どうして、もっと大切にしてくれないんだろう。
どうして、安心させてくれないんだろう。
彼に対してそんな気持ちが湧くとき、
私たちはつい、答えを相手の中に探してしまいます。
でも、その言葉や態度を
いちばん欲しがっているのは、本当は誰でしょうか。
彼に求めているものは、
もしかしたらずっと、自分自身が欲しかったものなのかもしれません。
彼に求めてしまうものがあるとき
彼に対して、つい求めてしまうものがあります。
もっと大切にしてほしい。
もっと言葉で伝えてほしい。
もっと安心させてほしい。
頭では、求めすぎかもしれないと思っている。
重いと思われたくないし、
恋愛はこうあるべき、という正解に自分を合わせようともしている。
それでも、心のどこかが満たされない。
我慢しているはずなのに、
小さな出来事で不安が膨らんでしまう。
そんなとき、
こんなふうに自分を責めてしまう人も多いかもしれません。
私がわがままなんだろうか。
期待しすぎなんだろうか。
もっと大人にならなきゃいけないんだろうか。
でも、誰かに何かを求めてしまうこと自体が、
悪いわけではありません。
人は、安心したいし、
大切にされていると感じたいし、
愛されている実感がほしい生きものです。
それを欲しいと思うことは、
弱さでも、依存でもありません。
ただ、苦しさが生まれるのは、
その欲しさを、ひとりの相手にすべて預けてしまったとき。
彼がそれをくれないと、
自分の価値まで揺らいでしまう。
彼の態度ひとつで、
安心したり、不安になったりを繰り返してしまう。
彼に求めているようでいて、
本当は、自分の中の足りなさが疼いている。
そんな状態のこともあります。
欲しさそのものを否定する必要はありません。
大切なのは、
私は今、何をそんなに欲しがっているんだろう
と、自分に問いを向けてみること。
そこから、この恋の見え方が、
少しずつ変わっていきます。
それは、誰かからもらわないといけないもの?
彼に求めているものを思い浮かべてみると、
それは案外、特別なものではないことに気づきます。
安心したい。
大切にされていると感じたい。
私はここにいていい、と確かめたい。
どれも、とても自然な願いです。
生きていくうえで、誰もが欲しくなるもの。
でも、それを彼がくれないとき、
私たちは強く不安になります。
まるで、それがなければ自分は成り立たないかのように。
ここで、ひとつ立ち止まってみたい問いがあります。
その安心や確かさは、
本当に、誰かからもらわないといけないものなのでしょうか。
たとえば、彼からの言葉がないと落ち着かないとき。
その言葉がなければ、自分を信じられないとき。
そこには、彼への期待以上に、
自分で自分を支えられていない感覚が隠れていることがあります。
誰かに大切にしてもらうことは、うれしい。
でも、それがないと不安でいられない状態は、
心の重心が、自分の外に出てしまっている状態でもあります。
そうなると、恋は喜びよりも、
確認や我慢の時間が増えていきます。
愛されているかどうかを、
彼の態度や言葉で測り続けてしまう。
欲しいものが悪いのではありません。
ただ、その欲しさが、
どこから来ているのかを知らないままだと、
恋は少しずつ苦しくなっていきます。
誰かからもらえたら安心できる、ではなく、
私は今、どんな安心を必要としているんだろう。
そんな問いを自分に向けられたとき、
彼に向いていた視線が、
少しずつ、自分のほうへ戻ってきます。
彼を通して見えてくる、自分の渇き
彼に求めているものを、もう少し丁寧に見ていくと、
そこには共通した感覚があることに気づきます。
それは、足りなさです。
もっと認めてほしい。
もっと大切に扱ってほしい。
もっと安心していいと言ってほしい。
その欲しさは、彼との関係の中で
突然生まれたものではないかもしれません。
これまでの人生の中で、
頑張っても報われなかった経験。
ちゃんとしていないと愛されないと感じた時間。
不安を抱えたまま、大人になってきた感覚。
そうした積み重ねが、
彼との関係の中で、ふっと顔を出すことがあります。
彼が特別冷たいわけでも、
愛情がまったくないわけでもないのに、
なぜか苦しくなる。
それは、彼が何かをしていないからではなく、
自分の中に、ずっと満たされないままの部分があるから。
その部分は、
誰かに埋めてもらうためにあるのではありません。
本当は、自分自身に気づいてもらうのを
待っている場所です。
渇きがあることは、弱さではありません。
それは、今まで一生懸命生きてきた証でもあります。
彼を通して感じている苦しさは、
自分の足りなさを責めるためのものではなく、
自分に戻るための入り口。
彼との関係が、
そのことを教えてくれているのだとしたら、
この恋は、あなたを苦しめるだけのものではないのかもしれません。
渇きが潤いに変わるとき
渇いていることに気づいたからといって、
すぐに満たそうとしなくていい。
大切なのは、
