「性交渉」の内容は昨今多様化してきています。保健体育、家庭科、理科や生物の授業で、「身体の仕組み」や「受精の仕組み」などは断片的には習ってきたとしても、いざパートナーとの「性交渉」の知識となると、学校でも家庭でも習っていない方が多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「性交渉」の基礎知識を詳しく解説していきます。
知っておきたい「性交渉」の基礎知識
性交渉とはどういったものなのか正しく理解することは、パートナーとの関係を深め、トラブルを防ぐためにも重要です。まずは、知っておきたい「性交渉」の基礎知識について見ていきましょう。
そもそも性交渉とは?
性交渉とは性行為の一部であり、「お互いの身体に性的快感を伴う触れ合いをすること」です。一般的には、男性の性器が女性の性器の中に入る「腟性交」をイメージする人が多いかもしれません。しかし性交渉には様々な形があります。
様々な種類の性交渉
例えば、口と性器を使う性交渉は「口腔性交(オーラルセックス)」と呼ばれ、男性器を口で刺激する「フェラチオ」と、女性器を口で刺激する「クンニリングス」があります。また、肛門を使った性交渉は「肛門性交(アナルセックス)」と呼ばれます。
注意点
ただし、肛門は本来排泄のための器官であり、特有のリスクがあります。腟に比べて伸縮性が少ない肛門は、挿入時に出血しやすく、感染症のリスクが高まる可能性があります。HIV感染症や梅毒などの性感染症だけでなく、細菌感染や傷口の炎症も起こりやすいため、十分な衛生管理と適切な準備が必要です。
重要なのは、どのような形の性交渉であっても、必ずパートナーの同意のもとで行うことです。性交渉は身体的な行為であるだけでなく、相手への思いやりと責任を伴う行為であることを理解しましょう。
正しい性交渉の目的とは?
性交渉は、単にお互いが快感を得るためだけのものではありません。本来は、パートナー同士がお互いを深く理解し、愛情や絆を確かめ合うための大切なコミュニケーションの1つです。
恋人同士であれば、性交渉を通してより深く愛情を確かめ合うことに繋がります。また、夫婦であれば、性交渉を通してのコミュニケーションは大前提として、その先に女性が妊娠し新しい命を授かる可能性もあるでしょう。
性交渉から得られる喜びや幸福感は、パートナーとの心の繋がりが根底にあってこそ、より深くなるのです。
基本の流れを知る
性交渉は、相手への思いやりを持って、お互いが心地よいと感じるようにコミュニケーションを取りながら進めていくことが大切です。
コミュニケーション・性的同意
まず「性交渉をしても良いか」とお互いの意思を確認しましょう。
雰囲気作り・シャワー
そして、リラックスできる雰囲気作りや環境への配慮も大切です。汗や匂いが気になる場合もあるため、性交渉の前にシャワーを浴びて体を清潔にすることは、衛生上の観点からも重要です。
前戯(ぜんぎ)
性交渉の前には、お互いの身体を優しく触れ合いながらキスやハグ、マッサージなどの「前戯(ぜんぎ)」を行い、気持ちを高め合うことが一般的です。
挿入
性交渉中も相手の表情や反応に気を配り、お互いが痛みを感じたり不快に思ったりしないように注意しましょう。
後戯(こうぎ)
性交渉の後もすぐに離れるのではなく、抱き合ったり言葉を交わしたり、一緒に過ごす時間を大切にすることで、幸福感や満足感を分かち合うことが大切です。これらの行為は前戯に対して「後戯(こうぎ)」と呼ばれます。
オーガズムは男女で異なる
オーガズムとは、性的な興奮が最高潮に達した時に感じる「快感のピーク」のことです。男性と女性では、その感じ方や オーガズムに達するまでの時間に違いが見られます。
男性は「外的な刺激」女性は「精神的な安心・満足」
一般的に、男性は性交渉の際に、性器への外的な刺激で射精とともにオーガズムを感じることが多いのに対し、女性は精神的な安心感や満足感がオーガズムに影響する場合もあります。
また、男性に比べて、女性はオーガズムに達するまでに時間がかかる傾向があります。こうした身体的特徴や感じ方の違いを理解し、お互いに尊重することが大切です。
射精とオーガズムだけが性交渉ではない
性交渉というと、射精やオーガズムを目的とする行為をイメージする方は少なくないでしょう。しかし、性交渉は身体的な行為だけを指すものではありません。
