「最近、生理周期が乱れているかもしれない」「そういえば昔から生理の周期がおかしい」こうした悩みを抱えていても、生理について人と相談する機会は少なく、自分の生理が正常か異常か判断できずに不安を感じている方は少なくありません。今回は、生理周期について正しく理解し、不順の原因や受診の目安をわかりやすく解説します。
あなたは大丈夫?生理不順セルフチェックリスト
まずは、あなたの状態を確認してみましょう。知らないうちに生理不順に当てはまっている場合もあります。
以下の項目に、いくつ当てはまりますか?
一つでも当てはまる場合、生理不順の可能性が高いと考えられます。
生理不順とは?正常な生理周期との違い

「生理不順かもしれない」と感じたとき、まず知っておきたいのは「正常な生理とはどのような状態か」です。ここでは、正常な生理と生理不順について、詳しく説明します。
正常な生理周期と出血量の目安
生理周期とは、「生理が始まった日から次の生理が始まるまでの期間」を言い、正常な生理周期は25~38日で、出血は3〜7日間続きます。経血量は、1回の月経トータルでおよそ20~140gが目安です。これらの範囲を外れる場合、生理の異常が疑われます。
希発月経
希発月経とは、生理周期が通常より長く、39日以上から3か月未満の間隔で起こる月経です。排卵に時間がかかったり無排卵が原因とされ、3か月以上月経がない場合は続発性無月経と呼ばれます。これも排卵がうまく行われないことで生じます。
頻発月経
頻発月経は、24日以内の周期で生理が来る状態です。これも希発月経と同様に排卵障害や卵巣機能の低下が原因になることがあります。また、子宮の病気による不正出血が生理と誤解される場合もあるため、注意が必要です。
生理不順の原因は?
生理不順を引き起こす原因には、さまざまなものがあります。中には一時的な体調の変化によるものもありますが、治療を要する病気やホルモン異常が隠れているケースもあります。
以下、主な原因について見ていきましょう。
妊娠
まず重要なのは、妊娠です。生理が遅れたときは、第一に妊娠していないか確認することが大切です。着床の時期に生理のような出血が見られることがあり、「生理が来たと思っていたら妊娠していた」というケースもあります。
多嚢胞性卵巣症候群
多嚢胞性卵巣症候群は、生理不順を起こす代表的な疾患で、生殖可能年齢の女性の5〜8%に発症します。ホルモンバランス異常による排卵障害、生理不順、肥満などの症状を引き起こします。
高プロラクチン血症
プロラクチンという母乳分泌を促すホルモンが高くなると排卵が起きにくくなり、生理不順の原因になります。脳腫瘍などによる分泌異常がある場合や、一部の向精神薬など、内服している薬が原因となる場合があります。
体重の増減
体重の急激な増減もホルモンバランスを崩し、生理不順を招くことがあります。たとえば、無理なダイエットにより排卵が止まったり、過度の体重増加でホルモンの分泌異常を引き起こしたりすることがあります。健康的な体重管理が、生理周期を安定させる上でも重要です。
精神的なストレス
精神的なストレスも見逃せない要因です。強いストレスを感じると、脳が「今は妊娠すべきではない」と判断し、排卵を止めてしまうことがあります。
激しい運動負荷
アスリート並みの激しい運動負荷は、精神的なストレスと同様、脳が「妊娠するには不適切なタイミング」と判断し、排卵障害を起こす原因になります。特に、エネルギーの摂取量が運動量に見合っていない場合は注意が必要です。
子宮や卵巣などの手術歴
中絶手術で子宮内膜が薄くなったり、卵巣の手術で卵巣機能が低下すると、生理不順が起きることがあります。また、抗がん剤や放射線療法なども、場合により卵巣機能にダメージを与えることがあります。出産の際に大量出血をすると脳の一部が障害を起こし、ホルモン分泌の異常を起こします。
生理不順の検査