渇きを消すことではなく、
渇いている自分との関係を変えることです。
寂しいと感じる。
不安になる。
誰かに寄りかかりたくなる。
そんな気持ちが出てきたとき、
これまでは、彼のほうを見てきたかもしれません。
どうしてわかってくれないんだろう。
どうしてそばにいてくれないんだろう、と。
でも、渇きが潤いに変わりはじめるのは、
その視線が、少しだけ自分に戻ってきたときです。
今、私は何を感じているんだろう。
何があったら、少し楽になれるんだろう。
そうやって、自分の状態に気づいてあげること。
それだけで、心の乾いた部分は、
ほんの少しやわらぎます。
渇きは、なくすものではありません。
これまでひとりで頑張ってきた証でもあり、
自分の大切な感情が置き去りにされてきた場所でもあります。
だから、潤すというのは、
何かを一気に手に入れることではなく、
自分を丁寧に扱い直すこと。
深く息をする。
身体をあたためる。
今日はここまでで十分だと、自分に言ってあげる。
そんな小さな積み重ねが、
こころとからだに、静かに水を運んできます。
少し潤いが戻ってくると、
彼への気持ちも変わってきます。
欲しい、足りない、苦しい、ではなく、
あったらうれしい、分かち合えたらうれしい、という感覚。
恋が、生き延びるための場所から、
つながりを楽しむ場所へと、戻っていきます。
渇きがあったからこそ、
潤いを知ることができる。
彼との関係は、
そのことを思い出させてくれただけなのかもしれません。
自分が潤いはじめると、求め方が変わる
自分の渇きに気づき、
少しずつ自分を潤していくと、
彼への気持ちが不思議と変わっていきます。
欲しいものが、急になくなるわけではありません。
愛情も、言葉も、安心も、
相変わらず大切です。
ただ、その欲しさの形が変わります。
以前は、
それがないと不安でいられなかった。
もらえないと、自分の価値まで揺らいでしまった。
でも、自分を丁寧に扱い、
感情やからだの声を無視しなくなると、
欲しさに余白が生まれてきます。
ないと苦しい、から
あったらうれしい、へ。
この違いは、とても小さく見えるかもしれません。
けれど、恋の中では大きな変化です。
彼の反応を確かめるために言葉を探すのではなく、
自分の気持ちを伝えるために言葉を選べるようになる。
不安を埋めるために一緒にいるのではなく、
一緒にいたいからそばにいる、という感覚に近づいていきます。
自分が潤いはじめると、
恋は「支えてもらう場所」から
「分かち合う場所」へと、少しずつ位置を変えていきます。
それは、彼への気持ちが薄れたからではありません。
自分の足で立てる場所が、
自分の中に戻ってきたからです。
求めなくなるのではなく、
求め方が変わる。
その変化は、
自分を置き去りにしなくなった証でもあります。
それでも欲しいものがあるなら
自分を潤すことを覚えても、
それでも欲しいものが残ることがあります。
もっと一緒にいたい。
もっと言葉がほしい。
もっと確かな関係でいたい。
そんな気持ちが湧いてきたとき、
また戻ってしまったのでは、と
不安になる人もいるかもしれません。
でも、それは後退ではありません。
欲しさがあること自体が、
間違いでも、未熟さでもありません。
大切なのは、
その欲しさを、どこから感じているか。
不安からなのか。
欠けている感覚からなのか。
それとも、満ちたところからの自然な願いなのか。
自分を置き去りにしないまま感じる欲しさは、
相手を縛るものにはなりません。
むしろ、自分の輪郭を、
やさしくはっきりさせてくれます。
それでも欲しいと思うなら、
その気持ちを伝えてもいい。
距離を取ることを選んでもいい。
関係を見直すことも、間違いではありません。
どの選択も、
自分の感覚を尊重した結果なら、
ちゃんと意味があります。
欲しさを持ったまま、
自分で選ぶ。
それができるようになったとき、
恋は、あなたの人生の一部として、
無理のない場所に落ち着いていきます。
まとめ|彼に求めていたものは、私が欲しかったもの
彼に何かを求めてしまうとき、
それは、愛が足りないからでも、
自立できていないからでもありません。
ただ、心のどこかが渇いていただけ。
そしてその渇きは、
誰かに埋めてもらうためのものではなく、
自分に気づいてもらうためのものだったのかもしれません。
渇きに気づき、
自分を潤すことを覚えると、
恋の中での立ち位置が変わっていきます。
求めなくなるのではなく、
求め方が変わる。
しがみつくのではなく、選べるようになる。
それでも欲しいものがあるなら、
その気持ちを大切にしていい。
自分を置き去りにしないまま、
伝えることも、離れることも、選んでいい。
恋は、あなたの価値を証明する場所ではありません。
あなたの人生を分かち合う場所です。
彼を通して気づいたことは、
あなたがあなた自身と、
もう一度つながるためのヒントだった。
その感覚を、
どうか、忘れずにいてください。
