更年期になると、ホルモンバランスの変化により、今まで気にならなかった症状が現れやすく、その一つに「かゆみ」があります。大したことはないと思いがちですが、その不快感が日常生活に影響を与えたり、悩みの種になることもあります。
今回はそんな女性に起きやすいかゆみについて、原因やセルフケア方法を解説します。
女性ホルモンの変化と皮膚のかゆみの関係とは?
かゆみは誰もが経験する不快な症状ですが、女性ホルモンの変化が影響して、かゆみを感じやすくなることがわかってきました。
女性ホルモンの変化によるかゆみのメカニズム
最近の研究では、妊娠中や更年期など、女性ホルモンが変化する時期にかゆみの感じやすさが変わることに着目し、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが原因でかゆみに影響が出ることがわかりました。
この研究では、雌のラットに女性ホルモンであるエストロゲンまたはプロゲステロンを補充し、かゆみのもととなる物質を投与したところ、エストロゲンを補充されたラットのみが頻繁に引っ掻く行動を示しました。さらに、かゆみを脳に伝える中継地である「脊髄」の受容体の活動が上昇し、エストロゲンによりかゆみが増す可能性があることが示されています。
エストロゲンは、通常の月経周期でも生理の時期や排卵にかけて変動しますが、妊娠中はそれとは比べ物にならないほど大きく上昇します。その一方で、更年期は排卵がうまくいかなくなることでホルモンの分泌が不安定になり、かゆみを感じやすくなると考えられます。
更年期に起きやすい外陰部のかゆみ
更年期になると女性ホルモンの分泌が低下し、腟や外陰部の粘膜が乾燥しやすくなります。その結果、デリケートゾーンにかゆみを感じやすくなります。
また、腟内の乳酸菌(善玉菌)が減少することでかゆみが悪化するケースもあります。症状が進行すると、性交痛や排尿障害につながることがあるため、早めのケアが大切です。
女性ホルモンの影響だけではない?かゆみを引き起こすその他の原因

かゆみを起こす原因は、女性ホルモンの変化だけではありません。ここでは、女性ホルモンとは関係なく発生するかゆみの主な原因について説明します。
乾燥
乾燥は、かゆみの最も一般的な原因の1つです。乾燥により肌の水分量が減ると、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなります。
その結果、かゆみを感じる神経が過敏になり、かゆみを生じやすくなると考えられています。
かゆみを起こす疾患
かゆみは以下のような様々な病気によっても引き起こされます。
- 腎臓の病気:慢性腎不全,血液透析
- 肝臓や胆のうの病気:原発性胆汁性胆管炎,閉塞性胆道疾患,肝硬変,慢性肝炎
- 内分泌系の病気:甲状腺機能異常,糖尿病,痛風
- 血液の病気:鉄欠乏性貧血,悪性リンパ腫
- 悪性腫瘍(がん):悪性リンパ腫,慢性白血病,内臓悪性腫瘍
- 神経の病気:多発性硬化症,脳血管障害,脳腫瘍
- 精神障害・心因性の病気:神経症,心因性
- その他:AIDS(後天性免疫不全症候群),寄生虫疾患
かゆみを誘発する薬
一部の薬が、かゆみの原因になることがあります。特に、以下に該当する薬を使用している場合は、かゆみを引き起こす可能性があります
- 精神科系の薬
- 抗マラリア薬
- 消炎鎮痛薬
- 化学療法の薬
- 心血管に作用する薬利尿薬
- 抗菌薬
- ホルモン剤
- オピオイド
かゆみが続いたり、症状が悪化したりする場合は、自己判断せずにかかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。
原因不明
かゆみの原因は女性ホルモンの変化や乾燥・病気・薬の副作用など、様々なものがあります。しかし、必ずしも原因を特定できるとは限りません。
かゆみに対するセルフケアと生活習慣のポイント

