「コンドームをしていたのに妊娠してしまった」という話を、ネット上で見聞きしたことがある方もいるかもしれません。実際、コンドームが外れたり破れたりして、冷や汗をかいた経験を持つ人もいるでしょう。
今回は、コンドームと妊娠の関係、その実際の避妊効果、正しい使い方、そしてコンドーム以外の避妊法について解説します。
コンドームをしていても妊娠する可能性はある?

避妊法と聞くと、コンドームを最初に思い浮かべる方は少なくありません。実際、コンドームは入手が簡単で、避妊だけでなく性感染症の予防にも役立つため、多くの人に選ばれている方法です。
ただし、意外なことに、その避妊効果は必ずしも万全とは言えず、一定の妊娠リスクがあることに注意が必要です。
たとえば、性行為の途中から装着したり、サイズが合っていなかったりすると、途中で外れてしまったり破れてしまうことがあります。また、表裏の向きを間違えてつけ直したり、空気を抜かずに装着したりすると、破裂や漏れの原因になります。
コンドームをしていても妊娠する確率とは?
避妊法の効果を示す指標として「1年間にその方法を使用した女性100人のうち、何人が妊娠するか」という結果を表したものがあります。この数値が低いほど、避妊効果が高いと言えます。

このように見ると、コンドームは確かに手軽で広く使われていますが、低用量ピルや子宮内避妊器具などと比べると、避妊の確実性はやや劣ることがわかります。
だからこそ、正しい使用法を知り、必要に応じて他の避妊法と組み合わせることが重要です。
中絶に至ったケースから見る避妊の状況
避妊をしていたにもかかわらず妊娠し、人工妊娠中絶に至ったケースでは、どのような避妊法が使われていたのでしょうか。ある調査では、以下のような結果が報告されています。
- 1. コンドームを使用していた:54.7%
- 2. 腟外射精:41.2%
- 3. その他:4.1%
「コンドームを使っていたのに妊娠してしまった」という事例がこれほど多いことに、驚く方も少なくないでしょう。
さらに、コンドームを使用していた人たちの具体的な使い方についても分析されています。
- 1. コンドームを使用したりしなかったりしていた:19.5%
- 2. 性行為の途中から使用した:17.6%
- 3. 性行為の最初から最後まで装着していた:11.9%
- 4. 破裂、脱落などの不測の事態が起きた:5.7%
このように、コンドームを使っていても適切な使い方ができていない例が非常に多いことがわかります。
コンドームの正しい使い方
コンドームの避妊効果を十分に発揮させるためには、正しい使用法を守ることが重要です。
以下に、使用前・使用中・使用後のポイントを詳しくご紹介します。
使用前の確認ポイント
サイズ、材質が合っているか確認する
コンドームには、サイズがあります。サイズが合っていないと、途中で破れたり外れやすくなったりします。ゴム(ラテックス)にアレルギーのある人は、ラテックスフリーの材質のものを選びましょう。
明らかな傷や穴がないか目視する
開封した段階で、すでに傷や穴があると、使用中の破損につながります。目で見て明らかな傷などがないか、確認しましょう。
装着時の注意点
コンドームに傷をつけないように取り出す
コンドームを袋の端に寄せてから開封します。また、中途半端に開封した状態で取り出すと傷がつく可能性があるため、完全に袋を破ってから取り出します。
表と裏を確認する
コンドームには表と裏があります。裏側からつけようとすると、途中で引っかかってうまく装着できません。失敗したら、新しいものを使用しましょう。
空気を抜く
先端の精液だまりの空気が残ったまま装着すると、射精した際に破裂することがあります。空気をしっかり抜きながら装着しましょう。
根元まで装着する
途中までしか装着していないと、性行為の途中で外れてしまうことがあります。根元まできちんと装着することが重要です。
勃起後に挿入前から装着する
勃起前に装着すると、外れる原因になります。また、射精直前でも少量の精子が射出されていると言われているため、必ず挿入前から装着しましょう。