生理不順がある場合、放置せずに原因を調べることが大切です。病院では、月経周期の乱れやホルモンバランスの異常がどこにあるのかを明らかにするため、いくつかの検査を行います。
問診
まず行われるのは問診です。
医師は、以下の内容について詳しく確認します。
- 初経の時期や、その後の生理周期の傾向
- 最近の数周期の月経サイクル
- 低温期と高温期の有無(基礎体温をつけている場合)
- 妊娠歴・出産歴
- 子宮や卵巣の手術歴
- これまでの大きな病気の有無
- 最近の強いストレス、急激な体重変化、生活習慣の変化
受診を考える場合は、上記のような情報をまとめておくと良いでしょう。基礎体温は必須ではありませんが、もしつけているようなら診断の参考になります。
妊娠検査
妊娠の可能性が少しでもある場合は、妊娠検査を行います。妊娠しているかどうかは生理不順の原因、治療を考える上で非常に重要です。生理が少し遅れているとき、超音波検査ではまだ確認できないことがあるため、尿検査で妊娠の有無を調べます。
超音波検査
超音波の検査で、以下のような情報を確認します。
- 子宮の大きさ・形
- 子宮内膜の厚さ
- 卵巣の大きさ・嚢胞の有無
- 子宮や卵巣の病気の有無
超音波検査は、不正出血や排卵障害の有無を視覚的に判断するために重要な検査です。
ホルモン検査
排卵障害の原因が、ホルモンを分泌している脳の一部(下垂体)や卵巣にあるのかを見極めるため、以下のホルモン値を測定します。
- 卵胞刺激ホルモン(FSH)
- 黄体化ホルモン(LH)
- エストラジオール(E2)
- プロラクチン(PRL)
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
- テストステロン
これらの数値から、排卵障害の原因が脳・下垂体・卵巣のどこにあるかを判断します。
子宮卵管造影、子宮鏡
子宮内の異常が疑われる場合は、子宮卵管造影や子宮鏡検査を行うことがあります。子宮卵管造影では、造影剤を使って子宮の形や卵管の状態を確認し、子宮鏡ではカメラを挿入して子宮内を直接観察します。
生理不順を改善する方法

生理不順がある場合、セルフケアとしてできることや、病院を受診した場合の治療について解説します。
食生活を見直す
まずは食生活を見直してみましょう。食事は1日3食を基本とし、主食・副菜・主菜・乳製品・果物を意識して、バランスよく摂ることが大切です。「〇〇が体に良い」と聞いてそればかり食べたり、「〇〇は絶対に食べない」と極端に避けるのは、かえって栄養バランスを崩す原因になります。
適度な運動を行う
適度な運動を心がけましょう。週に150分程度の有酸素運動が、女性の健康に良いとされています。ただし、アスリート並みの過度な運動は生理不順を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
良質な睡眠を意識する
良質な睡眠も欠かせません。睡眠時間が短かったり、眠りが浅いとホルモンバランスが乱れやすくなります。寝る直前の食事や入浴、スマートフォンの使用は睡眠の質を下げるため、就寝前は部屋を暗くし、心を落ち着けてからベッドに入るようにしましょう。
適正体重をキープする
適正体重の指数として、BMI(Body Mass Index)が用いられます。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)で計算し、BMI 22が適正体重とされています。BMI 18.5以下の「痩せ」や、25以上の「肥満」は排卵障害の原因となり、生理不順を起こすことがあります。適正体重を維持するようにしましょう。
規則正しい生活を送る
長時間仕事をしたり、夜遅くに飲食をするなど、不規則な生活が続くとホルモンバランスが乱れる原因となります。できるだけ毎日同じ時間に寝起きするなど、なるべく規則正しい生活を送るように意識しましょう。
ストレスを貯めない工夫をする
日常生活でストレスを完全に避けることは難しいですが、自分なりの発散方法を見つけることが大切です。趣味や運動、リラックスタイムなど、自分なりの解消法を見つけましょう。必要に応じて、カウンセリングを受けるのも良い方法です。
婦人科を受診する
セルフケアを続けても改善が見られない場合は、婦人科を受診しましょう。治療は、妊娠を希望するかどうかで内容が変わります。
妊娠希望がない人
生理不順が続くと子宮内膜が厚くなり続け、子宮内膜増殖症という前がん病変となり、子宮体がんのリスクが上がるため、放置することはできません。月に1回~最長でも3か月に1回は生理を起こすよう、ホルモン剤の投与をします。経口避妊薬や、子宮内に留置するホルモン製剤(ミレーナ)の使用も選択肢の1つです。
妊娠希望がある人
排卵がうまく起きない、あるいは排卵までに時間がかかるなどが原因で生理不順となっている場合は、排卵誘発剤を使用します。
生理不順が続いている人、妊娠を希望する人は、婦人科に相談しましょう
どんなに健康な方でも、少し体調を崩したりストレスがかかると生理不順が起きることは稀ではありません。1回程度の乱れであれば一過性のこともあります。「2~3か月様子を見ていても生理不順が続く」「もともと周期が乱れがち」「妊娠を希望している」このような場合は、早めに婦人科に相談しましょう。