「病院に行くほどでもないけれど何とかしたいかゆみ」に悩む方も多いでしょう。
ここでは、セルフケアや生活習慣の改善により、かゆみを軽減する方法を解説します。
保湿を徹底する
かゆみの最大の原因である乾燥に対しては、保湿が最も大切なセルフケアです。保湿剤を使うと、肌の表面に人工的な膜が作られ、乾燥から肌を守ることができます。
保湿剤の選び方
市販で手に入る保湿剤には、様々な種類があります。季節や個人の好みによって合うもの、合わないものがありますが、基本的には自分にとって快適に使える保湿剤を選ぶことが重要です。
以下に、主な市販の保湿剤の特徴と選び方のポイントを挙げます。
油脂性軟膏 (白色ワセリン、プロペトなど)
- 価格が安い
- 刺激感がほとんどない
- べタつきが気になる場合がある
ヘパリン類似物質 (ヒルドイド)
- 保湿効果が高い
- ベタつきが少ない
- 様々な製剤タイプがあり用途により使い分けやすい
- わずかなにおいがある
尿素クリーム (ウレパール、ケラチナミンなど)
- 保湿効果が高い
- ベタつきが少ない
- 炎症が起きている部位に塗ると刺激感が生じることがある
セラミド (キュレル、AKマイルドクリームなど)
- 角質細胞間脂質で、皮膚本来の保湿機能を担っている物質
- 費用が他と比べて高め
ベタつきが気になる場合、ヘパリン類似物質が使いやすく、乾燥がひどい場合は、油脂性軟膏や尿素クリーム・セラミド配合のものを選ぶと良いでしょう。
保湿剤の塗り方のポイント
保湿剤を選んでも、塗り方が適切でなければ効果が半減します。以下のポイントを意識しましょう。
- 狭いところは指先で、広い範囲は手のひらで、薄く伸ばすように塗る
- 多すぎず少なすぎず、肌がしっとりするくらいが適量
- 皮膚にすり込むように塗らず、薄く塗り伸ばすのを意識する(こする刺激がかゆみを悪化させることがある)
- お風呂上りを基本に、1日1回は必ず保湿剤を塗る
乾燥が気になるときは、適宜追加しましょう。
入浴時の注意点を意識する
熱いお湯に浸かったり、長時間入浴すると、皮膚の保護物質である皮脂が失われやすくなります。お湯の温度はぬるめにし、長湯は避けましょう。
ナイロンタオルやスポンジで体を強くこするのもかゆみの原因になります。それらを使わずに手と泡のみで、やさしく洗いましょう。
石けんやボディーシャンプーは、皮脂を失うおそれがあります。かゆみがひどい方は刺激の弱いタイプを選び、量も少なめに使うことが推奨されます。
また、入浴後は肌の水分が急速に蒸発するため、早めに保湿剤を塗ると、肌の潤いをキープしやすくなります。
衣類や下着を見直す
肌に直接触れる下着や衣類の種類によっては、かゆみの原因となることがあります。ウールやナイロンは肌に刺激になりやすく、綿や絹は肌にやさしいとされています。
また、特に蒸れやすい下半身は、素材の見直しに加えて通気性を良くするよう意識しましょう。
汗をこまめに拭き取る
汗には様々な物質が含まれており、かゆみを起こす原因になります。
さらに、汗にほこりがつくと刺激となってかゆみを起こすので、早めにシャワーで洗い流したり、汗拭きシートなどを使ってこまめに汗をふき取るようにしましょう。
適度な湿度を保つ
乾燥はかゆみの原因ですが、その予防の一つに室内の乾燥対策があります。洗濯物の室内干しや、濡れタオルや加湿器を使用して、室内を加湿しましょう。55~65% 程度の湿度が良いと考えられています。
辛い物、アルコール類は控えめにする
香辛料の入った辛い料理やカフェインが多く含まれる飲み物、アルコール類などの刺激物は、かゆみを引き起こすことがあります。
刺激物の影響は個人差があり、適量は人それぞれです。自分の体調を見ながら、適度に楽しみましょう。
食生活を見直す
食生活が偏ると、体の代謝機能が乱れて肌のバリア機能が低下しやすくなります。様々な品目をバランスよく摂るようにしましょう。
どうしても食生活が偏りがちな場合は、マルチビタミンのようなサプリを活用するのも一つの方法ですが、あくまでバランスの良い食生活が基本です。
また、大豆イソフラボンが更年期の諸症状に良いとされる報告があります。ただし、過剰な摂取は副作用を引き起こす可能性があるため、適切な量を取り入れるようにしましょう。
内閣府食品安全委員会は、特定保健用食品として食品からの摂取に上乗せする安全な大豆イソフラボン摂取量は、1日当たり30mgとしています。
睡眠の質を向上させる
睡眠不足が続くと自律神経が乱れ、かゆみの原因になります。睡眠の質を向上させるために、眠りにつく時間や睡眠時間を一定にさせるようにしましょう。
ストレスをためない
重要な試験や仕事などの心理的ストレスはかゆみの原因になることがあります。ストレスにより、ステロイドホルモンの分泌が増して、肌の代謝のバランスを悪化させます。
完全にストレスを回避するのは難しいですが、自分なりのストレス解消法を見つけ、ストレスをためない生活を意識しましょう。

セルフケアを行ってもかゆみが改善しない場合や、皮膚の色の変化やできものがあるときなど、かゆみ以外の症状を伴う場合は、皮膚科や産婦人科を受診しましょう。
局所的な皮膚症状ならステロイドの使用や、更年期のホルモンバランスの乱れであればホルモン補充療法が有効なケースもあります。
更年期のかゆみ、まずは生活習慣を見直してみましょう
今回は女性ホルモンの変化とかゆみの関係について説明しました。さらに、日常生活に取り入れやすいセルフケアについても紹介したので、思い当たる点があれば試してみましょう。
ただし、セルフケアをしていても良くならない、あるいは長期間続く場合は何らかの病気が隠れていることがあります。自己判断せず、皮膚科や産婦人科を受診し、適切な治療を受けましょう。