月経移動とは、生理(月経)を予定日よりも前倒し、もしくは後ろ倒しにすることです。生理開始日を調整するためには、ピルの使用が適しています。
生理を「遅らせる方法」と「早める方法」がありますが、状況によってピルの種類や服用方法が違うので注意が必要です。 早めたい場合は、計画的なピルの服用が必要です。スケジュールや体調に合わせて、適した方法を選びましょう。
しかし、個々の状況や体質によって服用方法が異なる場合があります。ピルは医療用の薬なので、必ず医療機関を受診し、医師と相談のうえで使用してください。
旅行やデート、結婚式、試験など大切なイベントと生理が重なってしまうと憂鬱に感じる方は多いでしょう。生理は、女性の心と身体の両方に影響を及ぼします。
生理のせいで、大切なイベントを思いっきり楽しめなかったり、実力が発揮できなかったりすると残念な気持ちになってしまいますよね。特に、生理痛がひどい方にとっては重要な問題です。
令和は生理をガマンしない時代!
ピルを活用して生理周期をコントロールすることは、女性が心地よく生きるために有効な手段の1つです。
生理をずらす方法
大切なイベントと生理予定日が重なりそうなとき、生理の日程をずらせたらいいのに…
と思ったことはありませんか?
「避妊のためのもの」というイメージが強いピルですが、実際には避妊以外にも多くのメリットがあります。
この記事では、ピルを服用して、生理周期を自分で調節する「月経移動」についてご紹介します。
大切なイベントと生理予定日が重なってしまったときは我慢せず、ピルの使用も視野に入れてみましょう。
月経移動とは
月経移動とは、ピルを用いて生理の日にちを希望の日にちにずらすことです。事前に大切なイベントと生理がぶつかりそうなことが分かっている場合、調整することが可能です。
ピルとは
ピルとは、月経移動の際に用いる女性ホルモン剤を含むお薬です。
ピルには、生理のメカニズムに不可欠な「エストロゲン」と「プロゲステロン」が含まれています。服用方法を変えることで、生理を早めることも遅らせることもできます。
ピルにはいくつかの種類があり、月経移動が目的の場合は、低用量ピルもしくは中用量ピルを用いることがほとんどです。医療用医薬品であるピルは、必ず医師の診断を通じて購入する必要があります。市販薬は生理を遅らせる医学的根拠が証明されていないため、ドラッグストアなどでは購入できません。病院や調剤薬局など、医師もしくは薬剤師の説明を受けた上で服用しましょう。
なお、月経移動にかかる費用は医療機関によって異なりますが、4,000〜5,000円程度が一般的です。
薬以外で生理をずらすことはできる?
薬に抵抗がある方など、できることなら薬以外で生理をずらしたいという方もいるでしょう。
しかし残念ながら、薬以外で生理をずらす方法はないのが現状です。
子宮内避妊器具「ミレーナ」を子宮内に装着すると子宮内膜を薄い状態で維持し、受精卵の着床を防ぐ効果があります。薬を飲まずに、生理の出血量を少なくし、生理痛を軽くするのがメリットですが、1度装着すると効果は5年程度継続します。出産後にずっと避妊をしたい方や月経困難症、過多月経など生理が重くてつらい方に適した方法と言えるでしょう。一時的に生理日をずらしたい場合は、不向きな方法です。
生理をずらすピルの飲み方
生理をずらす方法は、生理を遅らせる場合と早める場合の2通りの方法があります。
どちらもメリットとデメリットがあるため、それぞれの特徴をしっかり確認しておきましょう。
なお、ピルの効果には個人差があり、体調にも左右されます。ピルを飲んでいる最中に生理が来てしまった場合は、すぐに服用を中止しましょう。
方法1.生理を遅らせる場合
次回の生理予定日が大体分かるようであれば、生理を予定日よりも遅らせることができます。
生理を遅らせる場合は、中用量ピルを用いることがほとんどです。
中用量ピルを飲み始めるのは、ずらしたい生理予定日の5〜7日くらい前からです。飲んでいる間は生理は来ません。飲むのを止めてから2〜3日くらいすると生理が来ます。最長で10日間程度、生理を遅らせることが可能です。
イベントの最中も正しく服用すれば、ほぼ確実に生理を避けられます。生理予定日の7日前までにピルを飲み始めれば良いため、急な予定が入った場合でも対応可能です。
ただし、イベントの最中も服用する必要があるため、ピルの副作用が起こってしまうとつらいかもしれません。
方法2.生理を早める場合
低用量ピルで早める場合
生理を早める場合は、“ ずらしたい生理予定日の1つ前の生理 ” 開始から低用量ピルを飲み始めなくてはいけないため、余裕を持ったスケジューリングが必要です。予定が分かっている場合のみ、対応が可能な方法と言えるでしょう。
“ ずらしたい生理予定日の1つ前の生理 ” が始まってから5日目までに低用量ピルを飲み始めます。2週間以上低用量ピルを継続して服用した後、服用を中止するとおよそ2〜3日後に生理が来ます。
そのため、大切なイベントの最中にピルを飲む必要がありません。スケジュールに余裕があり、1カ月前から計画的にピルを飲めるのであれば、早める方がおすすめです。
▲服用中のピルに合わせて、必要な日数分の月経移動用のピルを処方してくれます(編集部T子体験談)
中用量ピルで早める場合
2週間以上低用量ピルを飲むことができない場合でも、中用量ピルを用いて生理を早めることが可能です。
中用量ピルを用いる場合は、生理予定日の20日前から10日間継続して服用します。低用量ピル服用時と同様に、中用量ピルも服用を中止した後2〜3日すると生理が来るため、生理を早めることが可能です。
生理日をずらすことによって副作用はある?
