解消・軽減し、心身の健康状態が改善した、という研究報告もあります。頭の中のモヤモヤを可視化することで、心が落ち着きやすくなります。

「眠れなくても大丈夫」と考える

眠れない夜は、思い切ってベッドから離れましょう。「眠らなくちゃ」「今日も眠れなかったらどうしよう」と考えるほど不安が強まり、不眠が悪化しやすいことがわかっています。

眠れない夜は、思い切ってベッドから離れてリラックスできる行動を取りましょう。不眠の悪循環を断ち切る第一歩になります

生活リズムを調整する 

生活リズムの調整は、眠れない状態の改善に効果的だとされます。

具体的には、朝はカーテンを開けて太陽の光を浴びる、就寝・起床時間を固定する、昼寝をし過ぎない、といった工夫を取り入れてみましょう。体内時計がリセットされて安定し、夜に自然な眠気が訪れやすくなります。

病院に行くべき?受診の目安と診療科の選び方

セルフケアを続けても改善しない、症状が悪化している、日常生活や仕事に支障が出ている、といった場合は、心療内科や精神科の受診を検討しましょう。症状や原因に応じて適切な治療を受けることが回復の近道です。

また、生理前や更年期など女性特有の体調変化が関係していると感じたら、婦人科での相談も選択肢となります。

まずは、以下に当てはまらないかチェックしてみましょう。





  • 悲しい、憂うつな気分が一日中続く
  • 理由もないのに不安になる、気持ちが落ち着かない
  • 疲れやすい、やる気が出ない
  • 集中力がなくなる
  • 食欲がなくなる、または増える
  • イライラする、怒りっぽくなる
  • 自分に価値がないと思う

上記の項目は、うつ病や不安障害などのサインである場合があります。放置せず、早めに医療機関へ相談してみましょう。

考えすぎて眠れないのは、心や体からのサインかも

ボルゾイという種類の犬と、カーペットの上に仲良くカラダを近づけ寝転ぶ飼い主の女性

考えすぎて眠れないという状態は、誰にでも起こる可能性があります。大切なのは「考えすぎてしまう自分」を責めず、心や体からのサインとして受け止めることです。

ストレスやホルモンバランス、生活習慣など、考えすぎてしまう原因は人それぞれ異なります。まずは自分の状態や原因を見つめ直し、自分に合った対処法を探しましょう。

セルフケアでも改善しない場合は、一人で抱え込まず、専門家に相談することも大切です。自分自身をいたわる気持ちを忘れず、無理せず少しずつ心や体を整えていきましょう。

この記事を書いた人

サユコサムネイル

サユコ

臨床検査技師として働きながら、主に医療・メディカル分野でライティングを行う。一般の方向けから医療系専門職向けまで、多角的に正確な医療・健康情報を届けることをモットーとして活動中。

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