性行為をしても相手の男性が「いかない」…これって私のせい?と不安や責任を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。男性の性欲のピークは一般的に20歳前後と言われています。また、男性がいかないことで満足感を得られず、不満を感じる場合もあるかもしれません。
この記事では、男性がいかない原因として考えられる病気、自分のパートナーが該当する場合にできることを解説します。
そもそも射精のメカニズムとは
射精には、心と体が密接に関わっています。まず、視覚や触覚、思考などで性欲が誘発され、興奮が起こります。性的興奮が高まると、脳からの神経シグナルが陰茎に伝わり、血管が拡張して血流が増加、陰茎が硬直します。興奮がさらに高まり、オーガズム(性的興奮の絶頂)に達すると、骨盤筋が収縮し、射精が起こるのです。
こうしてオーガズムに達すると、以下3つのプロセスを経て精液が体外に排出されます。
② 尿道を通じて体外に排出される
③ 精液が膀胱の中に逆流しないようにする
このいずれかの過程でトラブルが生じると、射精が困難になることがあるのです。
多くの場合、射精とオーガズムはほぼ同時に起こりますが、射精とオーガズムは別物で、射精があってもオーガズムに至らない場合や、その逆もあります。性交渉で男性の射精がないと、女性側は「いっていないのでは?」と不安や不満を感じることも少なくないでしょう。
男性が射精できない、いかない原因と改善策
射精やオーガズムには、性的興奮に加え、様々な神経や陰茎周りの筋肉、ホルモンなどが複雑に関わっています。以下に、男性が射精できない、いかない原因をいくつかご紹介します。
勃起障害(ED)
勃起障害(ED)とは、性交渉の際に十分に勃起しない、または維持できない状態を指します。性交渉中に陰茎の硬度が不足する「中折れ」も、勃起障害(ED)の症状のひとつです。
常に勃起できない「重症」と、ときどき勃起できない「中等症」を合わせると、日本国内の勃起障害(ED)の患者数は1000万人以上にのぼり、決して珍しい症状ではありません。
原因や治療法
勃起障害(ED)の原因は大きく2つに分けられます。1つは心理的な背景に由来する「機能性(心因性)」、もう1つは身体的なトラブルによる「器質性」です。いずれの場合でも、専門医や専門家によるカウンセリングや、勃起不全治療薬に一定の効果が認められています。
勃起不全治療薬にはバイアグラ、レビトラ、シアリスなどの種類があります。個人輸入やインターネット販売などに頼らず、専門医に処方してもらいましょう。
射精障害
射精障害とは、射精できない、あるいは、射精のタイミングが上手くいかない状態を指します。代表的な射精障害は以下の3つです。
- 腟内射精障害
- 早漏・遅漏
- 逆行性射精
腟内射精障害
腟内射精障害は、女性の腟内で射精ができない状態です。主な原因として、不適切なマスターベーションや心理的な問題が挙げられます。
不適切なマスターベーションの例として、陰茎を床に強く擦り付ける(床オナ)や、手で強く握りすぎてしまう(強グリップ)などがあります。これらは通常の性交では得られない強い刺激を伴い、射精を困難にする要因となります。
また、仰向けで足を伸ばすなど、特定の姿勢でないといかない(足ピン)なども腟内射精障害の要因のひとつです。腟内射精障害に効果的な薬などはありませんが、マスターベーションの方法を変える、マスターベーションのリハビリなどで改善の可能性があると言われています。
さらに、心理的な問題として、性行為は悪いものであるという幼少期からの教育や、子供を持つことへの不安感、性交渉に対する過去のトラウマや経験不足などがあります。これらの問題をクリアするには、専門医・専門家によるカウンセリングが有効なケースもあると言われています。
早漏・遅漏
早漏と遅漏は、一般的に正反対の状態に見えますが「射精のタイミングをコントロールできない」という点では共通しています。
早漏の原因は、性交渉に対する不安などの心の問題や、陰茎の皮膚が敏感で刺激に弱いなどが考えられます。治療には、コンドーム使用による刺激の緩和、射精を遅らせるトレーニング(スタートアンドストップ法、スクイーズテクニック)などがあります。
