生理痛の痛みは千差万別。なかには激痛や冷や汗をともない、意識が飛ぶほどの痛みで困っている、病院に行ったほうがいいか悩んでいる……という方もいらっしゃるかもしれません。学校生活や仕事に支障が出るほどの生理痛には、なにかの病気が隠れている可能性もあります。この記事では、重い生理痛の痛みを軽減するための具体的なセルフケア・対処法や受診の目安について紹介します。
意識が飛ぶほどの生理痛(月経痛)の原因は?

調査によって数字にばらつきはみられるものの、生理のある女性の約9割がなんらかの生理痛(月経痛)を経験していると言われています。
生理痛のおもな原因は、炎症や痛みにかかわる体内物質の一種、プロスタグランジンの過剰分泌だと言われています。プロスタグランジンは、子宮を収縮させ、月経血を体外に排出する役割を果たしている一方で、過剰に分泌されると、生理痛に加え、以下のような症状を引き起こすことがあります。
- 吐き気
- 頭痛
- 下痢などの消化器症状
辛くて起き上がることができない、学校や仕事に行くことができない、意識が飛ぶような強い痛みがあるなど、生理痛(月経痛)によって日常生活に支障が出るようなケースは「月経困難症」の可能性も否定できません。
月経困難症は、産婦人科を受診することで治療をしたり、症状を緩和したりできます。生活に支障がある場合には、一日も早い受診を検討されることをおすすめします。
月経困難症とは?
月経困難症は、大きく2種類に分けられます。特定の病気とは関連のない「機能性月経困難症」と、子宮内膜症などの婦人科系の病気などによって痛みが起こる「器質性月経困難症」です。
機能性月経困難症
思春期の中高生に起こる月経困難症の多くは、「機能性月経困難症」だと考えられます。月経の初日から 2 日目の出血が多い時に、けいれんするような強い痛みが周期的に起こるのが特徴です。この痛みは初潮を迎えた直後にはあまりみられず、排卵周期が確立される初潮後6か月~3年後からはじまると言われています。
痛みの原因
痛みの原因は、痛みや炎症にかかわる体内物質の一種であるプロスタグランジンの過剰分泌だといわれています。プロスタグランジンは、子宮を収縮させて生理の血液を体の外に排出する役割を担う物質ですが、過剰に分泌されると、生理痛だけでなく吐き気や頭痛、下痢など全身の不快な症状を引き起こすことがあります。
また、10代の中高生など思春期の女性は、子宮の入り口部分である「子宮頸管(けいかん)」がまだ小さく狭いことも痛みに関係しているといわれています。
症状が改善するには
こうした背景から、機能性月経困難症の生理痛は、年齢とともに、また妊娠や出産などのライフイベントを経ることで軽快することも多いと報告されています。そのため、「生理痛なんていつかは治るのだから、若いうちは我慢すればよい」と考えられている時代もありました。
しかし、女性のライフスタイルが変化し、妊娠・出産の年齢も高くなっているいまでは、思春期のうちから早めに対処するのが望ましいという考え方に変化しています。中高生、10代の若い女性のなかには、受診に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、生活に支障があるような月経痛は我慢せず、婦人科の医師に相談してみましょう。
器質性月経困難症

「器質性月経困難症」は、特定の病気によって引き起こされる生理痛をさします。代表的な病気には、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などがあります。非常にまれではあるものの、月経血が体外に排出されにくい子宮の奇形(非交通性副角を伴う単角子宮・OHVIRA 症候群)などが原因となる場合もあります。
子宮内膜症とは
子宮内膜またはそれに似た組織が、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発育する病気です。20〜30代で発症することが多く、ピークは30〜34歳ですが、最近は10代でも増加傾向と報告されています。代表的な症状は生理痛と不妊で、とくに月経痛は子宮内膜症患者の約9割にみられます。月経時以外にも、腰痛や下腹痛、排便痛、性交痛などがみられることがあります。
治療法は手術または薬物療法(鎮痛剤・ホルモン剤)です。加齢によって女性ホルモンの分泌が減少すると症状も軽減することが多いといわれており、患者さんの年齢や出産希望の有無に合わせて治療法を選択します。
子宮筋腫とは
子宮にできる良性の腫瘍で、小さなものも含めると、30歳以上の女性の2〜3割にみられます。代表的な症状は、過多月経と月経痛です。不正出血、腰痛、トイレが近いなどの症状のほか、不妊の原因となることもあります。治療が必要かどうかは、筋腫のできた場所や症状によって判断されます。
子宮腺筋症とは
子宮内膜に似た組織が、子宮の筋肉の組織の中にできる病気です。出産経験のある女性や、40代に多く見られます。症状は、月経痛や月経量過多などです。エストロゲンという女性ホルモンが原因で、月経がある限り病気も進行する可能性があるため、適切な治療が必要です。
生理痛で意識を失う前に!セルフケアで痛みを和らげる方法
生理痛はあるものの、日常生活に大きな支障がない場合は、セルフケアで痛みを緩和できる可能性があります。
生理痛に対するセルフケアでは、血流をよくすることを意識するとよいといわれています。代表的な方法は、軽いストレッチや、お腹(子宮)の周りを温めることです。また、ストレスを和らげてリラックスすることが痛みの軽減につながるという考え方から、アロマやマッサージを取り入れるケースもあります。
いずれの方法も効果には個人差がありますが、生理痛の軽減に役立つこともあります。とはいえ、セルフケアを試しても症状が改善しない場合は、医師に相談することをおすすめします。
生理痛を緩和する市販薬
セルフケアではおさまらない生理痛や、すぐに婦人科に行けないなどの事情がある場合には、ドラッグストアなどで販売されている薬を飲んで様子を見る方法もあります。購入の際は薬局の薬剤師または登録販売士に相談をしましょう。
ただし、生理痛の背景に病気が隠れている可能性もあるため、症状が続く場合や日常生活に支障をきたす場合は、婦人科を受診し、検査や治療を受けることが望ましいです。
非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)
生理痛の痛みを抑える薬として推奨されているのが、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)です。機能性月経困難症を訴える女性のおよそ8割に有効と報告されています。薬局で購入できる薬の例としては、ロキソニン、イブ、ナロンエース、ノーシンピュアなどがあります。胃腸への負担を考えて、できるだけ空腹時を避けて飲みましょう。
アセトアミノフェン
胃腸への負担が少なく、子どもから妊婦まで比較的安心して使いやすいため、一般的に広く使われています。薬局で購入できる薬の例としては、バファリンルナ、小児用バファリン、タイレノール、ラックルなどがあります。
意識が飛ぶほどの生理痛…病院に行く目安は?

生理痛で病院に行く目安は「生活に支障がある場合」です。痛みで起き上がれない、学校や仕事に行けない、意識が飛ぶほどの痛みがあるなど、生理痛によって日常生活に困っている場合は、早めに婦人科を受診することを検討してください。
生理痛の原因が特定の病気であった場合は、その病気を治療することが生理痛の改善につながります。また、特定の病気が原因ではなかった場合も、医師に相談することで低用量ピルや漢方など治療に使える薬の選択肢も広がります。
つらい生理痛、我慢しないで!上手に付き合う方法を考えましょう
意識が飛ぶほどの生理痛に悩んでいる方は、ぜひ一度産婦人科の受診を検討してみましょう。まずは生理痛の背景に、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの疾患がないかどうか、検査をすることが大切です。器質的疾患がない場合でも、痛みに対する治療法があります。我慢せずに、上手に生理と付き合っていきましょう。