生理になると下痢になったり、経血に塊が混じっていたり、様々な症状に悩む方は少なくありません。一方で、「生理はデトックスになる」「生理中のデトックス効果を高めよう!」など、生理が体の老廃物を排出してくれる効果があるという情報を見て、生理に何らかの効果があると思われる方もいます。
今回は生理とデトックスの関係や、生理を正しく知って上手く付き合う方法について解説します。
生理がデトックスになるって本当?

「生理がデトックスになる」という情報を目にしたことがあるかもしれません。結論から言うと「医学的には生理とデトックスは関係ない」と言えます。
生理が特別なものと考えられた理由
生理は、古くから「特別なもの」として扱われてきました。
たとえば日本では、生理が「血の穢れ(けがれ)」とされ、忌み嫌われる歴史がありました。また、海外でも「タブー」という言葉の語源が、ポリネシア語で月経を指す「tabu」に由来するなど、キリスト教やイスラム教が月経を禁忌とみなしてきました。こうした背景から、月経を特別視する意識が長く残っています。
本来、生理は生殖(子供を作ること)と強く結びついていましたが、最近になって健康や美容と関連づけられるようになりました。こうした認識は、医学的な話ではなく、女性の社会的立場が変化し、「生理=生殖」ではなくなったこと、生理に対する価値観の変化や美容・健康志向の影響によるものと考えられます。
このような文化的背景や価値観の変化が、「生理がデトックス」といったイメージの広がりにつながっていると考えられます。
生理にデトックス効果はない
デトックスとは「体から毒素を排出すること」ですが、医学的な根拠はありません。生理についても同様です。
生理前に分泌されるホルモンの影響で、肌荒れやむくみ、便秘などが起こりやすくなります。そして生理が始まるとホルモンバランスが変化し、それらの症状が改善する場合があります。こうした変化が、デトックスの効果に見えるかもしれません。
しかし、実際は生理的なホルモンの変化による自然な反応であり、毒素が排出されたわけではありません。
生理はあったほうがよいの?
毎月煩わしい思いをする生理ですが、女性の体にとってどのような意味があるのでしょうか。実は、生理が起きるのは成熟した女性の体に起きる自然な変化ですが、必ずしもある方が良いとは言えません。
女性の生理が起きるメカニズム

生理は、ホルモンの働きによって月経周期が繰り返される中で起こる現象です。月経周期は、大きく以下4つのサイクルに分けられます。
卵胞期
月経が終わってから排卵までの、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が徐々に増加する時期です。卵巣の中で卵胞が徐々に成熟し、排卵の準備をします。また、エストロゲンの作用により、子宮内膜が厚くなります。
排卵期
エストロゲンの分泌がピークに達すると、脳から黄体化ホルモン(LH)と呼ばれるホルモンが急速に増加し、卵胞から卵子が飛び出す「排卵」が起きます。排卵した後の卵胞は黄体と呼ばれる組織に変化します。
黄体期
排卵後から月経までの、プロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌される時期です。子宮内膜がより厚くなり、受精卵を受け入れる準備をします。
月経期
黄体の寿命は2週間程度であり、妊娠が成立しなかった場合、黄体からのエストロゲンやプロゲステロンの分泌が減り、子宮内膜が剥がれ落ちて体の外に排出されます。これが月経です。
生理前後に起きる体調変化
排卵後、ホルモンのバランスの変化により、月経の3〜10日前からお腹の痛みや張り、イライラ、気分の落ち込みなどが現れ、月経の始まりとともによくなることがあります。これはPMS(月経前症候群)と呼ばれ、特に精神的な症状が強くなるものをPMDD(月経前不快気分障害)と言います。
また、生理中はお腹の痛み、腰痛、頭痛、疲労感などが起き、これらを月経困難症と呼びます。人によっては、生理の量が異常に増える過多月経と呼ばれる状態になり、ひどい貧血を起こすことがあります。
PMSや月経困難症で悩む方は女性の7割前後にもなると言われており、多くの方が生理前から生理中に様々なトラブルを抱えていると言えます。
生理があることで起こる体への影響
生理は妊娠しなかった結果起こる体の生理的現象であり、生理があること自体は特にプラスの意味はありません。
現代の女性は、昔の女性に比べて生理の回数が大幅に増えているという報告があります。かつては初婚年齢が早く、出産人数も多かったため、妊娠中から授乳中にかけて生理がなく、閉経近くまでそのサイクルが繰り返されていました。
一方で、現代は初産が遅くなり出産回数も減っているため、一生に経験する生理の回数が約9倍に増えたとも言われています。
生理回数の増加は、月経困難症やPMSのみならず、子宮内膜症という疾患のリスクを高める要因にもなります。子宮内膜症は酷い生理痛や性交痛といった症状から、悪化すると不妊症や卵巣がんのリスクを上昇させます。
生理と上手く付き合うために、ピルについて知ろう