また、薬物療法として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン)や、三環系抗うつ薬(クロミプラミン)が有効な場合もあります。薬を使用したい場合は、必ず泌尿器科の病院やクリニックを受診し、専門医に相談しましょう。
遅漏の原因は、疲労や加齢などが考えられます。重度の遅漏は、腟内射精障害に分類されることもあります。
逆行性射精障害
逆行性射精障害は、本人には射精感があるにも関わらず、精液が出ない、膀胱内に逆流してしまう状態です。射精は起こりませんが、オーガズムは得られており、射精とオーガズムが一致しない例のひとつです。
逆行性射精障害の原因には、腰の手術や脊髄損傷、糖尿病などが考えられています。妊娠を望まないのであれば問題ありませんが、子どもを望む男性の場合は治療が必要です。薬で治療する場合はビタミンB12やアモキサピン(抗うつ薬)が使用され、効果がない場合には人工授精や体外受精のステップに進むこともあります。
男性更年期障害(LOH症候群)
更年期障害は女性特有と考えられがちですが、じつは男性にも更年期があります。40代以降、加齢に伴って男性ホルモンの分泌が低下すると、精液がでない、最後までいけないなど、性機能に関連する症状も見られやすくなります。
代表的な勃起障害(ED)は、60代男性の60%以上に見られると言われており、決して珍しいものではありません。加齢によって射精が難しくなった場合、男性更年期障害の可能性を考えてみましょう。
症状がそれほど重くない場合、ストレスをためないことや、睡眠・運動・食事などの生活習慣の改善で症状が改善する場合があります。改善がみられない場合には、漢方薬やED治療薬、抗うつ薬などによる治療が検討されます。男性ホルモン(テストステロン)がほとんど分泌されておらず、症状が重い場合は、男性ホルモンを補う治療も選択肢となります。
性行為で「いかない」男性にパートナーができることは?
プレッシャーを与えない
男性が「いかない」背景には、心の問題が大きく関連していることも少なくありません。性行為がうまくできるか、最後までいけるかといった不安やプレッシャーを感じると、ますますいかない原因になってしまう可能性があります。特に妊活中は、「排卵日だから必ずセックスしたい」といったプレッシャーが勃起障害の原因となることもあります。
女性側もあまり考えすぎずに「挿入や射精がなくてもOK!」という気持ちで、純粋にスキンシップそのものを楽しむ性交渉を楽しんでみましょう。こうした思いやりや態度がプレッシャーを和らげ、リラックスした関係を築くきっかけになるでしょう。
一緒に生活習慣を改善してみる
栄養バランスのとれた食事や、適度な運動、良質な睡眠など、健康的な生活習慣はとくに男性更年期障害に効果的とされています。一緒に生活習慣を改善することで、パートナーとの絆も深まるかもしれません。
また、早漏や腟内射精障害の場合、女性がマスターベーションを手伝ってみる方法もあります。強すぎる刺激を避けたり、射精のタイミングをコントロールしたりと試行錯誤することも、ふたりの楽しいスキンシップの時間になるでしょう。
病院の受診をすすめてみる
男性が「いかない」原因になんらかの病気が考えられる場合、病院やクリニックの受診をすすめてみましょう。どの診療科に行けば良いかわからない!という方は、まずは泌尿器科を頼ってみましょう。症状によっては、内科や精神科、内分泌科などの受診が必要になることもありますが、泌尿器科の専門医が必要に応じて適切に紹介してくれます。
個人輸入やインターネット販売でも薬を入手することはできますが、個人の判断で飲むことは危険です。必ず専門医の診断と処方を受けましょう。
男性がいかない原因や対処法を知り、必要に応じて治療も検討しよう
性交渉で男性が「いかない」背景には、心の問題が深く関係していることがあります。女性側が過度なプレッシャーを与えることがないよう、挿入や射精にこだわらず、スキンシップを楽しむ気持ちで接してみましょう。
その一方で、勃起障害(ED)や射精障害、男性更年期障害など様々な性機能障害が隠れている場合もあります。女性側の努力だけでは対処できないことも多いため、必要に応じて病院やクリニックを頼ることも検討してみましょう。