ベッドで背中合わせになり不満そうなカップル

セックスレスの原因とは?再び距離を縮めるための解消法を紹介します【医師監修】

2025.05.06
川合 厚子 先生
監修
川合 厚子 先生
クリニック院長
内科、精神科を担当 医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本精神神経学会専門医、公認心理師、労働衛生コンサルタント、産業医

結婚生活が長くなると、セックスレスになることは珍しくありません。しかし、いざ自分がその状況になると「このままでいいのだろうか」「どうしたら解消できるんだろう」と不安になる方も多いでしょう。

この記事では、考えられるセックスレスの原因と、具体的な解消法をご紹介します。夫婦関係の改善につながるヒントが見つかれば幸いです。

セックスレスとは?

「セックスレスかもしれない」と思うと、男性・女性問わず不安になったり、悩んだりすることもあるでしょう。実は、同じ悩みを抱えている夫婦は意外に多く、身近なところでも起きている問題かもしれません。

まずセックスレスの基本的な考え方と、どれくらいの夫婦が同じ状況にあるのか見ていきましょう。

セックスレスの定義

日本性科学会では、セックスレスを「特別な事情がないのに1ヶ月以上性交渉がない状態」と定義しています。ただし、この定義はあくまでも医学的・統計的な定義であり、夫婦の価値観や状況によって捉え方は変わってくるでしょう。

セックスレスの夫婦の割合

日本性科学会が公開している調査では、日本の既婚者のうち64.2%が「セックスの頻度は月に1回未満」と回答しています。これは、20年前に比べて2倍以上に増えており、セックスレスの増加傾向が続いていることがわかります。

年齢別で見ると、20代で28.0%、30代では53.3%、40代では63.4%と、年齢が上がるにつれてセックスレスの割合が増加することが明らかになっています。

近年ではアメリカやイギリスでも同様の傾向にあり、「セックスレスに悩む人は国際的にも増えている」と考えられるでしょう。

セックスレスの主な理由

家族の切り絵をもつ女性の手

セックスレスは、体、心、環境など複数の原因が絡み合って起こるものです。特に出産後は、女性の体調やホルモンバランスに大きな変化があるため、夫婦関係にも影響が出やすくなります。

関係性の変化

夫婦関係が長くなると、以前ほど性的魅力が感じられなくなることがあります。恋愛初期の情熱的な感情が時間とともに落ち着き、「恋人」から「家族」への愛情に変わっていくのは自然なことです。とはいえ、この変化がセックスレスの引き金になる場合もあります。

また、子どもが生まれると必然的に子ども中心の生活となり、夫婦だけの時間を持つ機会が減ることも珍しくありません。育児や家事に追われる中で、心身共に余裕がなくなってしまう夫婦が増えていると考えられます。

心の変化

セックスレスの背景には、心の変化が関係していることもあります。

たとえば、「誘うのが面倒」「断られるのが怖い」「家族としての愛情しか湧かない」といった不安や相手への気遣い不足が原因で、セックスに誘うのをためらってしまうことがあります。

また、「(しばらくセックスしていないのに)今さら誘えない」という恥ずかしさや「夫(妻)とはしたくない」といった性嫌悪の感情、関係のマンネリ化、生活のストレスによって、セックスの新鮮さや意欲が薄れてしまうケースもあるでしょう。

さらに、仕事や育児による忙しさや経済的な不安などがある場合、セックスに気持ちが向かなくなり、心の余裕そのものが失われてしまいます。

夫婦間のコミュニケーション不足

セックスレスの一因として、夫婦間のコミュニケーション不足も見逃せません。

仕事や育児などで忙しい日々が続くと、夫婦間でじっくり話し合う時間を持つことが難しくなります。その結果、お互いの気持ちや考えを共有する機会が減り、セックスレスにつながることがあるでしょう。

「断られるのが怖くて誘えない」という心理的な壁も、ますます会話が減り、関係が遠ざかる要因の1つとなり得ます。

生活習慣の影響

日々の生活習慣も、セックスレスの一因となることがあります。

出産後や育児中は、心にも体にも余裕がなくなりやすく、夫婦だけの時間を持ちづらくなるものです。
たとえば、子どもと一緒に寝ていたり、就寝時間がずれていたりすると、タイミングが合わず、自然と夫婦の距離ができてしまうこともあるでしょう。

また、仕事の忙しさも影響します。長時間労働やストレスで慢性的な疲れがたまると、性的欲求そのものがなくなってしまうことも少なくありません。

性機能の問題

加齢による性欲の低下のほか、男性ではED(勃起障害)や射精障害、女性では性交痛や腟の乾燥、不感症などが関係しているケースもあります。

これらの症状は、加齢やホルモンバランスの乱れ、ストレスなどが引き金になることが多く、本人の意思だけではどうにもならない場合があります。

身体的な問題が原因であれば、専門家に相談するとパートナーとの関係改善につながる可能性があります。

セックスレスを放置するとどうなる?

