ミニチュアの買い物カートに薬のシートが入っている画像

【医師監修】ミニピルとは?避妊効果や低用量ピルとの違い・服用時の注意点を徹底解説

2025.09.09
中里 泉 先生
監修
中里 泉 先生
あらかきウィメンズクリニック
日本産科婦人科学会認定専門医/医学博士
専門:生殖内分泌、性感染症
所属学会:日本産科婦人科学会 日本生殖医学会

「低用量ピルは聞いたことがあるけれど、ミニピルって何だろう?」 そんな疑問を抱いたことはありませんか? ミニピルは、体質やライフステージによって低用量ピルが使いにくい方にも選ばれている避妊薬です。避妊効果、副作用、飲み方の注意点などを理解することで、自分に合った選択がしやすくなります。 この記事では、ミニピルのしくみや種類、特徴、副作用について、やさしく整理して紹介します。

ミニピルとは?

ミニピルとは、避妊目的で使われる薬で、女性ホルモンを含むピルの一種です。日本では承認されていない成分が多いものの、海外では広く使われています。

日本でおもに使われるピルは、「卵胞ホルモン」「黄体ホルモン」の両方を含むものが基本ですが、ミニピルは2種類のうち黄体ホルモンのみを含むのが大きな特徴です。

ミニピルは、以下のメカニズムで妊娠を防ぐとされています。

  • 卵子の成熟を防ぎ、排卵を防ぐ
  • 子宮の入り口にある「子宮頚管粘液」をドロドロさせて、精子の侵入を防ぐ
  • 子宮内膜を薄くすることで、受精卵の着床を防ぐ

妊娠を防ぐ仕組みを理解するためには「月経と妊娠の関係」を知っておくことも大切です。以下の記事も参考にしてください。

ここからは、ミニピルの種類や副作用について見ていきましょう。

ミニピルの種類と特徴

ミニピルは、含まれる黄体ホルモンによっていくつかの種類があります。代表的なものを、以下に紹介します。

【成分名】デソゲストレル

【商品名の例】
セラゼッタ
【特徴】
日本では未承認のミニピル
海外ではよく使われており、日本では医療機関が輸入したものが処方されている
実薬28錠を毎日服用する

【成分名】ドロスピレノン

【商品名の例】
スリンダ
【特徴】
令和7年6月に日本でも承認されたミニピル
実薬24錠+偽薬(プラセボ)4錠を服用する

【成分名】ノルエチステロン

【商品名の例】
ノアルテン
【特徴】
本来、月経移動や月経困難症の治療に使われる薬
避妊の薬ではないものの、黄体ホルモン単独のため「ミニピル」として処方するクリニックもある

どのミニピルも医療保険は対象とならず、「自由診療」での処方となります。クリニックによって処方できる種類は異なるため、詳しくは産婦人科医と相談しながら決定しましょう。

ミニピルの副作用の多くは不正出血

ミニピルでよく見られる副作用は、生理ではないのに出血する「不正出血」です。不正出血の症状は個人差があり、下着に少し付く程度のケースもあれば、生理のように見える多めの出血の場合もあります。

たとえばドロスピレノン(スリンダ)の場合、服用した人のうち89.5%が1年以内に不正出血を経験したというデータもあります。

不正出血があっても服用している間は避妊効果が続きます。ただし、症状が重い場合や長引く場合は、自己判断せず医師へ相談しましょう。

不正出血以外に報告されている副作用には、以下のようなものがあります。

  • 頭痛
  • 腹痛
  • 乳房の不快感
  • 気分の変化(いらいら・不安感など)

服用後に気になる症状が出た場合は、早めに受診しましょう。

なお、低用量ピルの副作用については、以下の記事で詳しく解説しています。

ミニピルの避妊効果はどのくらい?

ピルと陰性の妊娠検査薬の画像

ミニピルは、正しく服用すれば99%以上の避妊効果が期待できる薬です。

ここからはミニピルの避妊率や、効果を得られるタイミングについて見ていきましょう。

正しく服用すれば避妊率は高い

ミニピルの避妊効果は高く、正しく服用すれば低用量ピルとほぼ同等の避妊率があるといわれています。

以下は、各経口避妊薬における「理想的な使用」に基づくパール指数(避妊失敗率)から算出された目安の避妊率です。

ピルの種類と、その避妊率の目安

一般的な経口避妊薬:避妊率 99.7%
デソゲストレル(商品名セラゼッタ):避妊率 99.6%
ドロスピレノン(商品名スリンダ):避妊率 99.6%

ミニピルは1日1回、決まった時間に1錠を服用する必要があります。飲み忘れがあると避妊率が大きく低下するため、正確な服用が重要です。

ミニピルのみのデータは公表されていませんが、一般的な経口避妊薬においては飲み忘れを含めた場合の避妊率は93%といわれています。

なお、デソゲストレル(セラゼッタ)は12時間以上、ドロスピレノン(スリンダ)は2日以上連続して飲み忘れると避妊効果が低下します。ミニピルの避妊効果を得るには、服用時間に毎日しっかりと飲むことが大切です。

