・どちらも月経周期に関連し、月経前3~10日前に症状が現れ、月経開始にともない症状が軽くなります。
・両者とも頭痛や倦怠感・腹部の張りなどの身体症状と、イライラや気分の変動などの精神症状が症状として現れます。
基本的な症状は似ていますが、両者の違いは精神症状の強さです。
PMS:軽度~中等度の症状で、日常生活に支障となる大きな影響はもたらさないとされます。
PMDD:重度の精神症状が特徴で、日常生活や社会生活に支障をきたすのほどの影響を及ぼします。
PMSという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。メディアなどでも聞く機会が増えたことで、もしかしてPMSかも?と思い、婦人科を受診する方も増えています。
PMSと似た言葉でPMDDがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、PMSとPMDDはどのようなものか、また、違いについて解説します。正しい知識を身につけ、自分のカラダに寄り添いましょう。
PMSってなに?
まずはPMSについて詳しく解説します。最近耳にする機会が増えたけれど、あまり知らないという方も、ぜひ参考にしてみてください。
PMSとは
PMSとは月経前症候群のことです。premenstrual syndromeを略してPMSと呼ばれています。
月経前の3~10日の間に続く、身体的、精神的な症状で、月経が始まるとともに症状がおさまったり、なくなったりするものを指します。
むくみや体重の増加、胸の張り、体のだるさなど、身体的な症状が出る場合があります。
また、イライラしたり、涙もろくなったりと精神的な症状が強く出ると、日常生活に大きな影響を及ぼすこともあり、パートナーや子ども、同僚などに強く当たってしまうという方もいるでしょう。
精神症状がある場合、仕事や家庭など、人間関係に影響が出てしまうという方も少なくありません。
症状の個人差はありますが、女性の70%〜80%は何らかのPMSの症状があるといわれています。
PMSの症状は?
PMSの症状は、身体症状と精神症状が代表的です。
身体症状は以下のとおりです。
・下腹部の痛み
・頭痛
・手足のむくみ など
精神症状は以下のとおりです。
・気分の落ち込み
・不安感がある
・怒りっぽい など
症状は個人差が大きく、ここに書いていない症状がみられる人もいます。
PMSは月経前の期間に現れる
PMSの症状が現れるのは、月経の1週間ほど前からです。月経前に症状が現れ、月経とともに症状が治まることが特徴です。
そのため、月経が始まっても頭痛や下腹部痛がひどく、おさまらない場合は、月経困難症など、他の病気の可能性があります。
症状があって、改善されない場合などは、自分で判断せずに医療機関を受診しましょう。
PMSとPMDDの違いは?
PMSとよく似た言葉でPMDDがあります。
PMDDはあまり聞き慣れないという方も多いかもしれません。ここからはPMSとPMDDの違いについて解説します。
PMDDも月経前に症状が現れる
PMDDは月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder)とも呼ばれます。
月経前に3〜10日間程度、不快感のある状態が続きます。
この期間、精神的な症状や身体的な症状が現れますが、月経が始まると次第に症状がなくなる(または軽くなる)のが特徴です。
PMSと同じ時期に症状が現れます。
PMSとPMDDの違いは精神症状の強さ
PMSとPMDDは関連しており、月経前に症状が現れ、月経開始とともにに症状が軽快するという点では同じです。
基本的な症状は似ていますが、両者の違いは精神症状の強さです。
PMSは身体症状がより強く出るといわれています。
身体症状と精神症状が同じくらいか、体のだるさや頭痛・腹痛などの身体症状が強い場合はPMSである可能性が高いでしょう。
反対に、PMDDは非常に重い精神症状が出ます。PMSに比べて症状が重篤であり、日常生活に支障をきたす程度の精神症状、激しいイライラや深刻な気分の落ち込みなどの感情がコントロールできない場合は、PMDDである可能性が考えられます。
いずれにしても自分で判断はできないため、月経前の心身の不調が強い場合は、一度医療機関を受診し、相談することがおすすめです。
PMDDの症状
PMDDの症状は主に精神症状で、気分の落ち込みや抑うつなどがあります。
ここからは、PMDDの症状について解説します。どのような症状が現れるのか、知っておきましょう。
わたしはPMDD?まずはセルフチェックしてみよう
「月経前に気分の落ち込みがあるけれど、もしかしてPMDD?」と思う方もいるかもしれません。
PMDDの一般的な症状は以下のとおりです。生理前の自分の体調を思い出してみてください。
このチェック項目だけで診断はできませんが、まずはセルフチェックしてみてもいいでしょう。
・抑うつ気分
・突然悲しくなる
・涙もろくなる
・イライラして怒りっぽい
・不安や緊張
・意欲の低下
・集中力の欠如
当てはまるものが多い場合は、PMDDかもしれません。
次のPMDDの診断基準を確認して、いま自分に起こっている症状を詳しく把握しておきましょう。
PMDDの診断基準
PMDDは精神的な症状が強く現れている状態です。よくみられる症状は主に4つです。
月経前1週間の間に、“ 1つ以上 ” 下記のような症状がないか確認してみてください。
(2)イライラが強く、すぐに怒ってしまう。対人関係の対立が増える