使用後の処理と保管方法
使用後は速やかに抜く
時間が経ち、ペニスが縮むとコンドームから精液が漏れ出してしまいます。性行為が終わったら、勃起が収まる前にコンドームを押さえながら、ゆっくり抜きましょう。
保管は適切に行う
コンドームは圧力や摩擦に弱いため、財布やバッグに直接入れず、専用のハードケースを使用するのが望ましいです。また、直射日光や高温になる場所は避け、尖ったものや爪による損傷にも気をつけるべきです。
性行為の種類や状況に応じた注意点
コンドームは正しく使用することが基本ですが、性行為の内容や状況によっても注意すべきポイントがあります。
たとえば、オーラルセックスで使用した場合は、口内の雑菌が腟内に移行することで、感染リスクが高まる可能性があります。挿入前に新しいものに取り替えましょう。
また、潤滑剤を使う際も注意が必要です。油分の多いものはコンドームの素材を傷めるおそれがあるため、水溶性のローションを選びましょう。
コンドーム以外の避妊法
コンドーム以外にも様々な避妊法があります。どのようなものがあるか紹介します。
低用量ピル
毎日決まった時間に1錠を内服することで排卵を抑える方法で、女性が選べる避妊法の中では比較的手軽で、かつ確実性の高い手段とされています。処方には医師の問診が必要で、体質に合うかを確認した上で処方されます。
子宮内避妊器具
子宮内に薬剤や避妊効果のある金属を付加した器具を挿入します。挿入時に痛みを伴うことがデメリットですが、最長5年間効果が持続し、定期的な検診を受ければ毎日の管理が不要という点がメリットです。
リズム法
生理周期から排卵日を推定し、その時期を避ける方法です。28日周期では生理開始から14日前後に排卵が起こると考えられますが、排卵日は簡単にずれることがあり、生理不順の人は特に推定が難しいため、確実な避妊法とは言えません。
不妊手術
不妊手術は、男性では泌尿器科、女性では婦人科で行われ、基本的に一度手術を受けると再び妊娠を望むことはできない不可逆的な方法です。体への負担も伴うため、十分な検討が必要です。
避妊に失敗してしまった…その時どうする?

では、もし避妊に失敗してしまった場合、どう対処すればよいのでしょうか。
アフターピルを内服する
アフターピルは、性交後72時間以内に服用すれば、約90%の確率で妊娠を防ぐことができます。服用は早いほど効果が高いとされるため、できるだけ早く婦人科を受診することが勧められます。
近年ではオンライン診療でアフターピルを処方するクリニックも増えており、厚生労働省の指定する研修を受けた医師による診療が行われています。
オンライン処方は24時間対応のところもあり、夜間や近所に婦人科がない場合でも利用しやすいという利点がありますが、配送にかかる時間を考慮し、婦人科受診とどちらが早いか検討する必要があります。
アフターピルは保険適用外の自費診療で、費用は1万〜1万5千円程度が相場です。ただし、服用しても100%の避妊効果は保証されない点には注意が必要です。
生理予定日を1週間ほど過ぎても生理が来ない場合、妊娠検査をする
通常の生理より1週間以上遅れる、いつもと異なる月経量や腹痛がある場合は、妊娠の可能性について確認するために婦人科を受診しましょう。「出血はあったけれど、いつもより量が少なかった」という時には、生理ではなく着床出血で妊娠していた、ということもあります。
ドラッグストアでは早期妊娠検査薬も購入可能ですが、判定の確実性を考えると、生理予定日から1週間後の検査が勧められます。生理不順の方は性交から約3週間後を目安に検査が可能です。
避妊の効果を高めるためのポイント

コンドーム単体での避妊の効果は高いとは言えません。できるだけ避妊の効果を高めるためにはどうしたらよいでしょうか。
低用量ピルとの併用を検討する
避妊の効果を高めるには、低用量ピルとコンドームの併用が特に有効です。コンドームは単体では避妊効果はやや劣るものの、性感染症予防の点では非常に重要です。
いずれの方法も100%の避妊は保証されないため、複数の方法を組み合わせることで、妊娠のリスクを減らしましょう。
避妊は「2人で考えるもの」という意識を持つ
避妊は決して女性一人の責任ではなく、パートナーと共に考えるべき問題です。互いに避妊の重要性を理解し、適切な方法を話し合って選ぶことが大切です。
また、中絶件数は、意外にも3-40代での数が少なくありません。2020年の統計では、中絶件数の1割以上を占め、20歳未満よりも多いのです。
生理がある間は妊娠の可能性があると考え、年齢に関係なく、確実な避妊を意識しましょう。
コンドームをしていても妊娠の可能性はある!他の避妊法を組み合わせて、確実な避妊を考えよう
コンドームを使用していても、妊娠の可能性はゼロではありません。他の避妊法と組み合わせることで、より高い避妊効果が期待できます。
さらに、性感染症予防の観点からも、コンドームの使用は最も優れた方法です。望まない妊娠を防ぐために、正しい使い方を知り、自分たちに合った避妊方法を選んでいきましょう。