例えば、優しく抱きしめ合ったり、手をつないで寄り添ったり、愛情を込めた言葉を交わしたりすることも、心の繋がりを深める大切なコミュニケーションであり、性交渉だといえるでしょう。
性交渉とは、単に肉体的な行為だけでなく、2人の関係性をより一層深める大切なものなのです。
気が乗らないときのパートナーを気遣った断り方
どんなに親しい関係であっても、常にお互いが「性交渉をしたい」という気持ちがあるとは限りません。
例えば、体調が優れない時や疲れている時には、「今日は疲れているから休みたいな」「今はそういう気分じゃないから週末にしたいな」など、自分の気持ちを正直に伝えることが大切です。
正直に伝えることは決して悪いことではありません。むしろ、お互いの気持ちを尊重するために必要だと言えるでしょう。
パートナーに対し、お互いに「ノー」と言える関係性を築くことが大切です。
性交渉の際に気を付けること
性交渉は、お互いの体と心を深く結びつける行為ですが、同時に責任やリスクが伴うこともしっかりと認識しておく必要があります。ここでは、性交渉の際に特に気を付けるべきことについて、詳しく解説します
妊娠のメカニズム
妊娠は、女性の体の中に新しい命が宿る神秘的なプロセスです。しかし、そのメカニズムを正しく理解していないと、思わぬ妊娠に繋がってしまい、自分やパートナーだけでなく、お腹に宿った新しい命にも大きな影響を与える可能性があります。
詳しい妊娠の仕組み
妊娠は、男性の精子が女性の体の中に入り、卵子と出会うことで成立します。具体的には、性交渉の際に腟内に射精された精子は、子宮から卵管の中へと進んでいきます。一方、女性の卵巣からは、毎月約1つずつの卵子が排出(排卵)されます。排卵した卵子は、卵管膨大部で精子と出会うと受精し、受精卵となって卵管と呼ばれる細い管をゆっくりと移動します。受精卵は子宮内膜と呼ばれる子宮の内側に着床し、細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。これが妊娠の始まりです。
生理が終わって間もなくでも妊娠の可能性あり
排卵は月に約1回ですが、精子は女性の体の中で数日間生き続けるため、排卵の数日前後に性交渉を行うと、妊娠する可能性は十分にあります。
実際に、「生理が終わって間もないから大丈夫」と避妊をしなかった場合でも妊娠したケースは珍しくありません。「妊娠はいつ起こってもおかしくない」としっかり認識しておくことが大切です。
避妊法
望まない妊娠を避けるためには、性交渉の際に必ず避妊をすることが大切です。性交渉は、新しい命を授かる可能性のある行為です。だからこそ、避妊は女性だけが責任を負うものではなく、パートナーとよく話し合い、2人で協力して行うべきです。
代表的な避妊法には、以下のような種類があります。
方法 | 詳細 |
低用量ピル | 女性ホルモンの働きを抑え、排卵を抑制することで妊娠を防ぎます。毎日決まった時間に服用する必要がありますが、正しく服用すれば非常に高い避妊効果が期待できます。 |
コンドーム | 男性の性器に装着し、精子が腟内に入るのを防ぐだけでなく、性感染症の予防にも有効です。また、手軽に入手できるメリットがあります。ただし、コンドームの装着方法が不適切であったり、性交渉中に破れたりすると避妊効果が下がるため、コンドームを正しく装着できるよう準備しておく必要があります。 |
女性用コンドーム | 女性の腟内に挿入して使用するもので、コンドームと同様、精子が腟内に入るのを防ぎます。 |
子宮内避妊器具(IUD) | 子宮内に挿入し、受精卵の着床を防ぎます。出産経験のない女性の場合は挿入が難しい場合もありますが、一度挿入すると長期間にわたって避妊効果が持続します。 |
皮下インプラント | 腕の内側に小さな棒状の器具を埋め込み、そこから黄体ホルモンを放出することで排卵を抑制します。IUDと同様に、長期間にわたって避妊効果が持続します。 |
上記の通り、避妊方法にも様々な種類があります。パートナーとしっかり話し合い、自分たちに合った避妊方法を実行しましょう。
性行為の基礎知識を身に付けて安心してパートナーとの仲を深めよう
この記事では、性交渉の基本的な知識や正しい避妊方法について解説しました。性に関する正しい知識を身につけることは、決して恥ずかしい事ではなく、自分自身と大切なパートナーを守り、信頼関係を深めるために非常に重要です。