生理をコントロールするためには、ピルは重要な選択肢の一つです。ここではピルについて、効果や副作用、飲み方のポイント、注意が必要な方について解説します。
ピルとは?
ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが配合された薬です。毎日1回決まった時間に内服することで、排卵やホルモンの変化を抑え、子宮内膜が厚くなりにくくする効果があります。生理痛の原因となる「痛み物質」の産生が減少するため、症状が緩和されます。
生理痛などの症状の治療目的であれば保険適用、避妊が目的であれば自費での処方となります。
「ピルは太るのでは?」「妊娠しにくくなるのは?」といったイメージを持つ方もいますが、これらは医学的な根拠はありません。
周期投与と連続投与の違い
ピルは、従来の方法である周期投与(1か月に1回生理を起こす)と連続投与(最長120日間連続して内服し、その間生理がない)の2種類があります。
周期投与
【生理の感覚】28日に1回
【費用】ジェネリックがあるため安め(月1,000円程度)
【メリット】費用が安い
連続投与
【生理の感覚】最長120日に1回
【費用】先発品のみなので周期投与よりは高価(月3,000円程度)
【メリット】生理痛の改善、毎月の出血期間の諸症状が回避できる
連続投与の方が生理痛の改善や、休薬期間中の出血に関連する症状の回避という点は優れています。どちらが自分に合うか、医師に相談しましょう。
ピルの効果
ピルには、生理痛やPMS症状、過多月経の改善効果が期待できます。経口避妊薬としては、最も優れた避妊法の一つです。また、卵巣がんや子宮体がん、大腸がんの発生頻度が減少すると言われています。
副作用について
よくある副作用として、吐き気や、不正出血などのマイナートラブルがありますが、多くは1〜2か月で落ち着きます。また、乳がん、子宮頸がんはわずかに増加する可能性があります。
血管に血の塊が詰まる病気(血栓症)のリスクがわずかに上昇します。ただし、ピルを飲んでいない女性1万人あたり1〜5人に対し、ピルを飲んでいる女性1万人あたり3〜9人と低い頻度です。
妊娠時、出産時は1万人当たり40〜50人と比べると低い確率ではありますが、特に下記のようなリスクがある方は注意しましょう。
注意が必要な人
ピルを飲む際、以下のような人は注意が必要、もしくは服用できない場合があります。
注意が必要な人
・40歳以上
・たばこを吸う
・前兆のない片頭痛がある
・軽度の高血圧がある
飲んではいけない人
・50歳以上または閉経後
・35歳以上で1日15本以上たばこを吸う
・前兆を伴う片頭痛がある
・重症の高血圧症がある
上記以外にもチェック項目があるため、ピルの内服を希望する際は、医師に相談しましょう。
生理にはデトックスの効果はなし!体の仕組みを正しく理解してピルの活用も検討しよう

生理前から生理中にかけて、体調の変化がある方は多いですが、それはデトックスではなく、ホルモンバランスの変化による自然な反応です。むしろ、生理に関連する症状を放置すると、不妊症や婦人科疾患のリスクにもつながります。
生理にまつわる痛みや不快な症状がある場合は、婦人科の医師に相談しましょう。適切な対処をすることで生理と快適に付き合うことができ、将来の自分の体を守る可能性があります。