ジャーナリングは、自分の思いや感情を自由に書き出すことで心の整理や自己理解を深める習慣です。うつ症状の緩和などのさまざまな効果が期待され、誰でも無理なく始められます。
今回は、ジャーナリングの効果や始め方、テーマ選びに迷ったときのヒントを具体的にご紹介します。
ジャーナリングとは?
ジャーナリングとは、自分の感じたことや思ったことを、頭に浮かんだまま自由に書き出すことです。「書く瞑想」とも呼ばれ、「今この瞬間」に意識を集中させるマインドフルネスの一種としても注目されています。「自分自身に向けて書くことで、自己発見につながる気づきを得る練習」などさまざまな定義が存在し、形式や内容には特に決まりはありません。
元になっているのは、ストレス体験に関する思考や経験を書き出す「エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)」だと言われていますが、ジャーナリングはネガティブなこと以外も自由に書き出します。
頭の中でまとまらなかった思考を文字に表すことで整理し、自分の気持ちを見つめ直す時間とも言えるでしょう。
うつ症状も改善できる?ジャーナリングで期待できる効果
感情や思考を書き出していくジャーナリングは、うつ症状や不安などを軽減し、メンタルに良い影響を与えると言われています。
実際の研究で示されている期待される効果を具体的にご紹介します。
ネガティブ思考を整理して気分が軽くなる
繰り返し思い出されるネガティブな出来事や感情を紙に書き出すと、マイナス思考から脱却するための手助けになります。気持ちを「見える化」すると頭の中のもやもやが整理され、思考や感情がはっきりしてくるでしょう。ジャーナリングの元となったエクスプレッシブ・ライティングでも同様の報告があります。
ジャーナリングによって自分の内側を客観的に眺めることで、新たな気づきを得られます。その結果、ネガティブに考えなくなる、抱えている不安が実は過剰な心配だと気がつく、思考を整理して自己理解が深まる、といった効果につながると示されています。
自己理解が深まり、自責思考から抜け出しやすくなる
ジャーナリングには、自己理解を深め、自分を責める思考から抜け出しやすくなる効果が期待できます。
自分の気持ちや体の反応を文字にしてみると「自分は本当にどう感じているのか」「なぜそう思ったのか」に気づきやすくなります。書くことで頭の中を整理でき、俯瞰的・多面的に自分を見つめ直すきっかけになるのです。
ジャーナリングによって日常に感謝の気持ちが生まれて、物事の良い面にも目を向けられるようになってストレスや抑うつ症状が軽減した、という報告もあります。
ストレスの軽減につながる
「過去の失敗についてジャーナリングしたらストレスが軽減した」という報告があります。これは、失敗体験を振り返って落ち着いて見直すことで、ただの思い悩みに終わらず、自然に心が整理されるためと考えられています。心が辛くならない程度に「なぜあのとき失敗したのか」「その時はどう感じたのか」を書き出してみましょう。
それだけでなく、ジャーナリングには原因や感情を文字にして可視化することで、心や脳への負担が軽減されるメリットもあります。日常で小さな不安やプレッシャーを感じた時にも、ジャーナリングによってリラックス効果や気持ちの切り替えがしやすくなる効果が得やすくなるでしょう。
その他
ジャーナリングには、メンタルの改善以外にもさまざまなメリットが期待できます。頭の中の不要な考え事を紙に書き出すことで脳内の情報が整理され、集中力や記憶力が高まるためです。
実際に、継続的なジャーナリングによって身体の健康レベルが向上することが報告されています。加えて、ストレスの軽減や免疫力の強化、さらには慢性的な不調の改善にも良い影響を与えることも分かっています。さらに、学習に対する積極性が高まり、自ら知識を深めようとする姿勢やモチベーションにも良い影響があることも示されています。
このように、ジャーナリングによって脳が情報を保持・処理する「ワーキングメモリ」の働きが強化されます。ジャーナリングは、日々の生活や仕事のパフォーマンス向上など、メンタルの改善以外にもさまざまなメリットが期待できる方法です。
やってみよう!ジャーナリングの始め方

まずは、自分が取り組みやすい方法で実践してみましょう。
用意するもの
ジャーナリングを始めるために特別な道具を揃える必要はなく、紙とペンがあれば十分です。ノートやコピー用紙、普段使っているボールペンや鉛筆で大丈夫です。
お気に入りの筆記用具を用意すると、気分が上がって続けやすくなるかもしれません。
