「セックスの時に痛い」「最近、濡れにくくなった気がする」そんな悩みを抱えている人は少なくありません。セックスの時に濡れにくさを感じるのは、決して珍しいことではないのです。20代から更年期の女性まで、多くの方が経験する身体の変化です。
濡れにくくなる原因は一つではありません。セックスに対する不安や、ピルの内服による影響、ホルモンバランスの変化、ストレスや疲労など、様々な要因が関係しています。
この記事では、状況別に濡れにくくなる原因を詳しく解説します。今日からできるセルフケアから婦人科受診の目安まで、具体的な改善方法もお伝えします。原因を正しく理解し、自分に合った対策を見つけるための参考にしてください。
セックスの時に「濡れる」仕組み
そもそも、なぜ興奮すると腟は濡れるのでしょうか?
セックスの時に「濡れる」という現象は、脳や神経、血流、そしてホルモンが連携することで成立します。
視覚や聴覚、触覚などの刺激によって「心地よい」という感情が生まれると、脳の性的な興奮をつかさどる部位が活発に働き始めます。興奮によって生じた信号が自律神経を介して骨盤内に伝わると、 性器周辺の血管が大きく広がり、血流が急増するのです。これにより、腟の壁(腟粘膜)が充血した状態になり、血管から水分がじわじわとしみ出して、いわゆる「濡れている」状態になります。
この一連の流れに加えて、大事な役割をもつのが女性ホルモンの代表格であるエストロゲン(卵胞ホルモン)です。エストロゲンには、腟の粘膜を厚く保ち、弾力と潤いを与える作用があります。エストロゲンが十分に分泌されていることで、腟は少量の刺激でもスムーズに反応し、濡れやすくなるのです。
濡れにくくなったと感じる主な原因
濡れにくさを感じる原因は、ライフステージや生活環境など、人によってさまざまです。自分の状況を振り返ることで、潤いが不足している本当の理由が見えてくるかもしれません。
心当たりがある項目がないか、これから紹介する内容をチェックしてみましょう。
前戯不足
濡れるためには、まず脳の受容体が性的な興奮をしっかり受け取ることが必要です。スキンシップなどの前戯が不十分だと、脳の性的な興奮をつかさどる部位が活性化されません。その結果、脳からの信号が腟まで伝わらず、濡れにくくなります。
ピルの内服
ピルを飲むとホルモン値が一定の低い水準で保たれるため、自力で分泌される潤い成分の量が以前より減ってしまうと考えられます。薬の影響で体が安定する一方で、分泌液の出方に変化が起こるケースがあるのです。
出産後
出産後はエストロゲンの分泌量が激減するため、一時的に腟の潤いが不足しやすくなる場合があります。
エストロゲンは、妊娠中に子宮を大きくしたり、子宮への血流を増やしたりするために大量に分泌されています。また、妊娠後期には子宮の入口を柔らかくすることで分娩に備えるなど多彩な役割を持ち、妊娠前とは比べ物にならないほど分泌量が増えます。
出産を終えると一気に分泌量が減るため、体質が変わったように感じるかもしれません。
自律神経の乱れ
体のリズムを整える自律神経のバランスが崩れると、潤いを与えるホルモンの分泌が抑えられてしまう場合があります。
自律神経とは生命維持に必要な機能を調整する神経で、睡眠不足や疲れによって影響を受けます。自律神経のうち、主に日中の活動時や緊張するときに働く「交感神経」が過剰に刺激されると、生殖に関わるホルモンであるエストロゲンの分泌が低下するため、濡れなくなることがあります。
ストレス
心身への強いストレスで交感神経がたかぶり続けていると、生殖器への血流が後回しにされてしまい、濡れにくくなる場合があります。仕事や育児で疲れ果てているとき、体は生殖(セックス)よりも「生きること」を優先します。「自分の生命が脅かされている」と脳や体が感じると、自分の体を犠牲にして子孫を残す行為である生殖(セックス)は後回しになってしまうのです。
また、「濡れなきゃいけない」「痛かったらどうしよう」という不安は体や心を緊張させて血管を収縮させるため、ますます濡れにくくなるという悪循環に陥ることも考えられます。
加齢
年齢を重ねるにつれて卵巣の機能が低下し、潤いを保つホルモン(エストロゲン)の分泌が減っていくことも原因のひとつと考えられます。
女性ホルモンの分泌は20代ごろにピークを迎えますが、その後は少しずつ減少していくのが一般的です。