正常なサイクルで訪れる生理日を人為的にずらすことで、副作用を心配する方もいるでしょう。ピルを用いて生理をずらすこと自体に大きな問題はありません。生理周期が順調で、きちんと排卵がある方なら、ピルの服用を中止後2〜3日くらいすると生理(ピル服用時は「消退出血(しょうたいしゅっけつ)」と言う)が起こり、次の生理も、以前の生理周期に戻ります。
しかし、ピルは医療用医薬品であるため、人によっては副作用が出る場合もあります。安心してピルを使用するためにも、ピルの副作用について事前に知っておきましょう。
「ピル」服用時の副作用
ピル服用時に見られる軽い副作用として、吐き気や嘔吐、頭痛、乳房の張りや痛み、不正出血などがあげられます。月経前の症状とよく似た症状が多く見られます。これらの副作用は、ピルを飲み続けているうちに、自然に治まることがほとんどです。
副作用がどうしてもつらく我慢できないときは、医師に相談しましょう。ピルの種類によって副作用も異なるため、ピルの種類を変えるとラクになる場合もあります。
なお非常にまれですが、ピルの服用によって血栓症を引き起こす可能性があります。血栓症とは、主に足から心臓へと血液を送るふくらはぎの血管に血の塊ができて、血管が詰まってしまう病気です。40代以上の方やBMI30以上の方、喫煙する方は、血栓症になりやすいと言われており注意が必要です。
血栓症を放置すると、最悪の場合、肺梗塞を引き起こし、命に関わる状態になるおそれがあります。ピルを服用している期間に、以下のような症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。
・激しい胸痛や腹痛、突然の息切れ
・視野が狭くなるなどの視覚障害
・激しい頭痛や前兆のある頭痛、めまい、失神
・舌のもつれやしゃべりにくいなどの言語障害
【低用量ピルと中用量ピル】副作用の違い
中用量ピルは低用量ピルよりも、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが多く配合されています。エストロゲンの配合量が多い中用量ピルは、低用量ピルよりも身体への負担が大きく、副作用が強く出る可能性があります。
ただし、中用量ピルを用いた10日程度の月経移動であれば、身体への影響はほとんどないため、過度な心配はいりません。
事前に知っておきたい!ピル使用時の注意点
ピルを上手に活用することで、大切なイベントもパフォーマンスを落とすことなく、ベストな状態で迎えることができます。
ただし、医療用医薬品であるピルは、必ず医師の判断のもと処方してもらい、指示を守って服用しなければなりません。ここでは、ピルを使用する際に、事前に知っておきたい注意点を紹介します。
はじめての月経移動の場合
はじめて月経移動する場合は、イベントの2〜3カ月前までに医療機関を受診するとベストでしょう。スケジュールに余裕があれば、万が一、副作用が強く出てしまいつらい場合でも別の種類のピルを試したり、副作用が少ない低用量ピルを試したりもできます。
特に、副作用が心配な方は、大切なイベントの前に1度お試しで服用してみると、様子が分かるため安心です。大切なイベントが生理と重なることが分かったら、早めに医療機関を受診しましょう。
低用量ピルを服用中の場合
最近は日本でも、PMSの症状緩和や避妊効果などを目的とし、日頃から低用量ピルを服用する方が増えています。日頃より低用量ピルを服用している方の場合は、低用量ピルを用いた月経移動が可能です。
低用量ピルにはいくつかの種類があり、種類によって月経移動の方法も異なります。代表的な低用量ピルは、1相性(マーベロン、ファボワールなど)と3相性(トリキュラー、アンジュなど)の2つです。
低用量ピルを服用中の方が月経移動を希望する場合は、かかりつけの医師に相談しましょう。
月経周期が不安定な場合
月経周期が不安定で、次の生理予定日の予測が難しい場合は、月経移動が失敗する可能性が高まります。大切なイベントを控えており、確実に生理をずらしたいという場合は、まず低用量ピルを用いて月経周期を安定させることが大切です。月経周期が安定することで、月経移動のスケジュールが立てやすくなり成功確率もアップします。
低用量ピルを用いて、月経周期を安定させるには、ある程度の期間を要します。どうしても生理を避けたいイベントがある場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
また、月経周期が不安定な方は、なんらかの病気が原因であることも考えられます。月経移動を希望する・しないに関わらず、念のため医療機関を受診し、検査することをおすすめします。
持病を持っている場合
持病を持っている場合は、血栓症などの危険性を考慮し、ピルを処方できないケースも少なくありません。
以下の項目にあてはまる方で月経移動を希望する場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
・古典的片頭痛のある方
・高脂血症のある方
・高血圧症を薬でコントロールできない方
・肥満の方
・乳がん・子宮頚がん・子宮体がんに罹っている方
・肝機能障害や腎臓の働きが悪い方
・妊娠の可能性がある方
また、血液の流れを悪くするたばこは、血栓症を引き起こすリスクが高いため、35歳以上で1日15本以上たばこを吸う喫煙者もピルを処方してもらえない可能性があります。
大切なイベントがあるなら、無理せず生理をずらしましょう!
生理は女性にとって欠かせない大切なものです。しかし、生理によって現れる腹痛や頭痛、肌荒れなどの症状はパフォーマンスを低下させ、気持ちも落ち込みますよね。
生理による不快な症状は、我慢しなければならないことではありません。ピルを上手に活用することで、不快な症状を緩和できます。どうしても外せない大切なイベントと生理の日程が重なってしまう場合は、無理せずピルを用いて生理周期をコントロールしましょう。
自分にとって理想の状態で、大切なイベントを迎えてください!