避妊効果があらわれるタイミング

ミニピルの避妊効果があらわれるタイミングは、飲み始める時期によって異なります。

  • 月経1日目から服用した場合:飲み始めたその日から
  • 月経1日目以外から服用した場合:飲み始めの1週間後から

このため、飲み始めの遅れや飲み忘れがあった場合などは、コンドームの併用が必要です。ミニピルを飲み忘れた際の対処法を以下にまとめました。

飲み忘れた際の対処法

デソゲストレル(セラゼッタ)
12時間以上飲み忘れたら、7日間コンドームを併用する

ドロスピレノン(スリンダ)
2日以上連続して飲み忘れたら、その周期はコンドームを併用する

万が一避妊に失敗した可能性がある場合は、72時間以内を目安に緊急避妊薬の使用も検討しましょう。

ミニピルのその他の効果

ミニピルの基本的な効果は「避妊」です。

しかし、種類によっては以下の効果も期待できるため、生理痛を含む月経困難症が軽くなる人もいます。

  • 排卵を防ぐ
  • 子宮内膜を薄くする

避妊以外のメリットを求める方にとっても、ミニピルは選択肢となります。

生理痛が重くてつらい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。

ミニピルと低用量ピルとの違いは「エストロゲンの有無」

ミニピルと低用量ピルの一番の違いは、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」を含むかどうかです。

以下の表は、両者の成分の違いを比較したものです。

エストロゲンの有無

【ミニピル】
含まない
【低用量ピル】
含む

含んでいる女性ホルモン

【ミニピル】
プロゲステロン(黄体ホルモン)
【低用量ピル】
エストロゲン(卵胞ホルモン)
プロゲステロン(黄体ホルモン)

低用量ピルに含まれるエストロゲンは、血栓症をはじめとする心臓・血管に関わる病気のリスクを高める可能性があります。

そのため、以下のようなリスク因子がある方は、服用期間や方法に注意が必要とされています。

  • BMIが高い方
  • 40歳以上の方
  • 喫煙する方
  • 片頭痛のある方
  • 血栓症の家族歴がある方

しかし、リストに当てはまる方でも、エストロゲンを含まないミニピルなら服用できる可能性があります。

低用量ピルとミニピルのどちらが適しているかは、体質やライフスタイルに合わせて医師と相談しながら決めることをおすすめします。

ミニピルに関するよくあるQ&A

手にピルを出し、不安そうにする女性

ここからは、ミニピルに関してよくある質問にお答えします。

今使っているピルからミニピルに切り替えるには?

今使っているピルから切り替える場合、ホルモンが入っている「実薬」をすべて飲み終えた翌日からミニピルの服用を始めるのが一般的です。

一方、ホルモンが含まれていない「偽薬(プラセボ)」も飲んでいた場合、1週間ほどの期間は避妊症状が不安定です。そのため、切り替えてから最初の7日間はコンドームを併用しましょう。

ミニピルは将来の妊娠には影響しない?

服用によって将来妊娠しにくくなるということは、基本的にはありません。ミニピルの服用を中止すると、多くの場合1ヶ月ほどで妊娠の可能性が元の状態に戻るとされています。

ただし、安全に服用を続けるには、定期的な婦人科検診(子宮や卵巣の検査、子宮頸がん検診、乳がん検診など)を受けておくことが大切です。不安なことがあれば、早めに医師に相談するようにしましょう。

ミニピルはオンラインで処方してもらえる?

オンライン診療でミニピルを処方するクリニックも存在します。オンライン診療と対面での診療を両方おこなう産婦人科や、オンライン診療のみを取り扱うクリニックなどを探してみるとよいでしょう。

ただし、ミニピルは低用量ピルよりも取り扱うクリニックが少ないのが現状です。オンラインでのミニピル処方を希望する場合は、処方できるかをホームページや電話で確認してみてください。

性感染症を防ぐ効果はある?

ミニピルは、粘膜を介して感染する以下のような性感染症の予防はできません。

  • HIV(エイズウイルス)
  • 梅毒
  • 性器ヘルペス
  • クラミジア

性感染症のリスクがある場合は必ずコンドームを併用し、自分自身の体とパートナーの健康を守りましょう。

ミニピルの避妊効果を正しく理解し、自分に合う選択をしよう

ピルにはいくつか種類があり、それぞれに特徴や向き不向きがあります。ミニピルは、ホルモンの種類や副作用のリスクを理由に、低用量ピルが使いにくい方にとって頼れる選択肢となり得ます。

大切なのは、自分の体と向き合いながら、納得できる方法を選ぶことです。気になることがあれば、ひとりで抱え込まず、医師に相談してみてください。

この記事を書いた人

南尾優香サムネイル

南尾優香

医療や健康に関する記事を執筆している、現役薬剤師ライター兼ディレクター。「正しい情報を、読者に響く形でお伝えする」をモットーに、日々活動しています。

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