一方、デジタル派はスマートフォンやタブレットのアプリも活用できます。メモアプリや日記アプリなど、シンプルな文字入力機能があるものなら何でも使えます。
大切なのは道具にこだわることではなく、継続しやすい方法を選ぶことです。自分にとって書きやすいツールを見つけて、気軽に始めてみましょう。
具体的な方法
ジャーナリングを行うときは、まずリラックスできる環境と時間を整えましょう。朝の清々しい時間帯や夜の落ち着いた時間など、自分にとって最適なタイミングに行ってみてください。
時間と頻度は自分で自由に決められます。5分でも30分でも、週1回でも毎日でも構いません。タイマーをセットしたり、好きなBGMを流したり、時計を気にせず「書くこと」に集中できる環境を作ると良いでしょう。
書く内容にも制限はありません。今日起こった出来事や今の気持ち、考え事など、思い浮かんだことをそのまま紙に書き出してみてください。単語だけでも、文章が途切れていても問題ありません。大切なのは、自分の感じたことをそのままアウトプットすることです。
ジャーナリングのテーマに迷った時のヒント3選
ジャーナリングには「これを書かなければいけない」という決まりはありません。
ただ、気分が沈んだり頭が整理されていないと、何から書き出せばいいか迷うこともあるでしょう。そこで、「どうしても書くことが思いつかない」と思った時のヒントとして、おすすめのテーマを3つご紹介します。
今日一番楽しかった(楽しみな)ことを振り返ってみる
楽しかった(楽しみな)ことを振り返ってテーマにしてみましょう。ポジティブな記憶に意識を向けることで、自然と気持ちが明るくなります。
たとえば「買おうと思っていたものが、たまたま割引きで売られていた」「お気に入りのお店で久しぶりにランチする予定がある」など、小さなことでも構いません。
「うれしい」「ありがたい」に気づく習慣が身につけば、日々の幸せを見つける力が高まっていき、「幸せだな」と感謝の気持ちが生まれやすくなるでしょう。感謝の気持ちは、メンタルヘルス改善や不安や抑うつ症状の軽減につながると示されています。
自分の好きなところを書き出してみる
自分の「好きだ」と思うところを書き出してみましょう。自分の良い部分を認める習慣をつけると、心に余裕が生まれ、自分に対する信頼感が育っていきます。
たとえば「早起きが得意」「笑顔で挨拶できる」といった小さなことで十分です。他人と比べる必要はなく、自分の長所をできれば10個くらい考えてみましょう。自己肯定感が上がり、自分を否定する思考からの脱却につながります。
不安を感じる原因や理由を言葉にしてみる
漠然とした不安は放置すると大きくなりがちですが、言語化することで解消され、思考の整理だけでなく気づきも得られることがあります。ジャーナリングで不安な状況や気持ちを自分の言葉で表現すると、問題の本質に気づきやすくなるためです。
辛さを感じない時に「どんなときに不安を感じたか」「なぜそう思ったのか」をテーマにして書き出すと、無理に深掘りしなくても自然に感情の整理が進みます。不安をそのままにせず自分のペースで言語化できると、心が安定しやすくなるでしょう。
うつ症状を感じる時のジャーナリングのコツと注意点

うつ症状や気分の落ち込みを感じる時は、「書かなきゃ」と思い詰めずに自分のペースを大切にしましょう。
ジャーナリングによりネガティブな思考が軽減される一方で、考えや感情を書き出した直後は一時的に不安や悲しみ、罪悪感が強くなる場合があります。そんな時は「私は悲しい」ではなく「彼女は悲しい気持ちになった」といったように、主語を三人称に変えて書くと、客観的に気持ちを見つめやすくなります。実際、こうした手法で心理的な負担が和らぎ、メンタルケアにより効果的だという報告があります。
ジャーナリングは、あくまでもセルフケアのひとつです。うつ症状が改善しない、または悪化する場合は、心療内科やカウンセリングの受診を検討することも大切です。
うつっぽい時こそ、ジャーナリングでこころのバランスを整えよう
ジャーナリングは、うつ症状の改善をはじめ、ストレス軽減や自己理解の促進など、さまざまな効果が期待できるセルフケア法です。自分の気持ちを書き出すことで心が軽くなり、気持ちの整理がしやすくなるため、うつっぽい症状の緩和につながります。
特別な道具は不要で、ノートとペンさえあれば、いつでもどこでも手軽に始められるのも大きな魅力です。「なんとなく気分が晴れない」と感じるときや気分が沈みがちなときなどに、日々の習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。