(3)ひどく気持ちが落ち込んだり、絶望を感じたりする。自己否定の気持ちが強くなる
(4)不安や緊張を強く感じ、イライラしていると感じる
さらに、下記の症状を合わせて5つ以上の症状があるとPMDDの可能性が高いです。
(2)何事にも集中力が続かない
(3)体がだるく、疲れやすい。気力がわかない
(4)食欲が大きく変化。過食や特定の食べ物だけ多量に食べ続けるなど
(5)睡眠不足、睡眠をとりすぎ過眠状態
(6)自分をコントロールできなくなる
(7)胸の張りや痛み、関節痛、筋肉痛、体重増加、お腹の張りなど
そのほかにも、
・ほぼ毎月月経前に症状が出て、月経が始まるとよくなる
・月経後は症状がほとんどない
・症状が1年以上続いて、医療機関を受診してから2ヶ月の間同じ症状が続く
このような場合にPMDDと診断されます。もしかして?と思ったら、自己判断せず、医療機関で相談しましょう。
PMDDの治療方法とセルフケア
PMDDの症状が強く、治療が必要な場合、どのような治療が行われるのでしょうか。
ここからは治療方法について解説します。
カウンセリングやセルフケア
お薬を使う前に、まずはセルフケアによって症状の改善を図ります。
自分がどのような症状が起きているのかを把握するため、日記やアプリなどで記録をつけることもおすすめです。
生理前の体調の変化はホルモンバランスの変動によるものなので、ある程度は仕方がありません。
ただ、日常生活で気をつけ、予防できるポイントがあります。
以下のポイントを心がけてみましょう
・睡眠の確保やバランスのとれた食事、適度な運動習慣など、生活習慣の改善をする
・月経前にはカフェインやアルコールを控える
・症状が強い時期には、仕事の調整をする
・家族やパートナーなど、まわりの大切な人に伝えておく
・瞑想や音楽を聴くなど、自分で気持ちをリフレッシュできる方法を見つける
なかなか相談しづらいという方もいるかもしれませんが、周囲に頼ったり、理解を得ておくことも大切です。
お薬を使う
まずはセルフケアやカウンセリングで症状の改善を図りますが、
それでも症状が改善しない場合は、お薬を使うこともあります。
漢方薬
東洋医学では、月経前後にみられる不調の多くは「血」の異常が多く、血流が悪くなることが原因と考えられています。血液のめぐりが悪い状態を瘀血(おけつ)と呼んでいます。
イライラしたり、気持ちの落ち込みなどがある場合は加味逍遙散(かみしょうようさん)、
イライラが強くのぼせや便秘、肩こりがある場合は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)が処方されることが多いでしょう。
むくみや冷えがありカラダが重く感じる場合は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、
頭痛や肩こり・不眠・生理痛などがある場合は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が処方されることがあります。
SSRI(うつ病治療薬)
SSRIは脳内のセロトニン系に作用するため、治療に効果があると報告されています。PMSやPMDDの中でも特に精神症状が強く、精神科を受診した場合、SSRIが処方されることが多いです。
ピル
PMSやPMDDは、排卵によって女性ホルモンのバランスが大きく変動すると考えられているため、婦人科ではピルを処方し、排卵を抑える方法を選択することが多いでしょう。
ピルにより、女性ホルモンのプロゲステロンの分泌が抑えられると、胸の張りや食欲の高まりといった、身体症状の改善効果が期待できます。身体症状の改善には効果が認められているため、PMSの場合ピルを処方されることがありますが、精神症状の改善効果は認められていません。
しかし、女性ホルモンの増減が穏やかになり、身体症状の改善が改善することで、精神症状を緩和することがあります。そのため、日本ではPMDDに対して婦人科でピルが処方されることがよくあるのです。
ピルの飲み始めは、ホルモンバランスが大きく変化するため、症状が改善しないことがあります。2〜3ヶ月続けて飲むことで、症状の改善を待ちましょう。
PMS・PMDDかもしれないと思ったら何科を受診する?
PMSやPMDDを疑ったら医療機関を受診しましょう。
その場合何科を受診したらいいのか解説します。
まずは婦人科を受診しよう
PMSやPMDDは、ホルモンバランスの変動により症状が起きている可能性が大きいため、まずは婦人科を受診しましょう。
PMSやPMDDは、自身の心身の不調だけでなく、人間関係や日常生活に大きな影響を及ぼすこともあります。
しかし、なかなかPMSやPMDDで受診をする方は少ないという現状です。
PMSやPMDDの治療方法はさまざまです。
薬による治療だけでなく、セルフケアで症状が改善されることもあります。
受診した際には、身体症状や精神症状など、状態に合わせて必要な治療方法が選択されます。
また、PMDDの場合、精神症状によっては精神科や心療内科の受診が必要なこともあります。
症状に合わせて、適切な治療が推奨されているため、医師の指示に従い、必要であれば婦人科を併診し、治療をしましょう。
PMSやPMDDがつらいと思ったらすぐに相談しよう
PMSやPMDDの症状がある人は女性の70〜80%と、多くの女性が月経前に何らかの不調を抱えています。
症状は個人差が大きいため、我慢する必要はありません。少しでも違和感や生きづらさを感じたら周囲に相談しましょう。
強い不調が続く場合はすぐに医療機関を受診してください。無理せず月経とうまく付き合いましょう。