セックスレスの状態でも、夫婦双方が納得していて不満がない場合には、大きな支障とはならないかもしれません。

しかし、どちらか一方が我慢していたり、不満を抱えていたりする場合は要注意です。気持ちのすれ違いが続くと、夫婦関係、精神状態、家族関係など生活全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

夫婦関係が悪化する

セックスレスによって気持ちのすれ違いが生じたりすると、関係がぎくしゃくし、浮気や離婚につながる可能性があります。

相手からの愛情を感じられない状態が続くと不満が蓄積し、やがて会話やスキンシップも減少してしまいます。このような状況では関係修復がますます難しくなるでしょう。

精神的に悪影響を与える

セックスレスの状態が続くことで、「自分には魅力がないかもしれない」「愛されていない」と感じてしまう人も少なくありません。こうした思いは自己肯定感の低下につながり、ストレスや不安が積み重なって心の健康にも悪影響を与えます。

また、性的欲求が満たされず、イライラしたり不機嫌になったりと、日常生活を送る上でも好ましい状態とは言えません。

セックスレスを解消する具体的な方法

ベッドで話し合うカップル

セックスレスを解消する方法として最初におすすめするのは、相手との話し合いです。

お互いの気持ちや考えを率直に共有し、できることを考えてみてください。必要であれば、環境調整や専門家への相談を検討しましょう。

話し合いの時間を持つ

セックスレスの状況についてどう思っているか、率直に思いや考えを伝える時間を作りましょう。セックスレスの期間が長いほど切り出しにくく、勇気がいるかもしれません。しかし、話し合いは解消に向けた第一歩です。

「どう思っているの?」と問いかけるときは、相手を責めたり否定したりせず、「私はこう思っている」と自分の気持ちを伝えてみましょう。

1回の話し合いで解決しなかったとしても構いません。定期的に夫婦の時間を確保することがコミュニケーション不足の解消につながり、セックスレス解消の糸口となるでしょう。

身体の問題を改善する

「疲れていてセックスする体力や気持ちの余裕がない」「性欲が湧かない」という理由なら、まず体を休めることから始めましょう。

睡眠時間を十分に確保する、適度な運動をする、食生活の見直しをする、といった生活習慣の改善に取り組むことで、体の調子が整い、気持ちにも余裕が生まれやすくなるでしょう。

環境を整える

セックスレスの改善には、物理的な環境を見直すことも効果的です。

まずは、夫婦だけの時間を意識的に確保してみましょう。たとえば、子どもを預けて夫婦だけで出かける時間を持ったり、手をつなぐ・ハグなどのスキンシップを増やしたりすると、かつての親密な気持ちを取り戻すきっかけになります。

また、寝室の環境を変えることもおすすめです。照明やインテリアを変えてみる、ルームフレグランスを使うなどすると、新鮮さやリラックス感につながるでしょう。手軽に始められる方法なので、ぜひ取り入れてみてください。

専門家に相談する

自分たちだけで解決が難しいと感じたときは、夫婦カウンセリングや医療機関への受診も検討しましょう。

カウンセリングでは、夫婦のコミュニケーション改善方法について具体的なアドバイスをもらえる場合があります。

また、EDや不感症、性欲減退などの身体的な問題は、男性・女性問わず起こり得るものです。医学的な問題がある場合は、婦人科・泌尿器科などで適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。無理に一人で抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りることで、関係改善の糸口が見えてくるかもしれません。

セックスレスの悩みを専門家に相談するタイミングは?

セックスレスについて、第三者に相談することに抵抗を感じる方も少なくありません。

「こんなことを話していいのかな」「恥ずかしい」「相手に悪く思われないか心配」といった気持ちから、一人で抱え込んでしまうケースもあります。

しかし、誰かに話すことで心が軽くなり、問題の本質が見えてくることもあります。カウンセラーや医療機関の専門家は、偏見なく話を聞いてくれる存在です。気持ちを理解し、寄り添ってくれる専門家を探しましょう。

セックスレスが原因で夫婦関係が悪化している時

夫婦関係の悪化を感じたときは、相談のタイミングです。

夫婦の会話が減ったり、関係がギクシャクしたりして、どちらか一方が強い不満を抱えている場合、放置すると夫婦の溝がさらに深まってしまうかもしれません。

そんなときこそ、夫婦カウンセリングを利用し、早めに対処するのが望ましいでしょう。

身体機能が関係している可能性がある時

身体的な不調が原因かもしれないと感じたときも、相談のタイミングです。

ED、不感症、性欲低下など性機能に関する悩みは、心だけでなく身体的問題が関係していることも少なくありません。

男性は泌尿器科、女性は婦人科など、我慢せずに医療機関に相談しましょう。適切な診断と治療で身体機能が改善すると、セックスレス解消につながる可能性があります。

夫婦で向き合うことが解決の第一歩!必要なら専門家の力を借りよう。

ベッドで見つめ合うカップル

セックスレスは決して特別なことではなく、日本でも60%以上の夫婦が該当しています。恥ずかしさや不安を感じることがあるかもしれませんが、口には出さないだけで、身近な人も同じように悩んでいる可能性があるのです。

セックスレスは、心や体、生活環境などのさまざまな原因が絡み合って発生します。まずは夫婦で気持ちを話し合うことから始め、コミュニケーションの改善や環境調整など、できることから始めてみましょう。

そして、必要だと感じたときには、専門家の助けを借りることも考えてみてください。今後の夫婦関係をより良いものにするために、一歩踏み出してみましょう。

この記事を書いた人

サユコサムネイル

サユコ

臨床検査技師として働きながら、主に医療・メディカル分野でライティングを行う。一般の方向けから医療系専門職向けまで、多角的に正確な医療・健康情報を届けることをモットーとして活動中。

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