加齢によって腟が乾燥したような違和感を強く持つようになる方もいます。
うつ、抗うつ剤の内服
うつ病は性欲低下が起きるため、性的興奮が起きにくくなり濡れなくなります。また、一部の抗うつ剤でも副作用により同様の症状が起きることがあります。
濡れにくさを改善するための対処法
原因がわかったら、次は具体的な対策です。まずは日常の中で取り入れられるセルフケアを意識してみましょう。
パートナーに悩みを聞いてもらう
セックスは一人でするものではありません。セックスに不安がある場合、今の状況をパートナーに正直に伝えることが解決策になる場合があります。
たとえば、痛みを我慢してセックスを続けると、脳が「セックス=苦痛」と学習してしまい、さらに濡れにくくなります。
「もっと時間をかけて触ってほしい」「ここは触られたくない」といった具体的な要望を伝えることで、安心感が生まれ、副交感神経が優位になります。パートナーに悩みを共有し、安心してセックスにのぞみましょう。
潤滑ゼリーを使う
「濡れなくて痛いのが怖い」と思うとセックスが苦痛になる人もいます。自力で濡れなければというプレッシャーから回避するのも一つの方法です。
物理的な対症療法として潤滑ゼリーの使用があります。産婦人科学会では、腟の乾燥による痛みがつらい方に向けて、日本家族計画協会が開発した「リューブゼリー」などの使用を勧めています。
水溶性のゼリーなので、ベタつきにくく使用後も水で簡単に洗い流せるため、デリケートな場所にも安心して取り入れられます。ネット通販やドラッグストアで購入可能です。挿入直前だけでなく、前戯の段階から使うことで、摩擦による痛みを防ぎ、スムーズな導入を助けます。
ストレスをコントロールする
潤いを促すためには、心身をリラックスした状態に整えることが大切です。
ストレスによって自律神経である「交感神経」がたかぶり続けると、体が戦闘モードになり、エストロゲンの分泌低下が起きます。しっかり睡眠をとる、3食バランスの良い食事をとる、趣味を楽しむなど、自分に合った方法でストレスを発散すると、リラックスして濡れやすくなるでしょう。
婦人科を受診する目安と検討したい治療法
セルフケアを続けても症状が改善しない場合は、婦人科に受診しましょう。
「こんなことで?」と思うかもしれませんが、このような悩みで受診する人も少なくありません。自分だけではないので気軽に受診しましょう。病気がない科の検査や、それに伴う治療は保険適応で受けられます。
受診の目安
セルフケアを1ヶ月ほど続けても潤い不足や痛みが変わらない場合は、一度婦人科を受診してみましょう。
特に「濡れない」という悩みだけでなく、不正出血があったり、おりものの色やにおいがいつもと違ったりする場合は、早めの確認が必要です。
専門家に相談することで、濡れない、乾燥する、痛みがあるといった症状が改善することがあります。
ピル内服中であれば変更を相談する
ピルには様々な種類があり、薬によって配合されている成分が異なります。ピルの内服を始めてから濡れなくなったと感じる場合、ピルとの相性が原因かもしれません。ピルの種類を変えると症状が良くなることがあるため、まずは自分に合っているか相談してみましょう。
更年期症状があればホルモン補充療法を検討する
更年期に伴う腟の乾燥や痛みがある場合は、不足しがちなホルモンを補う治療を受けるのも対策の1つです。
更年期は閉経前後5年間のトータル10年のことをいいます。40代になると、女性ホルモンの分泌が不安定になり、更年期症状が出てくることも少なくありません。
更年期には、腟のひりひりした痛み、乾燥感、性交時の出血をはじめ、ホットフラッシュや関節の痛み、不眠、頭痛、イライラなど様々な症状が出ます。こうした症状がある場合は、腟にエストロゲンの座薬を投与したり、全身的なホルモン補充療法で治療をすることで、性交痛や腟周囲の違和感も軽減することがあります。
濡れにくくなる原因は様々。痛みや心配事があれば、婦人科に相談を
セックスの時に濡れない原因は、心の状態や体の変化など、多岐にわたります。まずはパートナーに自分の状況を共有し、不安感を取り除きましょう。
また、症状は時間の経過やセルフケアで改善することもありますが、痛みや乾燥する感じが続く、セックスが苦痛になってしまうなど悩みがあれば、「こんなことで?」と思わず婦人科を受診しましょう。対処方法について一緒に考えてくれます。
